柊さんの【No:3695】へアンサー的な何か
「瞳子」
「なんでしょう、お姉さま」
「これは、怪盗紅薔薇への挑戦ね。がちゃがちゃ一発決めでこんなのが出てしまったらやるしかないわ」
「やめましょうよ、柊さまにはさんざんご迷惑をかけているんですから。それに、短編祭不参加作品になってしまいますわ」
「乗り気じゃないねえ、瞳子。さっきは名探偵らしく『ポケベルっぽいラブレターの謎』を得意満面で解いてたのに」
「そ、そんなことありませんわ。あれは、乃梨子のために」
「乃梨子ちゃんのために……愛の告白をしたかった?」
「はあっ? え? どうしてそうなるんですか」
「あんな暗号メッセージ、宛先の乃梨子ちゃんだってわかんなかったじゃない」
「でも、乃梨子なら時間があれば解けただろうと……」
「謎が解けても誰から送られたかわからなくちゃ、意味がないわ。犯人は薔薇の館の中にいるでしょ?」
「おおお、お、お姉さま!」
「いまどき、ポケベル時代の書き方を知っている女子高生なんていないわよ?」
「わ、わたくし、女子高生ポケベル全盛期の1996年、『銀杏の中の桜』の雑誌掲載パイロット版で15歳ですからっ! 今でも携帯でポケベル打ち使えますからっ!」
「年を取らない二次元は便利だねえ。二乗で二条ね、よく考えたねえ瞳子。なんか早い者勝ちの二条ネタの取り合いになるような気がしてきたわ」
「何の話ですか。とにかく、私が書いたんじゃありません!」
「普通、まず、暗号の数字をそのままポケベルに入れたとして考えてみるよね?」
「い、いえ、お姉さま、当時のポケベルは数字二つで一文字なので、奇数桁はありえないんです」
「どうしてそう言わないの?」
「つ、つい、見ればわかるかと……」
「わかんないって。ふーん、私と志摩子さんの目の前で堂々と乃梨子ちゃんに告白するにはどうしたらいいか、よく考えたわね」
「あ、ああああ、あの……」
「私が、なんとなく電卓を叩いて[ √ ]できっちり整数になるのを見つけなかったら、どうするつもりだったの?」
「……自分で電卓を使うつもりでした……」
「乃梨子ちゃんが好きなの?」
「………………はい」
「だ、そうよ、志摩子さん」
「とんだ茶番だったわね、祐巳さん」
「え!? ええええっ? 志摩子さま!」
「志摩子さん、最初からわかってた?」
「ええ。なんとなくラブレターってわかったの。ぼけても乃梨子がツッコミを入れないのも変だったわ」
「さて、どうしようか」
「乃梨子次第、と言ってあげたいけれど、そっちはあまり心配していないわ。暗号文ラブレターは、解き明かされた時が最大の黒歴史になるそうだから」
「普通、めっちゃ恥ずかしいわよね。どうする? 瞳子」
「志摩子さま……お姉さま…………」
つづかない。