「私のターンよ!『黄薔薇の蕾』、攻撃!」
「何の!トラップカードオープン!『スキャンダル』!」
「あっ!私のカードが!!」
「じゃあ次は私のターンだね。ドロー。まずは…、魔法カード『百面相』!」
「そ、そのカードは!!!」
昼休み。由乃と祐巳は薔薇の館で、最近リリアンで流行っているとあるカードゲームに興じていた。
その名も『リリアンうぉ〜ず』。
始まりは、とある一年生が有名なカードゲームを参考に作ったゲームである。
最初のうちは一年生の中だけで流行っていたのだが、何時からか2、3年の間でも噂となり、今では学校全体で大ブームとなっていた。ちなみに、カードは漫究が作って週に1、2度配布している。
「『紅薔薇さま』召喚!由乃さんにダイレクトアタック!!」
「ぐあぁぁー。また負けたー!」
今の勝負で12敗目を喫した由乃は、カードを投げて机にうつ伏せになる。
「ねぇー、祐巳さん。何でそんなに強いのー?」
由乃の問いに祐巳は困ったような表情をする。
「え〜と、……ワンパターンだからじゃないかな……?」
そうなのである。由乃は性格通りのイケイケ戦法でトラップがあっても突っ込んでくる。最初の時は、何度か負けていた祐巳も、最近では負け無しなのである。
「う〜〜、言ってくれるわね〜、祐巳さん。」
机につっぷしたまま、恨めしそうな目を向けて由乃が言う。
ちなみに、由乃は山百合会の中で勝率は一番下である。ちなみにちなみに、勝率No.1は志摩子でNo.2は祥子である。今では志摩子の『桜の木』からの白薔薇コンボは最強の代名詞となっている。
「…由乃さん、何時までも拗ねないでよ〜。この前手に入れた『謎の中学生』のカードあげるからさ〜。」
祐巳がそういうと、由乃は目を輝かせて飛び起きる。
「ホント!?じゃあ私もマジックカード『ドリル』あげるわ。」
「わっ、本当に?ありがとう!」
こうして、由乃と祐巳が仲良くカード交換をしている頃、最強の志摩子が教室で謎の無名に負けて大騒ぎになっていた。