【605】 精鋭集結発明部  (水 2005-09-21 16:30:14)


 夜の帳が下りたリリアン女学園。
 高等部の校舎の一角に、明かりの漏れる窓がある。 ここは発明部の活動拠点、第二科学室。


「ふう、今日はもう終わりにしておきましょうか。 他のチームもそれで良いかしら」
「はい、分かりました部長。 今、後片付け致します」
「私達も、もう終わる所です」
「あ、今コーヒー淹れるから、片付け終わったらちょっと一服しましょ」


「この所みんな遅くまで頑張っているのね。 あなた達のチームは何を作成しているの? 訊いても良いかしら?」
「はい、お姉さま。 私達2年生チームは、その、匿名希望の方のご依頼で、掃除機を工夫致しまして軟らかい梅干しを手早く回収する装置を作っています」
「あら、それは割と難しいのではない? パイプ内で時々詰まってしまうでしょう?」
「ええ、それなのですが、パイプ内壁にライフリングを施す事によって解消する事が出来ました」
「あとは潰してしまわないように、吸引力の調整ですわね」
「そう、それは見通し明るいわね。 良かったわ」
『はいっ!』

「それじゃあ1年生のみんなはどんな物を作っているのかしら」
「は、はいっ、部長! わ、私達はあの麗しのロサ――」
「バ、バカ、言っちゃ駄目じゃない!」
「あ、あの、私達の方も偶然ですけれど、匿名でのご注文を頂戴致しまして、軟らかい梅干しを種と果肉に分けるメカを開発中です」
「そ、そうですっ」
「あらまあ、変に梅干し付いているのね。 なんだか面白いわ」
「奇遇ですね」
「装置の方は、果肉が少々潰れても構わないという事でしたので、エアで果肉を吹き飛ばしちゃう構造にしてみたのですけれど……」
「分別の方が難しいんです……」
「うん……どうしよう……」
「大丈夫よ、解らない所は私達2年生や3年のお姉さま方にどんどん訊きなさい」
「ええ、そうよ」
『は、はいっ! ありがとうございますっ!』

「お姉さま、3年生の皆様はどういった物をお作りなのですか?」
「あっ、それ聴きたいですっ!」
「私達? そうね、こちらも依頼人は内緒なのだけれど、これもまた変わった注文なの」
「うん、大量の生ゴミを瞬時に分解する装置だなんて面白いわよね。 10リットルあたり1秒以内の処理速度」
「ええ〜〜!?」
「そ、そんなの可能なのですか?」
「処理方法は問わないというお話だったから、プラズマを使うことにしたの」
「もうシステムは完成したのよ。 テストでは安定稼動してるわ」
「あとはダウンサイジングして、消費電力とスペースの節約だわね。 ここが難問だけど」
「そ、尊敬ですっ!」
「やっぱり3年のお姉さま方は凄いですね……」
「素敵ですっ、お姉さまっ!」
「うふふ、ありがとう」


「じゃあ、もう遅いからみんな揃って帰りましょう」
「はいっ」
「火の元、電源オッケーよ」
「窓の戸締り確認しました」
「また明日も頑張りましょうね」


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