肌寒くなってきた秋口、ここは薔薇の館。
現在仕事をしているのは、白薔薇姉妹の志摩子様と乃利子さん、そして赤薔薇の蕾であり女優の私の松平瞳子、そして愛しの(きゃっ///)私のお姉さまでありリリアンのアイドル赤薔薇様こと福沢祐己様。
そこへ、「ごっきげんよ〜♪」とウキウキしながら黄薔薇さまの由乃さまとそのウキウキ加減をうれしそうにみている1年生だが黄薔薇の蕾、有馬菜々ちゃんが入ってきた。
「はい皆、お仕事やめてこっちにちゅ〜も〜く!!」
「どうしたの、由乃さん、いたくご機嫌じゃない」
「ふっふっふっ 良くぞ聞いてくれました祐己さん」いや、こっちにちゅ〜も〜く!! とか行ってたし。
「これを見よ!!」ばーんと出されたものに皆で注目する、そこには『温泉宿一泊二日ご招待』と書かれていた。
「どうしたの、これ、」
「当たったに決まってるじゃない、ほら、私の家と令ちゃんの家で毎年箱根に行くじゃない、そこで帰り際に応募しておくと抽選で泊まった人数分のただ宿泊券が貰えるの」その券を由乃様が持ってきた理由は
何でも、その券で指定された日は由乃様、令様のご両親は都合が悪いということらしく、それならと、人数ぴったりの山百合会の面々で行ってきなよと令様が仰ってくれたらしい。 祐己様と温泉・祐己様と温泉・祐、祐己様と・・・
「瞳子、瞳子ったら瞳子」ゆさゆさと肩をゆすられ、はっと前を見ると乃利子さんがなにやら呆れ顔で瞳子のことを見ていた。
「な、なんですの?」
「なんですの、じゃないわよ、とりあえ瞳子がトリップしてる間に温泉旅行決定したからね」へ?トリップ?決定?
「そうよ、『お背中を』とか、『いや〜ん手が滑ってしまいましたわ』とか、俯きながらなんかぶつぶつ言ってたよ」
えっえっえっ〜〜 確かになんか物凄くいい夢を見ていたような気もする、「決っ定〜」と昇竜拳ばりのガッツポーズをしている由乃様とたのしそうにそのまねをしている奈々ちゃんの姿を見たような気もする。
「と、いうわけで今日はもうお終い、早く帰り支度しなよ、祐己様待ってるよ」
二人で歩く帰り道、私は自分の失態と、それをお姉さまである祐己様に見られていた気恥ずかしさですごくブルーな気分だった、
そのとき、祐己様がくるっとこちらに振り向き(ああ、なんてかわいい、ってちがう、ちがう)少し眉をひそめて仰った。
「瞳子ちゃん!!」「は、はい」
「だめだよ、疲れているなら、ちゃんと言わないと」「へ?私が疲れている?」どういうことでしょうか?
「そうよ、さっきの温泉話のとき、下をむいて、全然話を聞いてなかったでしょう?結果だって乃利子ちゃんから聞いたようだし」
え、え、それはつまり
「つらいときはきちんと言うのよ、頼りないかもしれないけど、一様私はあなたのお姉さまなんですからね」少し照れながら仰ってくれた。
と、言うことは、祐己様は私の失態に気づいて無い、昔はイライラしたこのお方の鈍感さが今では奇跡に思えます、ああ・マリア様 合掌
「温泉、楽しみだね」「は、はい、お・お姉さま…」祐己様はにっこりと微笑むと私の手を取って歩き出した。気分はすでに天国。
『そうとなれば、この温泉旅行心ゆくまで楽しんでやる!!』
旅行の日になり6人は宿についた、フロントで渡された鍵3っつ、え、3っつ「由乃様これは」「ああ、いつも私たちは 令ちゃんと私、そして各夫婦ごとに部屋を取ってんの、だから、姉妹ずつね」さらりといいやがった、
とはいえ、部屋に荷物を置いた後はほとんどが団体行動だったので夜の食事まではいらぬ意識をせずに何とかすごせた、仲居さんが間違えて持ってきたお酒を飲んだ由乃様が『令ちゃんのばかー 奈々かわいいわー』まねして『令ちゃんのばかー お姉さまだいすきですー』と楽しげに連呼していた姿にみんなで笑った、とてもたのしかった、だが食事が終わった後私はとんでもないことに気づいた、そう。
温泉=裸=祐己様と一緒 あわわわわ・・・
こんな気持ちも知らず事は進む「じゃあ、私たちはこの温泉に入ってみようか?ね、瞳子ちゃん」と掲示板を指差す。
「志摩子さん、ここ、お酒入りだって、珍しいね」「じゃあ私たちはここにしましょうか」
「打たれ湯、なんか、修行みたいで良いわね、ここでいい?奈々」「はい!修行しましょう」
ここの宿は何種類もの温泉があるみたいで各々違った味を楽しみ、後で感想を持ち寄ろうと、結論付けられていた。らしい
「祐、祐己様ちょっと瞳子忘れ物をしてしまいました、お先に入っていてくださいな」本当は忘れ物などなかった、でも瞳子には心を落ち着かせる猶予が必要だった「うん、じゃあ待ってるから早く来てね」落ち着け瞳子、がんばれ心臓
数分後、意を決して温泉の扉を開けて目を凝らす、祐己様はどこかな・・・
湯煙の中で1人の影を見つけ近づいた時私は思った。
『ああ、私はたぶん、入った瞬間つるっと滑って頭を打って死んじゃったんですわ、だって天使様が見えますもの』
とても、祐己様に似た・・・
でも、祐己様に似た天使は瞳子に言った「待ってたよ、瞳子ちゃん」現実に強制送還
そこからはまさに生き地獄だった(生殺しとも言う)
「背中流してあげる」「い、いいえそんな」「お姉さま命令です、と・う・こ・」「…判りました」
ごっし、ごっし、つるん、「あ、ごめん」もにゅん 背中に柔らかい感触、昇天
目覚めた私はなぜか祐己様の膝枕、すると祐己様が目をウルウルさせながら覆いかぶさるように抱きついてきた「よかった、瞳子ちゃん、大丈夫!も、もし瞳子ちゃんに何かあったら、私、私…」祐己様、か、顔に、胸が、胸が… 昇天
就寝時間 ずるずる 「なぜ、布団をくっ付けるのですか?」「良いじゃない、こんなことめったにないんだし、それに、少しでも近くで寝たいと思って・・それとも・いや?(上目遣いに見つめ)」「さ、さあもう寝ましょう!!」理性が壊れる前に
眠れない、なぜかと言うと、くっ付けたとはいえあくまで二人分の布団が並んでいた、でも今は祐己様は私の布団の中にいらして、しかも私の腕にガッシリと掴まっている、耳元で聞こえるかわいい寝息、腕に伝わる体温と そ、その、ええと柔らかい感触、寝返りをうとうとしているくせに私の腕を放さないため時折もぞもぞしている、まるで赤ちゃんのよう(仮にも先輩に失礼とは思いつつ)それに加え
時折、鬼の形相で私を睨む祥子お姉さまが頭に中に出てきたり ああ・眠れない
瞳子ちゃあ〜ん・・・むにゃむにゃ ぎゅう〜 お姉さま、私を殺す気ですか?
翌朝、乃利子さんにこう聞かれた、「どう楽しかった?」
私は正直にいった「天国と地獄を一日で体験しました。」
その後ろでは、祐己様、志摩子様、由乃様、奈々ちゃんが楽しそうに談笑していた。
「ご愁傷様、瞳子」「ありがとうございますわ、乃利子さん」目の下にくっきりと熊を出しながら瞳子は眠りについた。
「瞳子、あなたがんばったよ、心から尊敬するよ。」