※短編祭り遅刻作品とするにはアレなので通常の作品ということでw
ちなみに、某P○x○vで読んだ方もいるかもしれませんが、2年前に出したあの作品の加筆修正版です。
マリみて無印『胸騒ぎの月曜日』より。
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〜本気で選んでほしい Side祐巳〜
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─ ごめんなさい、やっぱり私は祥子さまの妹にはなれません、なぜなのかはご自分でお考えになってください ─
そう言って福沢祐巳は薔薇の館を飛び出し、泣きながら中庭を走っていた。
なぜあんな風にしか言えなかったんだろうか…断るにしても、もっと上手な言い訳があったはず。
突然言われて驚いたということはあるかもしれない。だけどまさか自分が紅薔薇のつぼみである小笠原祥子さまから
姉妹の申し込みをされるなんて、たちの悪い夢なんじゃないかと思うぐらいありえないことだったから。
でも、祥子さまが私を妹にしたい理由が理由だけにあの態度には失望した。
たとえ私が祥子さまから自分を困らせる悪者みたいに思われても、不本意な姉妹の契りは交わしたくない。
なぜ祥子さまは自分なんかを妹にしようと思ったんだろう。与えられた役目を回避するために仕方なく身代わりに?
それともそれはただのきっかけで、本心から自分を必要としているのか…思考は空回りするばかりで涙が止まらない。
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今朝校門をくぐるまではこんなに波乱に満ちた事態になるなんて思いもしなかった。
マリア像の前で祥子さまにタイを直され、自称『写真部のエース』武嶋蔦子さんが隠し撮りしたその場面の写真を、
学園祭で写真部のスペースに展示する許可を得るために放課後薔薇の館へ来た。これも別に問題ないと思う。
しかし事件はこの後起こった。
白薔薇のつぼみ・藤堂志摩子さんの案内で薔薇の館へ入り、2階の会議室から飛び出してきた祥子さまに衝突され、
あろうことかその場で姉妹の申し込みをされてしまうなんて。
祥子さまに申し込まれるなんて何かの間違いかと思った。こちらは憧れてはいたけれど今まで何の接点もなかったのに、
今朝になって突然マリア様の前でタイを直され、挙句の果てには名前も知らない私を妹にしたいだなんて…信じられるはずもない。
その後、中にいた薔薇さま方に詳細を聞いてみると、祥子さまは山百合会の舞台劇(シンデレラ)で主役を務める予定であったが、
相手役の王子が花寺学院から招聘する予定の生徒会長であると聞いた途端に劇の出演自体に難色を示し始めた…『男嫌い』という理由で。
薔薇さま方はそれは許されないことだと説得を試みるも議論は難航し、姉である紅薔薇さまの「妹もいない人には発言権も拒否権も一切ない」という
痛いところを突いた発言に激昂して「それなら今すぐ妹を連れてくればいいんでしょう!」という発言とともに
飛び出したものだから、祐巳にぶつかり現在に至ると…
タラっと…体のどこかから冷汗が出たような気がした。そんなバカな!とも思った。
そんな理由で姉妹の申し込みをされても現実感がない。それこそ一年生の中でもそんなに目立たず全てにおいて平均的な自分が、
家柄も外見も成績もほとんど完璧な全校生徒の憧れのお姉さまの妹になんて…
それはともかく、生徒会の一員になんてとてもじゃないが考えられない。
でも、「妹になって」と言われたときは満更でもなかった。しかし理由が理由なだけに素直に受けられないし喜べない自分がいたりもする。
シンデレラをやりたくないから妹を作っただなんて、祥子さまらしくもない後ろ向きな理由で私を選んでもらったとしても
私が嬉しくないし、のちのち姉妹喧嘩の種にならないとも限らない。
そして私はロザリオを差し出そうとする祥子さまの申し出を断ってしまった。「なぜ断ったのかちゃんと考えて欲しい」という言葉とともに………。
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涙はいつしか止んでいたが、情けないような重苦しいようなチクチクする気持ちは晴れなかった。
マリア様の前まで走ってきたとき、蔦子さんを薔薇の館に残してきたことを思い出したが、今更戻ったところでどうにもならない。
それに、あの蔦子さんのことだ。祥子さまに例の写真のことを説明してちゃんと許可を得ていることであろうから。
祐巳はマリア様に今日のこの騒動を一日も早く収めてほしいと祈った。
祥子さまが本当に私を妹にしたいなら、私の投げかけた問題を正しく理解して真正面から正々堂々と
姉妹の申し込みをしてくれることを信じながら…。
マリア様、祥子さまがちゃんと正しい答えにたどり着きますようにお導きください…
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マリア像の前でしばらく佇んでいると横から白いきれいなハンカチが差し出された。
「祐巳、涙をお拭きなさい」
それは透き通るような、凛とした声で自分の名前を呼んでくれるあの方の声だった。
「さ、祥子さま!」
よく見ると祥子さまの目尻や鼻のあたりが少し赤い。もしかして私のために泣いた?それとも悔し泣きだろうか。
そう思うとなんだか申し訳ない気持ちになったが、それを指摘しても『そんなことない』と叱られそうなのでそれについては触れないようにした。
「ごめんなさいね、突然のことで驚いたのでしょう。でも、私はあなたのことは諦めたわけじゃないわよ、必ずあなたを妹にしてみせるから覚悟なさい」
(……覚悟?祥子さまって強気だな…)
覚悟なさい、そう宣言する祥子さまはなんだかとても格好良かった。先程薔薇の館で「お姉さまの意地悪」なんてヒステリックに叫んでいた人と同一人物だとは思えない。
「さっき、なぜあなたを妹にしたいのかよく考えろと言ったわね?その答えが出たらあなたはロザリオを受け取るの?」
「わかりません…なぜあんなことを言ったのか自分でも整理出来てませんから。でも、このまま姉妹になってもお互いにとってよくないんじゃないかと感じただけです」
「そう…あなたが私のことをどう思ったのかはわからないけれど、あなたを妹にしたいというのは本当のことよ。
お姉さまにも言われたけど私がひとりで答を出さなくてはいけないようね。だから祐巳、それまで待っててくれる?
いずれお互いが納得できる答を用意してあなたの気持ちに応えてみせるから、それまで待っていて」
「はい!祥子さまがちゃんと応えていただけると信じています」
「ありがとう。じゃあ、気をつけてお帰りなさい、ごきげんよう。」
何がおかしいのかクスクスと笑いながらハンカチを受け取って祥子さまは薔薇の館へ戻っていった。
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─ あなたの気持ちに応えてみせるからそれまで待っていて ─
そう言われて祐巳は心の中が温かくなるような感覚をおぼえながら帰ろうとしたその時、フラッシュとシャッター音が祐巳を包んだ。
「もう、蔦子さん!撮るときは教えてって前から言ってるのに」
「祐巳さんたら私を薔薇の館に置いて一人で出て行っちゃうんだから…それはともかく、あのあと大変だったのよ」
「あ、ごめんごめん。で、大変って?」
「祐巳さんが出て行った後、やっぱりショックだったんでしょう。祥子さまが急に涙を流されて…皆でどうにかしてそれは収まったんだけど、
紅薔薇さまが祥子さまに『確かに王子役のことが伝わっていなかったのは自分たちも悪かったけど、祐巳さんのことは全てあなたが悪い。
あの子はやり直す機会を残してくれたんだから姉妹になりたかったらそれに応えなさい』って励まされて、『祐巳ちゃんと姉妹になれたら
役のことも少しは考えてあげる』とも言われて、それで解決されたわ」
祥子さまが泣いた?それ自体は申し訳ないけど祥子さまの自業自得なわけで、
でも自分のために涙を流してくれることをうれしく思ってしまう自分はおめでたいのだろうか。
「それでね、いい機会だから写真のことを切り出して許可はいただいてきたわ。」
「写真?…あっ!そうか、それで薔薇の館に行ったんだっけ」
「そう、学園祭で写真部が公開するという許可をね。だからおめでとう、これはめでたく君のものだ」
そう言って渡してくれた2枚の写真には祥子さまがマリア様の前で祐巳のタイを直している場面が映しだされていた。
「それから、さっきのもいい場面だったわね。『祐巳、それまで待っていて』『祥子さまを信じています』だったかしら?」
さっき?…あの恥ずかしい場面を見られていたとは不覚。
「蔦子さん、それは公開しちゃダメ!私と祥子さまだけの約束なんだから」
「わかったわかった、でも現像できたらお二人に差し上げるから楽しみにしてなさい」
二人はもう一度マリア様に手を合わせ家路を急いだ。
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いつもはコメでしか発言しない私がついにがちゃがちゃ初投稿です。
『祐巳side』となっていますから当然『祥子side』も存在しますが、現在進行形で執筆中ですのでしばらくお待ちください。