注意!!
百合ネタです。
〜薔薇の館・放課後〜
「ゆ〜みちゃん。ちゅーしよ〜」
「ぎゃうっ…もうっ!!いつも言ってるじゃないですか。急に後ろから抱きつかないで下さい!!」
「ごめん、ごめん」
私はいつもの様に、祐巳ちゃんをからかっていた。
その言動は、半分冗談で、半分は…本気だった。
「…それはそうと。ロサ・ギガンティア、良いですよ」
「何が?」
「えっと…キ、キスの件です」
「…ホント?」
「ええ、もちろん」
くくく、祐巳ちゃんホント分かりやすいなぁ。
いつもやられているから、やり返してやる!!というのが、
顔に出てしまっている。うん、何かを企んでいる子どもの顔。
寸前で目を開ける段取りか。はたまた、蓉子にでも守ってもらう算段なのか。
まあどちらにしろ、祐巳ちゃんにしては、冒険だ。
計画はダダ漏れだけど、ここで終わりにするのも残念なので、私は乗っかる事にした。
あわよくばという事もあるからね。
ここは、祐巳ちゃんが知らない情報を活用させてもらう事にしよう。
なんと、今日予定があって来ないはずの祥子が、来てしまうのだ。
お姉さんをからかうのは10年早いという事を、身をもって学んでもらおう。
「怖い、怖いお姉さまに言っちゃうかもよ?」
「えっ?だ、大丈夫です。ロサ・ギガンティアを信用していますから」
「ふーん…良いんだ。では、遠慮なく」
私はそう言うと、祐巳ちゃんの前に向きなおした。
祐巳ちゃんが、多少たじろぐのが分かる。
ふふ、いい反応。
「じゃあ、祐巳ちゃん。目をつぶってもらっていい?」
「えっ、そ、そうですよね。分かりました」
祐巳ちゃんの両肩に手を置くと、体に力が入るのが分かった。
ホントこの子は、無防備だ。
祐巳ちゃんは、私がそんな事をしないというのは分かっているのだろう。
それは私への信頼の証だ。
その信頼は嬉しいものだけど、疎ましくも思える。
本当にキスをしちゃえば、何か変わるだろうか。
私が、そんな事を考えていると、人の気配を感じた。
この足音は…おっ、祥子が来たみたいだ。
…うん、予定通り。
「…じゃあ、祐巳ちゃん。いくよ?(さぁ、祥子はいつまで耐えられるかな)」
「ど、どーんと来て下さい」
30cm………
20cm……
10cm…
5cm…
彼女の熱が上がっていくのが分かる。
祐巳ちゃん、ここまで来ても止めないの?
いいの?知らないよ?
「ダメェ〜!!!」
そう言って、飛び込んできたのは由乃ちゃんだった。
祥子ではなかったようだ。
由乃ちゃん、かなり興奮してるねぇ。
見物させるにしても、青少年には過激すぎたかも。
「由乃ちゃん。ごきげんよう」
「えっ、あっ。ご、ごきげんよう、ロサ・ギガンティア」
「ほら、祐巳ちゃん。ゴミ取れたよ」
「…あっ、はい。ありがとうございます」
祐巳ちゃんは、ぼ〜っとしていた。
先ほどの熱のせいか、彼女は平静を取り戻せずに居た。
「すいません、ロサ・ギガンティア。私、勘違いしちゃって…」
「ん?何の事か分からないけど、まあ間違いは誰にでもあるから。ねっ」
こうして、私のキス未遂事件は終わった。
祐巳ちゃんは、由乃ちゃんに『聖さまに顔を近づけられたら、誰でもああなるから、
祥子様に対する裏切りじゃないわ!!』なんて言われていた。
―数日後・薔薇の館―
「ねぇ、蓉子。祥子が、ここんとこ来ていないけど、サボり?」
「聖じゃあるまいし。そんな訳ないでしょ」
「むっ、酷いな〜」
「何でも、ショッキングな光景を見てしまって、寝込んだらしいわ」
「ショッキングな光景?」
「はっきりとは覚えていないらしいわ。もう体調は戻っているから、近いうちには来れるわよ」
「そっか。良かったわね、蓉子」
「ええ、ありがとう」
あれ、そういえば。まさか…ね。