【3764】 思うこと心はずっと一緒に  (イチ 2013-09-21 00:00:10)


注意・百合表現あります。


〜放課後・薔薇の館〜

「ごきげんよう…えっ?」

部屋に入ると皆が勢ぞろいしていた。
その日、山百合会の集まりはなく、お姉さまと待ち合わせをしていただけだった。
一瞬何か集まりがあったのかもと慌ててしまったが、私はある事が気になった。
いったいぜんたい何のつもりかは分からないが、全員私と同じ縦ロールをしている。
これを私に見せたくて、わざわざ都合を合わせたのか。
それでもって、由乃様はニヤつき、お姉さま達は苦笑いだ。
直ぐに声をあげたかったが、これでは思うつぼ(おそらく由乃様の)なので、この状況を冷静に考えてみることにした。
思い返してみるとヒントはあった。
昼休みの後、クラスメイトに『ごきげんよう。瞳子さんは、薔薇の館で愛されているのね。羨ましいわ。ふふ』と言われていたからだ。
まあ、何の事かさっぱり分からず、すっかり忘れてしまっていたけど。

「あの、由乃様。その行為にはどういった目的がお有りなのですか?」
「目的?そんな事より、どうかしら。似合う?」

そう言ってお姉さまと志摩子様の肩を抱き寄せた。
相変わらずお姉さま達は苦笑いだ。
正直、お姉さまとお揃いなのはとっ〜ても嬉しい。だからこそ、ここで嬉しがっては思う壷なのだ。

「では改めてお聞きします。ど・う・し・て、私と同じ髪型をしているのですかっ!!」
「やっ、やだなぁ。怒っちゃ。私はね、ただ…盾が欲しかったのよ」
「…盾?」
「ええ、盾よ」
「ぜっんぜん、意味分かりません!!」
「だってぇ、瞳子ちゃんのそれって、盾ロールっていうんでしょ?」
「…はい?」
「人間、色々なものから身を守りたいでしょ?だから、皆で盾を装備したのよ!!」
「………」
「あっ、あれぇ…よしっ!!皆の衆、撤退!!じゃあ、祐巳さん、後はよろしく〜!!!」

そう言うと、黄薔薇姉妹、白薔薇姉妹ともに一目散に部屋を出て行ってしまった。

「お姉さま!!」
「ひっ…怒ってる?」
「別に、由乃様たちはいつもの事ですから。ただ、全員でだったのでちょっと驚きはしました。特に、志摩子様は“参加”した事ないですから」
「そうだね。ねぇ、瞳子覚えてる?この間、乃梨子ちゃんに言った事」
「乃梨子に…ですか?」
「うん。最近、演劇部の練習が立て込んでいたでしょ?それで、『最近、何て言っていいか分からないけど、モヤモヤする』って」
「お喋りなんだから…はい、覚えています」
「それで、何か出来ないかなって思っていたら、由乃さんから提案があったの」
「それで、さっきの“アレ”なんですか?」
「あはは…うん。由乃さんとしては、私たちは瞳子と一緒に居るよって言いたかったんだと思う。
だからね、もっと皆を頼って良いんだよ。瞳子」
「ですが…」
「うん。でもね、少なくとも私達には、ううん、私だけには頼って欲しいの」
「お姉さま…」
「よしよし」
「あっ、でも、他にもやりようはあったと思います。あれは、やり過ぎです」
「ごめん、ごめん」
「いーえ、許しません!!お姉さまには、罰を受けていただきます」
「罰?」
「これです」

ちゅっ

「えっ」
「ありがとうございます」

明日からも頑張れそうです、お姉さま。


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