【5】 江利子からの贈り物  (柊雅史 2005-06-06 23:02:15)


『前回の差し入れが好評だったので、また贈ります。 江利子』

そんな手紙が添えられたクッキーに、由乃さんは苦々しげな顔だった。
「どこが好評だか」
どっかと椅子に腰を下ろして、由乃さんはクッキーに手を伸ばす。
そんな由乃さんに苦笑しつつ、祐巳はクッキーの賞味期限を確認した。
今度の賞味期限は4月の10日。来年の入学式の翌日に当たる日付。
なんとも手の込んだことだと思いながら、由乃さんにも伝えてあげる。
「――やっぱりお見通しってわけか」
「そうかなぁ……」
憮然とする由乃さんに、祐巳は首を傾げる。
「これって、お祝いの意味じゃないの?」
「……祐巳さんは人が好すぎ」
ぷい、とそっぽを向きつつ、由乃さんは手に取ったクッキーを箱に戻す。
「食べないの?」
「食べるわよ」
そっぽを向きながら、由乃さんが言う。
「最終日に、6人で」
賞味期限は来年。その場にいるのは、祐巳と由乃さんと志摩子さん、そして乃梨子ちゃんと祐巳の妹と――
憮然とした表情の由乃さんの耳はちょっと赤くなっていて。
甘いものが大好きな祐巳も、このクッキーを食べるのはその日まで我慢しよう、と思うのだった。


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