がちゃSレイニーシリーズ 【No:667】の続き うーなんか責任が……
「やりすぎたなあ。」
一時間目のあと、べったり机に突っ伏す由乃。両側にたれさがった三つ編みが憮然としている。
(ここまで、いきなり追っかけっこになるとは思わなかった。)
だいたい、桂さんと由乃はだれにも追いかけられないと思ったからこその作戦だった。
白薔薇姉妹だけがあわてる計算だったんだけど。二人で祐巳さんをガードする、はずが。
(認識が甘かったか。黄薔薇のつぼみって名前だけでおっかけてくるかなあもう。)
暴走する、ときには頼れる、見かけははかなげな美少女、というのはお姉さまとしてはツボなのを本人は気づいていない。
(桂さんって、地方大会優勝してインターハイ行ったんだっけ。忘れてた。)
一度ロザリオを突き返したコンビだけに、複数姉妹制なんかには本当はなってほしくないのだ。それだけではなく。
(志摩子さんが全責任を問われるよね、たぶん。)
けどなあ。これだけ騒ぎになるってことは、今の姉妹に満足してない人がそれだけいるってことなんだろうか。それはそれで。
(志摩子さんと真美さんが、現実ってのを見せてくれたことになるのかなあ。)
とにかく、悩んでいるのは由乃らしくない。出した号外は戻らないんだから、否定のインタビューでもなんでもしてやろうじゃないの。
由乃がそう決心して真美さんの机の方を向いた時、騒ぎが起きた。
「号外ですって。」
「え?朝配ってたのじゃなくて?」
「紅薔薇さまが、複数姉妹を否定したって。」
「ちょっと! それみせて!」ひったくる真美さん、そこへ頭を突っ込むように由乃がのぞき込む。後ろからのぞき込む祐巳さん。
パシャ、とシャッター音。こんな時にもそれかい、と思ったら、蔦子さん右手にカメラ左手に号外、もう一通り読んだらしい。
「うー、お姉さまだわ。らしくないことを。」言いながら、顔はちょっとゆるんでいる真美さん。どう見ても少しほっとした顔。
その騒ぎに追い打ちをかけるように、スピーカーが鳴った。
『二年藤組 藤堂志摩子さん。至急生活指導室まで来てください。繰り返します……』
「わあ、まずい。」由乃。
「どうしよう、由乃さん。授業……。」茫然とする祐巳さん。
「私の責任、だよね、これ。行くわ。」きっ、と立ち上がる真美さん。
その真美さんにしっかりシャッターを切ってから、はあ、とため息をついて、蔦子さんが続く。それを言うなら、真美さんに伝えた由乃はどうなるの?
「みんな、私のためにしてくれたんだよね。お姉さまも。」祐巳さんが言う。「行こう。」
「おうっ、きりきり殴り込みでいっ。」
「由乃さん、それ全然違う。」