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更新遅くてすみません、て、言うか忘れられて居たらどうしよう・・・
「いたいた、 志摩子さん。」 志摩子さんは私たちの思い出の桜の下呆けていた、というか上の空だった。
「志摩子さん、ねえ、志摩子さん。」私が静かに声を掛けたが反応が無い。
よく見ると、志摩子さんは口元に笑みを浮べ 『うふふ・・ 祐巳さん可愛い・・ ねえ乃梨子? なんて幸せなのかしら・ふふ・・ふふふふふ・・・』 いつも天使のような笑顔をしている志摩子さん。
でも・・・ どうしたのかな? 腐った銀杏でも食べて、おかしくなったの? なんか黒い感情を物凄くいっぱい感じる。
「志摩子さんたら、ねえ志摩子さん!!」 反応が無い。
「し・ま・こ・さ・ん・!!」やっぱり、反応が無い。
クッ、 チクショウ、恥ずかしいが私は「お・ね・え・さ・ま〜〜ん 」 と、 耳元で甘声を出してみた。
「は!! 乃梨子。」 良かった、効いた。 何とか志摩子さんの意識をこっちに取り戻した。
「ああ・・ 乃梨子、ごめんなさい、ちょっと考え事していて」 すみません、私にはとても考え事には見えませんでした。
「とは言え、乃梨子、腕をあげたわね、私は嬉しいは。」
「は、はあ、恐れ入ります・・・」
気を取り直し 「聞いたよ、祐巳様、記憶喪失になってしまわれたって。」
「ええ、そのようね。」 さらっと志摩子さんは言った。
「志摩子さん、悲しくないの? 下手をすれば祐巳様から私たちの記憶が無くなってしまうかも知れない、私たちと過ごした日々が全部無い物になってしまうんだよ? それでいいの? ねえ!志摩子さん!! 私はそんなのいや!!」
少しの沈黙の後、志摩子さんが真剣な目を向け私に言った。
「乃梨子、あなた祐巳さんのこと好き? 正直に言って。 ちなみに私は好きよ。」
「ええ・・・ なんと言うか、その、尊敬できる大好きな先輩です。」私の答えに志摩子さんは不満げに、私を見て言った。
「そう、じゃあ、私が祐巳さんを貰っても良いわよね?」
「へ? 貰う? 貰うって何のことですか? 」一瞬、何のことか判らず変な返事をしてしまったが。
「何って、そのままよ、祐巳さんを私だけのものにして、毎日・毎日、私一人で愛でるの、ああ、もう、考えただけで身もだえるは、ゾクゾク感が止まらないは!! 『いや〜〜ん』 とか 『うふ〜ん』 とか全部独り占め、 あまつさえ、『志摩子さま』なんて言われたら・・・ んもう、最高!! 志摩子ったらはしたない、 キャッ!!」 自分の世界に入っている志摩子さん。
何を言っているのだろう? 私のお姉さまは、というか、この人は!?
なので、私はお姉さまである志摩子さんに聞いた。
「すみません、なんだか、私には理解できません、判りやすく、もう一度説明をお願いします。」
「そうね、乃梨子には説明不足だったわね、ごめんなさい。 いい、祐巳さん、学校に復帰するらしいのよ。」
「聞いてます、でも、だって、記憶がまだ戻っていらっしゃらないと聞いてますが、そんなことをして祐巳さまは大丈夫なのですか?」
「これは、容子様、あ、容子様というのは祥子様のお姉さまなんだけど、とまあ、この方の提言もあり。『いっその事リリアンに通わせて様子を見てみませか? 』と言う結果になったそうよ。荒療治を兼ねてね、祐巳さんのお母様も反対なさらなかったそうだし。」
「で、でも、いくらなんでもそれは危険な行為なのでは?」
「どうして、危険だと思うのかしら?」
「だって、そうじゃないですか!! 噂に聞けば、病院で祥子様にそ、その・・・ なんと言うか・・・み、操を奪われそうになった、って話じゃないですか!!それと・・」
「ええ、私も聞いたわ、でも、以前の祐巳さんは確かに祥子様のことが好き、これは乃梨子も判っていることでしょう? あと、それと?」
「と、とても失礼かと思いますが、私には祥子様は邪すぎると思います、姉という立場をかさに、あまりにも祐巳さまを独り占めしています!!いろんな意味で卑怯です!! 次にええと、祐巳さまをお慕いしているやからはごまんと居ます、状況を聞けば今の祐巳さまの状態は、言ってみてば雛、そう、生まれたての雛同然!! この状態、ともすれば『インプリンティング』を狙って画策を練ってくるのは至極同然!!」
だんだん熱くなってきた。
そうよ、このままほっとけば私の祐巳さまがどこぞの馬の骨に奪われる可能性だって無くは無い。そんなのいやだ!!
「やっぱり乃梨子も祐巳さんのこと、好きなのね。」
「はい、大好きです!!」お姉さまの志摩子さんも大好き、でも祐巳さまも大好き!!自分に嘘は就けない。
「乃梨子の言うとおり、かなりの数の敵、いえ、お邪魔虫が群れてくることが容易に予想できるは。そんなの許せる?祐巳さんを手篭めにしようと考える輩を。」
「許せません!!」 志摩子さんが耳元でささやいた。
「だから、私たちで いい、わ・た・し・た・ち・で 祐巳さんを保護するの、いい、あくまでも祐巳さんの保護なのよ。」
「ほ、保護・・・なんですか?」
「ええ、保護、そして、その報酬はかわいい、かわいい祐巳さん。想像してみなさい。」
「かわいい、かわいい祐巳さま、 略してかわゆみ・・・ ゆみゆみ・・・」想像でなく妄想してみた。
『乃梨子ちゃん好き・・・ ねえ乃梨子ちゃん? 乃梨子ちゃんは祐巳のこと、好き?』頬を赤らめる祐巳さま
『「好き」ではないです。』
『え!! ほ、本当に? なんで・・・? 』顔を青ざめる祐巳さま
『私は祐巳さまを「好き」ではないです、なぜなら、私は祐巳さまを愛しているからです!!』
『の、乃梨子ちゃんのばか〜〜ん いや〜〜ん』涙を溜めながら私に飛びつく祐巳さま、 いい!! 可愛い、最高にいい!! なんて幸せなのかしら・ふふ・・ふふふふふ・・・ などと、妄想していたら、脳天に凄まじいチョップを食らった。
「乃梨子、私はそこまで大それた想像しろとは言ってないわよね?」そこには、笑顔ながら青筋ピクピクな志摩子さんがいた、怖かった。
素直に 「ごめんなさい。」
「まあ、いいわ、それじゃあ祐巳さんの教室にいって祐巳さんを『保護』しにいきましょうか。」
「はい、『保護』しましょう。」
私と志摩子さんは祐巳さまの教室に向かった、そしたらクラスの前で紅薔薇様とばったり会ってしまった。
「あら、志摩子、こんなところで何をしてるのかしら?」睨みをきかす紅薔薇様
チッ!! 志摩子さんの舌打ちが聞こえた。
「何?というか、薔薇の館に一緒の行こうと私の祐巳さんを迎えに着ただけですけど、それが何か?」
「まあ!!それには及ばないわよ、祐巳は、いいえ、私の祐巳はきちんと姉である私が責任を持って薔薇の館まで連れて行く、これは当然のことなのだから。」
「あら、でも祥子様に任せたらなんだか、言ってみれば薔薇の館ではなくエロエロな館へ連れて行きそうなんですけど?」
「その発言は、宣戦布告と受け取るわよ・・・ 私に勝てると思って? 志摩子?」
「もともと、負け戦はしない主義なので。」
「まったく、何で白薔薇の系譜は紅薔薇にちょっかい出すのかしら?」
「いやですは、祐巳さんだけです。誰が好き好んで祥子様なんかに手を出すと御想いで?」
2人の間にバチバチと火花が飛び散る。
怖い、はっきり言ってここに居たくない!! でも、祐巳さまは『保護』したい。ああ、私はどうしたらいいの?
其の時、2人が動いた、同時に扉に飛び込み、そして・・・教室の扉につまった・・・
「し、志摩子、どきなさい!!」
「さ、祥子様こそ、どいてくださいませんか!!」
「「祐巳(さん)!!」」2人は同時に叫んだ、けど、返事は無い。
「祐巳は、いない、の、かしら?」
「そのようですわね。」
「あの・・・ 祥子様に志摩子さん、祐巳さんなら先ほど由乃さんが薔薇の館に連れて行くと言って、さっさと出て行きましたけど?」
「「へ?」」 ポカーンと口をあける御2人。
「あ、そうそう、『先手必勝!!』って、叫んでいましたわ。」
そうだ!! このクラスには黄薔薇の蕾という強敵が居たことを忘れていた!! これはやばい!! 非常にやばい!!
「志摩子さん!!」
「ええ、行くわよ!! 乃梨子!!」
「よ〜〜し〜〜の〜〜 !!」
走り出した私たちの後ろから、紅薔薇様の怒号と物凄い黒いオーラを感じた。
こんなことに巻き込まれた私は、本当に生きて帰れるだろうか? 帰れなかったらごめんね、菫子さん。
ここは体育館の裏
「祐巳!!」
「は、はい、えっと、よ、由乃さん? で、いいんだよね? ごめんなさい、記憶がおかしくなちゃってるので・・・」
「『由乃さん』なんて他人行儀で呼ぶの止めて!! 前みたいに『由乃』って呼んで、お願い・・・」
「前みたいに? え? それはどういうこと・なの?」
由乃はガバッと祐巳に抱きつき言った。
「祐巳!! 私とあなたは恋人同士なのよ、お願い、私との愛の日々だけは忘れないで。 あと、結婚の約束もしたんだから。」
「そ、そうなんだ、私と由乃さんは恋人で、結婚の約束をって・・・!! うええええええ〜〜〜〜〜〜〜 」
抱きついた肩越しに、ニヤリと微笑む由乃さま。 呆けている祐巳さま。
ふふふ、赤にも、白にも祐巳さんは渡さないわ、ここのまま私だけの祐巳さんにするんだから。ふふふふ・・・
お願いします!! 乃梨子は身が持ちません!! 早く、早く・・・
祐巳さまの記憶、戻ってください・・・
「ふふふ・・・ 祐巳さんは渡さない! 絶対に!!」
まだ続く・・・ のです。 ううう、、