【524】 どうにもこうにもモテモテじゃよ  (朝生行幸 2005-09-11 19:05:04)


「いい加減にしろー!まったくアンタ達は、私が白薔薇のつぼみってだけで、必要以上に纏わり付くんじゃわいわよ!ちょっと黙っていれば、次から次へと無理難題を押し付けて、ちっとも悪びれもしない。アンタ達が私をどう見てるのかは知らないけど、これ以上厄介ごとを押し付けないで!瞳子!ことある毎に、私を頼らないで!可南子さんも、もうちょっと愛想良くしなさいよ!敦子さん美幸さん、かしらかしらってシツコイと思わないのかしら?だいたい皆、もう少し自主的って言葉をね…」
 なおも捲くし立てる、白薔薇のつぼみこと二条乃梨子。高等部外部入学の乃梨子からすれば、あまりにも毒の無い無害なお嬢様の集団(一部除く)は、歯がゆい以外の何者でもなかった。
 クラスメイト一人一人に指を突き付けつつ、一人一人に鬱憤を晴らすかのように言葉のシャワーを浴びせ掛ける。乃梨子に責められた生徒は皆(一部除く)、机の上に顔を隠すように伏せていた。
 最後の一人が終わった時、乃梨子は肩で大きく息をしながら、ゼーゼー言っていた。
「…分かった?」
 やや掠れた声で、全員に確認する。しかし、ほとんどの生徒(一部除く)が、肩を震わしながら机に伏せた状態。
(…ちょっと言いすぎたかな?)
 泣かしてしまったかなと不安になって、唯一涼しい顔の可南子に顔を向けた瞬間。
 ドォッ!っと、凄まじい歓声が、伏せていた生徒全員から発せられた。
「ステキ!素敵ですわ乃梨子さん!」
「さすが、白薔薇のつぼみね!」
「背筋がゾクゾクしましたわ!」
「ああっ!もっと罵ってくださいませ!」
「いいえ!最初に辱められるのは私です!」
「ああ乃梨子さま!」
「乃梨子さま!」
 そのまま、『乃ー梨ー子、乃ー梨ー子』と大合唱。
(な、なんなんだいったい…?)
 恐るべしは、純粋培養のリリアン生。今更ながら、彼女達の恐ろしさが身に染みる。
 いつの間にか近づいて来ていた可南子が、乃梨子の肩をポンと叩いた。
「可南子さん…」
「どうして私が関わろうとしないのか、これで理解できたでしょ?」
「…うん。ゴメン可南子さん。私が悪かった」
 頭を抱えて、可南子に謝る乃梨子。
 その後も乃梨子コールは、担任が駆けつけて来るまで椿組の教室に響き続けた。

「乃梨子さん、聞いてくださいまし!」
「あんた、私の話聞いてた?」
 それでも変わらず、乃梨子を頼る瞳子。
 椿組は、今日も変わらない。


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