がちゃSレイニーシリーズ
【No:709】 「出来る事としたい事」 琴吹 邑さんと 【No:733】 「意固地そしてただ」 くま一号 の間にツッコミ
祐巳が生徒指導室に向かう途中、お姉さまと令さまが三年生の校舎からやってくるのが見えた。志摩子さんの呼び出しにやはり駆けつけてきたのだろう。
ところが、生徒指導室に向かわずに、物陰から外を見ている。
「お姉さま」
「祐巳、ごきげんよう」
「祐巳ちゃん、ごきげんよう」
「あ、あ、ごきげんよう。ってお二人とも落ち着いてていいんですか?」
「志摩子の方は大丈夫よ。」
「志摩子の『方は』って、お姉さま?」
「まったく、ほんとにあなたたちって世話が焼けるわねえ。」
「あれよ。祐巳ちゃん。」
黄薔薇さまがくいっとあごを向けた先。
「藍子ちゃんと千草ちゃんとのぞみちゃん。」
「そう、茶話会トリオ。」
ウワサばらまき活動中、らしい。
「あの三人がどうかしたんですか?」
「その向こうの廊下。あそこなら話も聞こえそう。」
あれ? 向こうにも物陰にだれかいる。
ちらっと見えた……縦ロール!?
「あれは……。」
「瞳子ちゃん、なんかやっかいな勘違いしてるねえ。」
「茶話会で祐巳は妹をみつけなかった、とみんな思っていたわ。でも、今度の騒ぎであの三人がみんな祐巳の妹になった、なんて瞳子ちゃん思っていそうね。」
「そんなあ。」
「祐巳ちゃんの人気からすれば、三人見つければ三十人はいるわね。」
「令! 害虫じゃないんだから。せめてネズミくらいにしておきましょう。」
「瞳子ちゃんにすれば、害虫みたいなものよ。」
「お姉さまも黄薔薇さまもむちゃくちゃ言わないでくださいっ」
「ほれ、予鈴なったよ。ここは時間切れ。」
「祐巳、一つだけ言っておくわ。瞳子ちゃんは一つ切り札を持ってる。なにもかも捨てる哀しい切り札を持ってるの。あなたが包んであげなければ、瞳子ちゃんは最後の札を切るわ。誤解を残したままそうさせてはだめよ。」
「お姉さま、切り札って。」
「それは、言わないでおくわ。瞳子ちゃんが使わないことを祈っててよ。」
「お姉さま……。」
「祥子、祐巳ちゃん、ほら、授業。」
「はいはい、行くわよ。」
「あ……の……。」