レイニーシリーズ
『絶望への道』 【No:510】 琴吹 邑 さん作に続きます。
(志摩子さんが瞳子ちゃんと。)
薔薇の館で倒れた日から休み続けている祐巳。
熱を出しているのは本当。福沢家は、落ち込んで休みたいからって学校を休ませてくれる家じゃない。もっとも、そんなことは今までになかった。あの梅雨の日々でさえ。
(レイニーブルー)
あの時そう言ったのは誰だったかな、珍しく真剣に助言してくれた三奈子さまだっただろうか。
もう、自分をごまかすことはできなかった。
志摩子さんが瞳子ちゃんを妹にする、それでなぜ私がショックを受けるのか。
『瞳子ちゃんが誰よりも大切だから。』
『瞳子ちゃんの隣にいるのは私でなければいけないから。』
(ふぅ)
祥子さまがお見舞いに来てくれたけれど、顔を見ただけで帰っていただいた。今はまだ、特に祥子さまには話したくなかった。祥子さまと瞳子ちゃんとのいびつな三角形。瞳子ちゃんはそこからとっくに外れていたのにちがいない。結局、まだこだわっていたのは祐巳だけだったのだ。
由乃さんは心配しただろうけれど。
(ふぅ)
志摩子さんは、瞳子ちゃんがもうロザリオを受けたって言った。なぜか、って聞けば答は分かり切っている。私が瞳子ちゃんを傷つけたからだ。
(志摩子さんと対決するの?)
いいえ、それは違う。梅雨の時と同じだ。祥子さまを私が信じられなかった、そのことに瞳子ちゃんは関係ない。
瞳子ちゃんを信じられなかった、そのことは志摩子さんとは関係ない。
(決めた)
明日、熱が下がっていたら、学校へ行く。
瞳子ちゃんに、話すんだ。
もう、手遅れかも知れない。瞳子ちゃんはほんとうに志摩子さんの妹になるつもりなのかもしれない。志摩子さんは私なんかよりも素敵な人だから。
だけど、話さないで終わっちゃうなんてことはできない。
外は冷たい雨が雪に変わりそうだった。