◇菜々の山百合会舞台脚本シリーズ◇
【ご注意!】クロスオーバー【ご注意!】
ケテル・ウィスパーさま作『No.549 驚天・動・地反則技【No:549】』の続きです
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ゴウンゴウンゴウン……。
土煙渦巻く荒れ野に木霊する巨大な機械音。 その源にはその音の大きさに相応しき威容を誇る、人型の影。
それは『恐怖』の名を冠する機械仕掛けの電気騎士。 身の丈は人の十倍はあろうか。その『巨人』の足元には、同じ様な巨躯の残骸が臥して煙を上げていた。
「これまたあっけなく眠っちゃったわね。 菜々、これで何機目だったかしら?」
その『巨人』の操縦席に一人座する騎士、『薔薇さま』の由乃は、その狭い空間には居ない誰かにつまらなそうに語りかける。
『九機目です、お姉さま。 お疲れになりましたか』
問いに答えたのは、由乃の一番大事なパートナー。 スールの菜々。
『巨人』の操縦の為だけに存在する『ブゥトン』と呼ばれる生体コンピュータである彼女は、『巨人』の頭部にある専用のブゥトンルームから『薔薇さま』由乃をサポートする。
「そんな訳無いじゃない、雑魚ばっかりで。 次はもっと歯ごたえのあるヤツが良いわね」
『次、来ました、高ロザリオエンジン反応! 右後方六十度、距離およそ二km! このエンジン音はデータにありません、お姉さまのご期待に副う相手かと』
「へえ……」
『巨人』の目の望遠に映し出された姿は、確かに見たこと無い……。 いや、あの機体の紋章は。 由乃の記憶によれば。
「これはこれは…… こんな所で出会うとはね。 かのメイデン法国の最高機密、『破魔の人形』エクサ・ドール!!」
『あれがそうなんですか……』
「乗っている『薔薇さま』は確か次期法王さまとの呼び声高い、白騎士の志摩子枢機卿だったはずよ。 これは超一級の首級だわね」
白を基調としたスマートなフォルムの『巨人』の機体に描かれているのは、確かに『舞う人形』。 法国の『ドールマスター』の紋章だ。
「記念すべき本日の十機目に相応しい獲物よね。 菜々、行くわよ!」
『はいっ、お姉さまっ!』
ヴォンヴォンヴォン……。
「ようやく捕捉出来たわね、乃梨子。 あれが最近この辺りを荒らし回っている辻斬りなのね、許せないわ」
『破魔の人形』の操縦席。 『白薔薇さま』志摩子は、ディスプレイに映し出された敵機に厳しい眼差しを向ける。
『お姉さま、お気をつけ下さい。 かなり厄介な相手のようです』
ブゥトンルームから乃梨子が注意を呼びかけてきた。
志摩子のスール、『ブゥトン』の乃梨子はとても頼りになるかわいい良い子だ。 その彼女が言うのだから、確かな何かがあるのだろう。
「何か分かったのね、乃梨子」
『はい、お姉さま。 あれは黄騎士です。 黄一色の機体に緑青の巴紋。 間違いありません、強敵です』
あの名機と名高い、黄騎士『ダッシュ・ザ・イエローナイト』。 志摩子も知っている。
先代の所有者は高潔な騎士として有名な方だったが。 今の有様は……。
「では、乗っているのは『黄薔薇さま』という事なのね。 乃梨子、『ダッシュ』の足元、あの機体はまだ大丈夫なのかしら……」
『アベレッジ共和国の主力機、He‐ボーンのようですね。 機体のマークは『並薔薇さま』が通り名の……何と言いましたか……。 あの様子では、もう……』
「そう、間に合わなかったのね……。 あの方の分も頑張りましょう、乃梨子」
ビィビィビィビィ――! 警報!!
『『ダッシュ』、来ます! 音速突撃、あと四秒っ!』
『回避出来ます! 直線的なチャージですっ!』
「ええ!!」
ガシィィッッ!! ドグォォァァーーン!!
「『きゃあああぁぁっっ!?』」
ズズ〜〜ン!!
「よし! 一応当たったわねっ! 菜々、良くやったわ!」
『ヤマを張ってた方に進路をずらしただけです! それより『破魔の人形』、立ってきますっ、お姉さま!』
「あっ! 菜々、とどめ――」
『ここは仕切り直しですね、一旦さがります!』
ヴォァンヴォァンヴォァン……。
「うぅ、の、乃梨子状況はっ!」
『な、何とかベイルで受けられましたが、左腕アクチュエータに四十パーセントのダメージです』
「そう。 それ位ならまだやれるわね」
『すみませんお姉さま。 私が読み違えて――』
「それは後。 生き残ってからでいいの。 次はこちらから打ち込みましょう!」
『は、はい! エナジーソード全開しますっ!』
ゴォウンゴォウンゴォウン……。
「さあて! 菜々、次を喰らわせるわよっ! 行くわっ――!」
『待ってくださいお姉さま、相手の動き始めに合わせましょう。 それならかわされにくいですから』
「――ふむ、良い考えだわ! じゃあタイミング読んでくれる?」
ピピッピピッピピッ――!!
『高エネルギー反応、左真横!』
「えっ!?」
『ソニックブレード攻撃ですっ! 敵機自機ともに範囲内、回避不能!!』
「ぼっ、防御ぉぉぉっっ――!!」
ピカッ――! ゴオワアアア――!!
「『ちぇすとぉぉぉ……っ!!』」
「『くうぅぅぅっ……!?』」
ゴワアァァァーー…………。
「ぜぇ、ぜぇ、い、今のは……?」
「はぁ、はぁ……。 あ、新手? あの、黄金の電気騎士……何者なの?」
『あ、あれは……スイーツ騎士団の……まさか、その頂点……』
突然現れた第三の『巨人』。 それは誰もが目を疑うような姿。
機体の全てが黄金で構成され、その両肩には真紅の薔薇の紋章。 頭部その他に螺旋状の兵器が装備されている。
東方の強国が誇る、スイーツ騎士団の絶対者『紅薔薇さま』祐巳が駆る、紅薔薇の騎士『ナイト・オブ・ドリル』だった。
キュゥィィィィィィ――――。
「さあ、瞳子ちゃん、二人を止めるよっ」
『お姉さま。 しつこいようですが、私はお姉さまのスールなのですから、瞳子、と呼び捨てにしてくださいまし』
「うんっ、分かったよ瞳子ちゃん! じゃあ、バスタードリルランチャーを用意してっ!!」
『お、お姉さまっ!? 止めるのでは無いのですかっ!?』
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「これならどうでしょう。 配役にも気を使いました」
「志摩子さ――」
「白薔薇さまご姉妹は正義の側に回って頂きましたし」
「予算が、ぜんぜん――」
「お金の心配は要らないですから。 紅薔薇さまをメインにする代わりに、先代の紅薔薇さまと瞳子さまにご協力頂ける手筈です」
「と、瞳子ちゃん……?」
「あ、あぅ……。と、瞳子は……お姉さまと、ご一緒が………………」
「そういえば、姉妹毎に分けてあるのね。 乃梨子と一緒なのはうれしいわ」
「そそ、そうですね、私も同感ですっ……」
「うんっ。 私も瞳子ちゃんがパートナーでうれしいなっ」
「お姉さまっ、これで決まりですね! 勿論私たち黄薔薇にもカッコ良い見せ場がありますから、絶対おもしろいですよ!」
「…………」
「お姉さま……? どうしたんですか?」
「……菜々? 祐麒君は……?」
「あ、エアバレル隊の隊長で――」
「却下」
「え? じゃあ、預かり屋の――」
「却下ぁーーっ!!」
「……うぅ」
黄薔薇さまの強権発動により、採決、不可能……。
「つぎ、スゴいですから」
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元ネタ:○ァイブ○ター物語、所謂F.S.Sです。
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ケテル・ウィスパーさま作『ご冗談も程々に全員サービス見てらんない【No:628】』に続く