o.753 の続きです。
翌日、リリアン女学園は大騒ぎだった。 警察の車両が並木道に入り込み、外の道はマスコミの車両、上空にはヘリコプターが飛び回っていた。 取材と証して生徒達にマイクを向けてくる記者達をシスターが追い回す場面が見られた。
「怖いわね…私たちも気を付けなっちゃ、遅くなりやすいんだし」
薔薇の館の窓から上空を飛び回っているヘリコプターを眺めながら由乃がカップを指先で弄ぶ。 紅茶は淹れたものの、とても悠長に飲んでいる気分ではない。
「そうだね、でもちょっとホッとしたかな…」
「なんでよ?」
「由乃さん、『犯人は私が見つけてやる!』とか言い出しはしないかって……」
「…さすがにこれはね……身の危険を感じちゃうわね……犯人を見つけたとしても殺されたんじゃあね……」
「ごきげんよう…祐巳さま、由乃さま」
「ごきげんよう乃梨子ちゃん」
「ごきげんよう……この挨拶も皮肉よね…ご機嫌なわけ無いじゃない。 あれ? 志摩子さんは? 一緒じゃあないの?」
カバンを置いて自分の席に着いた乃梨子は、一つ溜息を吐いて話し始める。
「途中で紅薔薇さまと黄薔薇さまにお会いしまして、一緒に職員室に行きました」
「あ〜…、そうなんだ。 で? どうだった? 外の様子は?」
「はい……、マスコミがすごかったですね、シスターに追いかけられても怒鳴られてもマイクを向けてくるんですから。 いつもの7倍くらい疲れましたよ……」
「ははは、ご苦労様」
「それで……小耳にはさんだんですけれど……」
「なに?」
机の上で手を組んでいる乃梨子に注目する祐巳と由乃。 二人を順繰りに見てから乃梨子は少し小声で話し出す。
「……被害者の内臓が無くなっているのはご存知ですよね?」
「ええ、そう聞いているわ…」
「殺してから、内臓を抜き取るなんて、悪逆非道にも程があるわ!」
「生きていたんだそうです……」
「…え?」
「生きながら内臓を引きずり出されたんだそうです」
「「……」」
顔が青ざめて絶句してしまう祐巳と由乃。 気は引けるが乃梨子は聞いたことを話すことにした。
「微笑んでいたんだそうです……被害者は……」
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
「カ〜〜ット! は〜〜い、ご苦労様〜〜!」
「続き作る気でいたんだこれ…」
「そのようね……犯人ばらしているのにやる意味があるのかしら?」
「犯人は志摩子さんでしょ? 先が分かっているのにつまんなく無いかなぁ〜」
「でも由乃さん、『血まみれの美少女が見たいんだ〜〜』って言う人もいるかもしれないよ?」
「そんな変体は、即磔よ! 打ち首獄門よ!」
「でも、志摩子さんが人の内臓を食べる理由は? まだ分からないこともあるよね」
「う〜〜ん……、切り裂きジャックの生まれ変わりとか?」
「どうやら違うみたいだけれど?」
「え〜〜、そうなの〜〜。 ねぇねぇ、祐巳さんはどう思う?」
「ほえ〜? う〜〜ん、う〜〜ん……。 と、瞳子ちゃんどう思う?」
「なんでそこで私に話を振るんですか?」
「え〜〜…っと……なんとなく」
「怪僧ラスプーチンかエリゼヴェート・バートリーでも憑いているのではありませんか」
「……なんだって。 どうかな?」
「私が言ったんですわよ!」
「ふふふ、違うようだわ。 そのうち分かるようになるわ」
「って言うか読んでくれているのかしらね〜これ…」
「それを言っちゃあだめよ」
「とりあえず、まだ続くみたいです……細々とですけれど……志摩子さん、悪役のままでいいのかな…」