柊さんの【No:3695】へアンサー的な何かであり、くま一号さんの【No:3697】の別解
「くっ、あれがラブレターだったとは。しかも乃梨子ちゃん宛てだったなんて……」
由乃は下唇をかんだ。名探偵由乃が事件を解決出来なかった悔しさ、志摩子への台詞がそれを倍増させる。
「封筒や便箋を調べている間に先を越されてしまいましたね」
「こうなったら、せめて犯人が誰かをみんなより先に突き止めるわよ!」
すると菜々は不思議そうに首を傾げた後、由乃に向かってこう言った。
「お姉さま、本当にまだ差出人がわかってらっしゃらないのでしたら、今後は『ロサ・かませ犬』と名乗った方がよろしいんしゃありませんか」
由乃は動きを止め、ロボットのようにギギギと体勢を立て直し、深呼吸して自分を落ち着かせると菜々に返した。
「あなたは姉を姉とも思わずとことん馬鹿にして! 私がロサ・かませ犬ならあなたはロサ・かませ犬・アン・ブゥトンよ!! 今すぐロザリオ返しなさい!」
やれやれ、というように菜々がロザリオの鎖に手をかけると由乃は慌ててつけ加えた。
「犯人を教えて。ロザリオは見当違いだったらその時返してもらうわ」
「わかりました、お姉さま」
菜々は説明する。
「ラブレターの内容は『愛してる、二条』でした。これが答えのようなものです」
「どういうこと?」
「由乃さま、乃梨子さまのことをなんとお呼びになりますか?」
「乃梨子ちゃん、かロサ・ギガンティア・アン・ブゥトンね。それが一体なんなの?」
「リリアンでは普通名前で呼び合い、ともすると名字は忘れがちです。それを名字で呼ぶというのは外部入学者くらいですよ」
菜々は外部入学者に「有馬さん」と呼ばれたからすぐにそう思いついたのだろう。
「なるほど、外部入学してきたファンが密かにラブレターをね。高等部の外部入学は少ないからすぐにわかるわ」
「お姉さま、探さなくても薔薇の館に出入りしても怪しまれない隠密行動を得意とする外部入学者がいるじゃありませんか」
「あっ」
それは謎が解けたことによる感嘆ではなく、まさに彼女の存在に気づいた驚きの声だった。
せめてここに竹刀があれば身の丈179の悪魔から菜々を守ってあげられたかもしれない。あっても菜々に守られるのがオチかもしれないが。そう思いながら菜々を抱きしめたまま由乃の意識は遠のいていった。