【797】 結婚式夢が実現  (六月 2005-11-02 00:37:47)


*妄想炸裂してますので、毒されないようにご注意ください。(笑)

とある晴れた秋の日。リリアン女学園近くのホテルでパーティーが行われている。
佐藤聖さまの結婚披露パーティだ。そこに半年前に大学を卒業したばかりの私、福沢祐巳も招待されていた。
「ご結婚、おめでとうございます。聖さま」
「祐巳ちゃんありがとね、っと」
うわっ、タキシード着たまま抱き着いてきたよこの人。
「もう、抱き着かないでくださいよー」
「ははっ、ごめんごめん。抱き納めだから許してよ」
何年経っても変わらないんだから困ったものだ。変わったのは私達かな?
抱き着いて来るだけだから慌てて振りほどくのもめんどうだし、祥子さまもヒステリー起こす事なく呆れてみてるだけだ。
あ、でも・・・急に手を引かれて聖さまから引きはがされた。
「お姉さま、油断しすぎですわ。こんな女たらしに近づいてはいけません!」
「瞳子、女たらしって・・・ま、そうだけどね」
「祐巳ちゃん否定してよ!聖ちゃん悲しい」
慣れてない瞳子がヒステリー起こしちゃった。


「お姉さま、新婦をほったらかしにしていて良いんですか?」
「ん?志摩子と乃梨子ちゃんが居るから大丈夫なんじゃない」
栞さんと話していた志摩子さんがやってきた。「お久しぶり」って言葉を交わし合う。
ピンクのフリルが可愛いドレス姿の栞さんと、シックなスーツの乃梨子ちゃんはまだ向こうで話してるみたいだ。
「栞さまも変わりましたねぇ。たしか、シスター志望だったんですよね?」
「ん、私も驚いた。まさかシスターになるのをやめて、リリアン女子大の神学部で助手やるなんてね」
聖さまが眩しそうに栞さんをみてる。本当に栞さんのことが好きなんだな。
「シスターになることだけが神の教えを学ぶ道ではありませんわ。
 宗教を知るためにはもっと広い見識が必要です。
 御仏の慈悲を学ぶのもまた一つの道のように」
そういえば志摩子さんもリリアンに研究員で残ってるんだった。でも御仏?
「おいおい、志摩子は仏門に入るなんて言わないでしょうね?
 どうも白薔薇家はストイックなのが多いなぁ」
「さあ、どうでしょう?乃梨子のそばに居るにはその方が都合が良いですから。
 乃梨子が兄に代わって小寓寺の跡継ぎになってくれるそうなので、私も家に残るつもりですし」
乃梨子ちゃんは造形大学で仏像の美術研究と彫刻をやっているそうだ。
そして時間が空くと小寓寺で尼僧になるため、志摩子さんの小父様から修行を受けているとか。
「志摩子さん、乃梨子ちゃん仏師になれそうなの?」
「えぇ、彫刻の才能もあったみたいで、大学を出た後、暫くは京都で修行するつもりみたい」
「ふーん、寂しくなるんじゃない?志摩子」
「そのときは乃梨子のところに押しかけ女房に参りますわ」
「ははっ、志摩子変わったね。ずいぶんとふっ切れて良い感じだよ」


あ、懐かしいおデコ・・・ちがう、懐かしい方がやってきた。
「おめでとう、聖」
「やぁ、江利子。ん?今日はあの娘は?」
きょろきょろと辺りを見回すけど、いつも江利子さまにくっついてる女の子がいない。
赤ん坊を抱えた江利子さまが居るだけだ。
「珍しく旦那と一緒に遊びに行ってるわ。今日は息子だけ。
 ほーら、聖おばちゃんにご挨拶なさい」
おばちゃんって言われてさすがに聖さまも苦笑してる。
そこに令さまも顔を出した。
「おめでとうございます、聖さま」
「よっ、令。元気そうでなによりだ。で、結婚はまだ?」
「えぇ、まだ彼が18ですから。大学を出てからということで」
令さまがまだ黄薔薇さまだったころにお見合いした男の子も随分と大きくなったものだ。
「おやおや、それを待ってる間に令がおばさんになったらどうするんだよ、ねぇ」
「はぁ、おばさんと呼ばれるならそっちの方が良いですよ。
 彼とデートしてると女の子にナンパされるんですよ。美少年と美青年って。
 私達は男女のカップルだー、って叫びたくなるくらい」
ミスターリリアン現役ですか、令さま。
そんなことを考えていると、ぽんっと肩を叩かれて振り返る。
「ごきげんよう、お姉さん」
「へ?あ、もう由乃ってば、大丈夫なの出歩いてて」
まだお腹は目立ってないけど、もともと身体が丈夫じゃないんだから無理はしないようにして欲しいなぁ。
「大丈夫、安定期に入ってるから。それに妊婦もね少しくらいは体を動かさないと、健康に悪いのよ」
「俺がついてるから大丈夫だよ姉貴」
「ん、祐麒ならしっかりしてるから安心か」
大学卒業と同時に入籍、妊娠5カ月の由乃さん。祐麒も緩みまくった顔して、幸せそうでなによりだ。


黄薔薇家が栞さんに挨拶に行くのと入れ違いに別の方が・・・誰だっけ?
「おめでとう、聖」
「お姉さま、ありがとうございます」
聖さまのお姉さまかぁ、綺麗な人だな。
「しかし、同性婚ってのも驚いたけど、あの栞さんと結婚するというのが一番驚いたわ。」
「あの時、お姉さまや蓉子に助けていただいた恩は一生忘れません。
 そのお陰で今の私があるようなものだし、今のように冷静に栞と一緒に居られるようになったんですから」
「そう・・・」と聖さまの頬に両手を添えて微笑まれた。
「ほんと、しっかりと感謝してよ。
 そして二度とあんなことは起こさないと誓ってちょうだい。」
いつの間にかやってきた蓉子さまの言葉に、聖さまもしっかりと頷く。
そしてにやっと笑いながら、肘でうりうりと蓉子さまを小突いている。
「蓉子?今日はだんなは?」
「旦那じゃない!柏木さんは仕事のパートナーよ!あくまで仕事仲間」
「はいはい。てかわたしゃ柏木なんて一言も言ってないんだけど」
真っ赤になってる蓉子さまを小突きまわす聖さま。
口では否定しているけど私達は知ってる。
婚約を破棄された柏木さんと、密かに聖さまに想いを寄せていた蓉子さまが、恋に破れた者同士慰めあっているうちに仲良くなっているのを。


「しかし、こうやって同性婚ができるなんて、本当に祥子のおかげよね。
 小笠原の力で国会まで動かすんだからなぁ、自分の欲望のためとは言え」
「欲望なんて人聞きの悪いこと言わないでください!」
祥子さまを怒らせないでくださいよ、聖さまぁ。後のフォローが大変なんですから。
「えー?それが本音でしょう?祐巳ちゃん欲しさに世界の方を動かしちゃったんだから。
 ねぇ祐巳ちゃん」
な、なんでそこで私に話しを持ってくるんですか!?祥子さまが睨んでいるじゃないですか!
「ほぇぇ?わ、私に話を振らないでくださいよ・・・。ねぇ、お姉さま」
「祐巳、いつも言ってるはずよ。
 私はお姉さまと呼ばれても返事はしません。ちゃんと私のことを呼びなさい」
「はぅ」
祥子さまに睨まれ、皆からなんだか期待がこもった視線で見つめられる。
うぅ、皆の前だとまだまだ恥ずかしい。けど、言わないと祥子さまの機嫌を損ねたままだ。
「ごめんなさい・・・・・・・・・あ、あなた」
「はいっ!」
私と祥子さまの左手の薬指には、お揃いのシルバーのリングが幸せ色に輝いていた。


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