【779】 幸せだと思う  (くま一号 2005-10-28 09:17:21)


がちゃSレイニーシリーズ、『舞台女優前後不覚応援キャンペーン  【No:748】』の続き。
『永遠と決めた明日につながる今日  【No:760】』にて、ROM人さんの示された分岐(なんかずいぶん増殖してるしぃ)を表示。
_______


「結婚式ね。」
「ぎゃう。ゆゆ祐巳さまいきなり抱きつかないでください!」

♪−−−−−−−−−
☆さて、瞳子はどうする?

   1.祐巳さまから逃げ出す
    [永遠と決めた明日につながる今日  【No:760】:ROM人さま
   →[ありがとう愛してる  【No:765】:春霞さま
   2.じっとしている
    [行くべき道  【No:768】:琴吹 邑さま
   →[密かに膝枕ビター・テイスト  【No:774】:風さま
   →[貴女の心に  【No:776】:琴吹 邑さま
   3.悲鳴を上げ、祐巳さまを痴漢現行犯で警察に突き出す

   4.振り向いて、祐巳さまの唇を奪う
    [恋は一瞬愛し合うデスティニー  【No:769】:良さま
   5.怪しげな踊りを踊る
    [絢爛舞踏スキャンダラスな貴女  【No:763】:jokerさま
   6.白ポンチョミラクルターン
    [エチュードもう迷わない  【No:766】:風さま
   7.結婚して!と抱きつき返す

   8.泣きながら、走り出し、後から来たクラスメイトに抱きつく

熊一號9.結婚式に乱入する。←これもーらった(タイトルがいまいち反則?)
♪−−−−−−−−−


「瞳子ちゃん?」
「は、はい。」
 さすがに鍛えた瞳子も息があがっている。
林に囲まれた小さな教会では、参列者たちが中へ入ってゆくところだった。
式がはじまるらしい。

「姉妹は夫婦とは違う。でもね、私が妹にしたいのはほんとにひとりだけだよ。」

「ゆ、ゆ、祐巳さま、その、だって」
「他の誰も妹にはしていないわ。あなたに妹になってもらうために手伝ってもらったの。ほんとよ。」
「そうやってそうやっていつだって祐巳さまは瞳子を……ぐすっ……振り回して……瞳子はカナダへ行ってしまいますの。もういなくなるんですっ。」

「たとえ、瞳子ちゃんがカナダへ行ってしまうとしても、瞳子ちゃんにロザリオを渡したい。」

「祐巳さまっ!!」

 祐巳さまが体を離して、正面から瞳子の目を見る。
ここで負けては……必死で見返す。
祐巳さまの瞳が綺麗だ……そして私が映っている。この時をどんなに待ち望んだだろう。
 どうしてこんなに、こんがらがってしまうの?

 ちらちらと雪が舞う。祐巳さまの顔の向こうに教会の入り口が見えてる。
新郎新婦、それになんて呼ぶのだったかしら付き添いの子供たちが両側に二人。
花嫁さん、きれいだな、って、こんなときに何を考えているんだろう。


「だから、これ、受け取ってくれるかな?」
ロザリオを輪にして差し出す祐巳さま。

「受け取れませんっ」
「どうして?」優しく聞く祐巳さま……どうしてって、どうしてそんなになにもかも包み込んで、あなたは優しいのですか。

「どうしてって、どうしてって祐巳さま!! 紅薔薇のつぼみがいなくなるんですよ。ですから祐巳さまは紅薔薇さまとしての自覚が足りないといつも申し上げて」

「瞳子!」
「はいっ」
 ……迫力だあ。ここで呼び捨ては卑怯、だと思う。

「称号はどうでもいい。お姉さまもみんなもわかってくれるわ。ただの瞳子と祐巳として考えて欲しいの。瞳子ちゃん。私の妹になってください。世界のどこにいてもあなたは私の妹でいてくれるって信じてる。」

 ……話すのよ、演技なしで。後悔しないために今、話すの。

「祐巳さま、それでもやはり受け取れません」
「どうして、って聞いていいかな」

「祐巳さまが、私が祐巳さまの中に祥子お姉さまを見ているって言った時、そんな馬鹿なって思いました。」
「瞳子ちゃん、それは私のとんでもない誤解だった。今はもうわかっているよ。」

「最後まで聞いてください。祐巳さまがそう思われたのは、可南子のことがあったからだけではないのでしょう? 梅雨時のその、祥子お姉さまとのすれ違いのことをお忘れになっていないのでしょう?」

「ちょっと待って、瞳子ちゃん。あれは、祥子さまを信じきれなかった私が悪いんだし、私は瞳子ちゃんから意地悪をされたなんて思っていない。」
「意地悪をしてたんですっ。あの時、『祥子お姉さまを奪っていった祐巳さま』にあてつけてなかったとは瞳子には言えないんです。」

「あれは終わったこと……」
「終わってませんっ。忘れられないんです。あの時のばかだった瞳子が今になって瞳子を罰するんです。」
「いいえ終わっているの。ねえ、瞳子ちゃん。あの時、祥子さまに会っていきさつを聞く前に私は元気を取り戻して、薔薇の館に戻ったわ。覚えているでしょう?」
「はい。」

「瞳子ちゃんのおかげよ。『だいじなことから目をそらしてへらへらしてる』って、きっつかったけどさあ。ふふふ。そして、一緒に弓子さんと会ったわよね。」
「はい。彩子大叔母さまの姉妹だった方、です。」
「あ、やっぱりそうだったんだ。」
「はい。」

「あの時、お姉さまを信じさせてくれたのはあなたよ。そして祥子さまのいない薔薇の館で私を支えてくれたのはあなたなの。」
「信じられません。私はずっと祐巳さまにつっかかって素直じゃなくてその」
「可愛かったわよ。」
「な!!」

「いつもの言葉遣いを忘れてる瞳子ちゃんもとっても可愛いわ。」
「祐巳さまあぁ」

 かなわない。この人にはきっと、ずっとかなわないんだ。
もう、なにもかもまかせよう。だいじょうぶ。

 教会の扉は開いたままだ。
神父さまのお話が始まっているらしく、声が聞こえてくる。

 顔が熱い。きっとまた真っ赤になってるんだ。くちをぽかんとあけてしまう。
どうして祐巳さまはこうも……。祐巳さまの前だけではこんな風になってしまうんだろう。


−−それでは典礼312番「慈しみ深き」を歌いましょう。みなさん、ご起立ください。
−−”いーつくしみふかーき〜


 いいえ、ここまで来て自分に嘘をついてもしかたありませんわね。

「瞳子ちゃん、あなたは素直で優しい子よ。その女優の仮面の下になにを隠しているの? 今度のカナダ行きもぎりぎりまで隠していた。おうちのこと、関係あるんでしょう。」
「はい、祐巳さま。」
「じゃ、これ、受け取って。そこから先は姉として聞きます。」

「松平瞳子さん。私の妹になってください。」

「お受けします。」
「ありがとう。」

 教会の中、新郎新婦が立ち、神父さまが見える。
そして、マリアさまが慈しみ深く、見守っている。

 そして。祐巳さまがロザリオを私にかけた。



−−では、 マリアさまのこころ をうたいましょう
オルガンの伴奏が始まる。

「瞳子ちゃん、踊ろう!」
「え? え? え?」
「ワルツで踊るの。」
「きゃう。」

 ”マリアさまのこころ それは青空
 ”わたしたちをつつむ ひろい青空

 ”マリアさまのこころ それは樫の木
 ”わたしたちをまもる 強い樫の木

 楽しい。パーティーで踊ったりするの、こんなに楽しいと思ったことはなかった。
このまま曲が終わってしまいませんように……




 え? 令さまと祥子お姉さま、が、踊っている!!!?

 由乃さまと、あれ、パートナーは中等部の子?

 白薔薇さまと乃梨子さん、あーあ、乃梨子さん、あし、踏んでる、踏んでるあああ。

 ”マリアさまのこころ それは山百合
 ”わたしたちもほしい 白い山百合

 わ、教会の中の人たちが気がついた。あー、踊り出しちゃった。
つ、たこさま? カメラを構えながら踊るのは、笙子さんに失礼だと思いますけどって、笙子さん液晶画面見ながら撮ってるわ。で、メモとりながら踊るってどういう技ですか、新聞部姉妹。

 ”マリアさまのこころ それはウグイス
 ”わたしたちとうたう もりのウグイス


 って、椿組みんないるんじゃないの? 敦子さんと美幸さんがふわりふわり。可南子さんがワルツを踊ってる所って想像したこともなかったわ。千草さんと、その、身長差が・・・・・・。


……載るわね、この写真。

 なんか、涙が出てきちゃう。みんなで、踊って、楽しくて、こんなことあの学園祭からずっとなくって……

 ”マリアさまのこころ それはサファイア
 ”私たちを飾る 光るサファイア


 パチパチパチパチ 周りじゅうから拍手。
そして、教会の中からも、参列者や新郎新婦、神父さまも手をたたいている。
みんなにとりかこまれて、背中をたたかれて
そこからわんわん泣いてしまってなにがなんだかわからなくなってきたんだけど

 どうやら全員、教会の中に招き入れられてしまったらしい。






(典礼聖歌 第七編 一般賛歌 「マリアさまのこころ」:
作詞・作曲および著作権者 佐久間 彪:
 著作権は放棄されていませんがカトリック教会より自由な使用が許可されています・・・使い方にもよるのでしょうけれど。
JASRAC(日本音楽著作権協会)データベースで調べたのと教会で聞いてみました。
なお、漢字表記は原詩と変わっています。)


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