(一応)がちゃSレイニーシリーズです。
『身を焦がす未練いっしょに暴走 No.742』からの分岐。
* これはある意味バッドエンドですのでご注意ください。m(_._)m
「結婚式ね。」
「ぎゃう。ゆゆ祐巳さまいきなり抱きつかないでください!」
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* ☆ さて、瞳子はどうする?
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* 祐巳さまから逃げ出す。
* じっとしている。
* >悲鳴を上げ、警察に突き出す。
* 振り向いて、唇を奪う。
* 怪しげな踊りを踊る。
* 白ポンチョミラクルターン。
* 泣き出す。
*
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「瞳子ちゃん、私・・・」
「きゃあああああああああああああああああああ!!!」
「と、瞳子ちゃん!?」
「痴漢ですー!だれか!誰か助けてくださーーーーい!!」
「え?あの?え??」
さすがは演劇部期待の星、その声量はすさまじく、あちこちから人が集まって来てしまった。
しかも間が悪いことに自転車を押した警官がこちらに来るではないか。
「こらー!そこっ、何をやっている!」
「ほぇぇぇぇぇ???」
警官に詰め寄られあたふたとしている祐巳の手をかいくぐり、瞳子はその場から一目散に逃げ出した。
「あ、瞳子ちゃ「どこへ行く!何をやっていたのかと聞いているんだ!」
警官に腕を掴まれた祐巳の視界から瞳子の姿は既に消えた後だった。
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追いついた薔薇の館の面々の説明で解放された祐巳だったが、今すぐにでも泣き出したい気分だった。
瞳子ちゃんに大切なことも話せなかった。いや、拒絶されてしまったのだ。
リリアンの銀杏並木まで戻った時には歩くのも億劫になり、可南子だけが肩を抱いて一緒に歩いてくれて居るだけだ。
「あぁ・・・もう、駄目だね・・・警察に突き出されるくらい瞳子ちゃんに嫌われてるんだ」
「そ、そんな事ありません、祐巳さま。瞳子さんは不器用なだけなのですよ。
第一、祐巳さまを嫌う事の出来る人間がどこに居るでしょう?
そもそもですね・・・・・・」
可南子ちゃんの「祐巳さま賛歌」は10分ほど続いただろうか、俯き落ち込んでいた祐巳も苦笑しつつ元気を取り戻しつつあった。
「ありがとう。こんな私を支えてくれるのは可南子ちゃんだけだよ」
「私はいつでも祐巳さまの味方です。どのようなことであったとしても、祐巳さまのお役にたってみせます」
「そうかぁ・・・」
祐巳は首にかけていたロザリオを外すと、手のひらに乗せじっと見つめた。
このロザリオを欲しがっていたあの子は、もう手の届かないところに行ってしまった。
あの子の心を最後まで分かってやれなかった情けない自分。
そんな自分でも支えてくれる子がいる。その子とならまだやり直せる、今なら。
「瞳子ちゃんに振られたとか嫌われたとか、もうどうでもいいの。
いつも私の傍に居て私を見て支えてくれる人に妹になって欲しい・・・」
ロザリオを掲げ、可南子ちゃんを見つめる。
「可南子ちゃん、私の妹になって!」
「ゆ、祐巳さま!だめです!一時の感情に流されては。
私は祐巳さまの妹にはなれないとお話したではないですか」
「分かってる・・・でも、今の私には可南子ちゃんしか居ないの・・・助けて・・・」
「祐巳さま・・・」
今ここで断るのは簡単だ。でも、そうすると多分祐巳は二度と妹をつくろうとしないだろう。
それは薔薇さまとしてたった一人で全校生徒を背負って行くようなものだ。誰の支えもなく・・・。
可南子は思った、これからただ一人ですべてを背負おうとする祐巳を助けたい。
その気持ちに素直に従うことに決めた。
「お受け、します」
祐巳は頷くと可南子の首にロザリオをかけ、そして可南子に縋り付き泣いた。過去を振り払うかのように、ただ泣き続けた。
「祐巳さま、瞳子は」「ダメよ乃梨子、もう、終わってしまったの」
祐巳に近づこうとする乃梨子ちゃんを志摩子さんが押し止どめ、首を横に振った。
瞳子ちゃんと祐巳の関係は終わってしまったのだと。愛だけでは届かない想いがあるのだと。
「そうね、これが瞳子ちゃん自身が選んだ道なのだから。
これ以上私達が手出ししても、もう・・・」
祥子さまも大きくため息をつくと、遠い秋空をじっと睨みつけるように見つめた。
「結局、私たちがしたことって、全部無駄だったのかな?令ちゃん」
「友達のために良かれと思ってやった事に無駄な事なんか無いよ、たぶん」
もどかしくも絡み合わなかった想いを見やるように、皆でいつまでも空を見上げ立ち尽くすのだった。
翌朝、乃梨子がマリア様の前でお祈りをしていると、後から来た可南子さんが隣に並んだ。
「可南子さん・・・」
彼女の首には瞳子がするはずだった紅薔薇のロザリオがかかっている。
可南子さんはどういう気持ちでそれを受け取ったのか、昨日から考えているけど、私には分からない。
「乃梨子さん、これも一つの運命だったのかも知れません。
瞳子さんが居ない今、誰かが祐巳さまを支えなければならないのなら、私はただそれを果たすだけです」
「そうか、それも一つの道なのかも知れないね・・・」
可南子さんは自分が瞳子の代わりでもかまわないと云っているんだ。
祐巳さまのためならどんな役でも引き受けるつもりなんだろう。その潔さはかっこ良かった。
それなら、私は友人として、仲間として可南子さんと祐巳さまを応援して行くだけだ。そう心に決めた。
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そして私達が教室に入った時、あまりの衝撃に暫く言葉がでなかった。
可南子さんより先に立ち直った私は、そこに居ないはずの誰かに向かって叫んでしまった。
「とうこぉーーー!!なんであんたが居るのよ!?」
「な、何でと言われましても・・・そ、その・・・書類の不手際があって、今年度からの転校が出来なくなってしまったのです。
それであと一年だけリリアンに通うことになったのですわ。
まぁ、祐巳さまにも後で昨日のことは謝罪しなければいけませんが」
「なったのですわ、ってそれじゃ済まないのよ瞳子さん!!」
「なんですの可南子さんまで?」
可南子さんは片手を額に当てると天を仰いだ。「Oh, my god」と声が聞こえそうだ。
私は瞳子の胸倉をつかむと指一本の隙間も無い距離まで顔を近づけこう言った。
「瞳子、耳かっぽじって、気をしっかり持って聞きな。
昨日、あんたに振られた祐巳さまはね、あんたのフォローをしてくれた可南子さんに、ロ・ザ・リ・オを渡したの!
全部手遅れなのよー!!」
「・・・・・・・・・・・・えぇぇぇぇぇ?!?!」
瞳子の絶叫が震わせる教室に、山口真美さまと高知日出美さんがひょっこりと顔を出した。
「新聞部です。紅薔薇の蕾の妹、細川可南子さんはいらっしゃいますか?」
ほらみろ、もうこれを引っ繰り返すなんて出来ない、というか、これ以上学園を引っ掻き回すなんて無理だ。
「どうするんですか、瞳子さん!今さら祐巳さまにロザリオを突き返すわけにもいかないんですよ!」
「祐巳さ・・・ま・・・」
可南子さんの腕の中にもたれるように倒れかかり、瞳子は気を失った。
まったく、この子はどこまで私達を騒がせば気が済むんだろう・・・。