「というわけで」
「私たち」
「名もない中等部生」
「逆青田買い同好会!」
「「「乃梨子さまに狩られ隊!!」」」
放課後、乃梨子が薔薇の館へ向かおうと校舎を出たところ、「乃梨子さま!」と呼ぶ声が。
はて、さま付けで呼ばれる覚えはないのだがとあたりを見回す乃梨子の前にばらばらと中等部の制服が二、三、四、五人ほど現れ取り囲まれた。
「あなたたち……」
突っ込みどころ満載なんだけど、下手に突っ込むと瞳子達の二の舞と考え、喉元まで出てきていた突っ込みを慌てて飲み込んだ。
乃梨子がなんて声をかけたものかと思案していると、リーダー格と思しき子が一歩出て言った。
「乃梨子さま」
「は、はい?」
「乃梨子さまが日ごろ、私たち中等部生と交流を持つべく尽力されていることの感謝のしるしとして」
「って、してないわよそんなこと」
「私たち『逆青田買い同好会』が代表しましてこんどは乃梨子さまに会いに高等部を訪問させていただきました」
「あんたらも人の話聞かないわね……」
「私たちも乃梨子さまや高等部の先輩方の、」
「立派な妹と成るべく日々努力しますゆえ、」
「妹をお決めになるそのときは、」
「ぜひとも私たちの中から!」
「はぁ……」
まあ、いいんだけど、何で私なの?
瞳子とかほかにも主力メンバーは居たはずでしょ?
「乃梨子さまを称える歌! 斉唱!」
「ええ!?」
「♪のーりーこーさーまー」
なんか校舎の前で合唱し始めたよ、この子たち。
「ちょっと、ちょっと」
「♪ろーさぎがーんてぃあーあんーぶーとぅんー」
「こんなところで歌わないでよ」
というか三部合唱でいやなくらいよくハモっているんですけど。
「♪ろーさぎがーんてぃあーにぞっこーんでー」
「♪のーりーこーさーまーはガチレズ「やかましい!」
思わず乱入して全員をドついていた。
「痛いです……」
「やりましたね」
「すばらしいですわ」
「乃梨子お姉さまぁ」
「もっと……」
「っていうかなんでハリセンが?」
気が付くと手にハリセンをもっていた。
「これが乃梨子さまの突っ込み……」
「噂に違わない切れ味ですわ」
というか中等部で私はどんな噂されてるの?
「ふむ、もう少し弾力があってもいいかな?」
「ちょっと」
「あ、乃梨子さま、この突込みブレイド七号の使い心地はいかがでしたか?」
なんかいつのまにか隣に現れた菜々ちゃんがハリセンを点検してるし。
「あんたの仕業かー!」
すぱーん
「見事です」
なんか涙目になりつつ親指掲げて「グッジョブ」なんてポーズしてるし。
「……今、菜々を叩いたわね」
「え?」
しまった。ここは高等部の真っ只中。
恐る恐る振り返ると……
「叩いたわね?」
やっぱりーっ!
「あ、あの、由乃さま、これは不可抗力……」
「問答無用っ!」
「ちょっ、木刀はしゃれにならないかr…」
遠ざかる意識のなか、「乃梨子さまの突っ込み師匠!」なんていう言葉が聞こえてきた。
木刀の鈍い音じゃ突っ込みの効果薄いでしょ! なんて気を失う間際まで突っ込みをしてしまう自分はやっぱり突っ込み体質なのかなーと思った乃梨子であった。