毎日、ベッドの上で見上げるのは、鈍色の空。
まれに日差しが差し込むも、すぐに閉じる雲の亀裂。
病床についてから、いったいどのくらい経ったのだろうか。
近頃は、雨の日にはいつも、あのことを思い出す。
彼女は今、何をしているのだろうか。
日々衰える我が身を嘆きつつ、心に浮かぶのはあの日の後悔。
なぜ、謝ることが出来なかったのだろう。
たった一度のつまらない意地のせいで、埋まることの無かった小さな溝。
これは、己が犯した罪への懺悔。
涙に似た雨が放つ静かな音だけが、自由に聞けるBGM。
白む視界、動かない身体、そして、今にも途絶えそうな呼吸音。
唯一持って行くことが出来るのは、やはりあの日の後悔だけ。
珍しく雲間を切り裂き、我が身を照らす光。
それは、やがて辿ることになる天への掛け橋。
最後に願うのは、きっと届くはずのない想い。
「彩子さん」
届くはずのない願い、聞こえるはずのない声。
「弓子さん」
届くはずのない想い、出せるはずのない声。
それは、神様がくれた、最後のプレゼント。
「ねぇ、奇蹟って信じる?」