桂さんが髪をドリルにしていた。
このニュースは瞬く間に学校中を駆け巡った。
「ちょ、ちょっと、桂さん。一体どうしたの?」
ニュースを聞き付けた祐巳は数ヶ月ぶりに元クラスメートの所に駆け付けた。
「あら、祐巳さん。ごきげんよう。」
駆け付けて来た祐巳を見て、華麗に挨拶をする桂さん。
その髪型は昨日までとは違い、縦ロールになっている。
しかも、左右に二本ずつ、腰までの長さの縦ロールだ。
しかもしかも、瞳子ちゃんのと違いドリルっぽくない。
例えて言うのならエレガントドリルといった所だろう。
「ご、ごきげんよう。桂さん。…ってそうじゃなくて、その髪!いきなりどうしたの?」
祐巳がそう問うと、桂さんは優雅に答える。
「だって、私の名字、エレガントドリル、だもの。」
「……………はぃ?」
「だって、何時までも名無しって言うわけにはいかないでしょ?大体、何で私の名字は無いわけ?一巻から出てるのよ?もしかして、最終巻まで名無しで終わるつもりなの?そんなの認めない!!私、認めないわよ!!」
どんどんヒートアップしていく桂さん。それを止められず、祐巳はオロオロしている。
「私は猫じゃないのよ!名字がまだ無い状態が何時まで続いて良いわけがないじゃない!こうなったら、ドリルでも何でも良いわよ!」
「お、落ち着いて、落ち着いて、桂さん。」
必死になだめる祐巳だが、その暴走は由乃どころか、初号機や機龍(通称エヴァゴジラ)を越えていたという。
そして、数日間のあいだ、桂さんは、『エレガントドリル・桂』として、注目を得続けていた。