スレイヤーズすぺしゃる×マリみて。 菜々のシナリオシリーズです。
「ほ〜〜ほっほっほっほっほ!! ついに追いついたわよ、福沢祐巳!」
ビシッ! っと私を指差すのは、フワフワの髪、均整のとれたうらやましくなるようなプロポーションの美少女。 しかし、その容姿も、肩にはトゲトゲの付いたショルダーガード、首に髑髏の首飾り、無意味に露出度の高い黒い服に黒いマント。 晩秋の風にふかれてちょっぴり寒そうなのは、自称私のライバル藤堂志摩子。
「さあ、この前の依頼料、私の取り分をきっちりいただきましょう!」
「くっ、まだ覚えていたのね。 いいかげんしつこいわよ! あなたは志摩子なんだから二、三歩歩いたら忘れればいいのよ!」
4、5日前のこと、私はもう名前さえ覚えていない小さな村で『近くにあるダンジョンのモンスターを退治して欲しい』と言う依頼を受けた。
ダンジョンの中でお宝漁って、攻撃魔法撃ちまくってストレス発散できて、依頼料金貨10枚! なかなかおいしい仕事だったのだが、それに頼みもしないのにくっついてきたのが、金魚のウンチの志摩子だった。
祝杯と称して食堂で油断している時に、スリーピングの魔法をかけて眠らせて出てきたのだ。 『御代は連れが払うから』とお会計係に言っておくのは基本です。
「何気にひどいことを言われたようだけれど…」
「何気じゃあないから、本気で言ってるし」
「なんですって! 祐巳、あなたとは本気で決着をつけなければならないようね! そうして依頼料を私のものに!」
「この四、五日で何回もやっている気がするけれど。 いいわ、私もいい加減うんざりしてきたことだし。 本気で行かせてもらうわよ!!」
「ほ〜ほっほっほっほっ〜〜。 ……ってちょっと祐巳! そ、その呪文は!」
志摩子が焦りだした。 そうこの呪文は魔導師の仲間内ですら禁忌にされている。
『黄昏よりも昏きもの 沸き出でる硫黄より黄色きもの…』
「祐巳! その呪文はしゃれになら無いからやめておきなさい!」
あんたは今までしゃれで攻撃呪文を私に繰り出しとったのかい!
『時の流れに埋もれし、偉大な汝の名において…』
キョロキョロと周りを見回し逃げ場所を探している。 よっぽどあの時怖かったんだろう。 私も今、とっても怖いよ……。 始めちゃった物はしょうがないね、今さら止められないし。
『我ここに 闇に誓わん……』
「翔封界!!(レイ・ウイング)」
今さらながら高速飛行術を唱えて飛び立った志摩子、だがこの広範囲無差別いてこましたれ魔法からはもはや逃げられないだろう。 たぶんそれは私も………。
『我等が前に立ち塞がりし すべての愚かなるものに…』
私の視界が滲む、今さらながらだけれど”やめておけばよかった”と後悔しだしている。
『我と…汝…が……力もて……』
声が上ずり、途切れ途切れの詠唱になってくる。
『等しく……滅びを………与え…ん‥こ…と‥‥を!』
無常とはこのこと、悪魔が溜息を吐くように呪文が完成してしまった。
私の目から涙が零れ落ちる。 等しく私も滅ぼされてしまうのねっと思いながら、黄色い光を開放する。
『……ヨ、ヨシノ・スレイ〜〜〜〜ブ〜〜〜!!』
解き放たれた光芒は真っ直ぐ志摩子に向かって行き炸裂した。 そしてその衝撃波とともに聞こえてくるのはこの魔法が確かに炸裂したことを知らせてくれる声。
『 令ちゃんの〜〜! バカ〜〜〜〜〜〜〜!!!! 』
「あ、あ〜…はっはっはっはっ……。 はぁぁ〜〜……」
まあ、志摩子を完全に葬るには元素レベルまで分解しなきゃダメだろうから。 またそのうちのこのこと出てくるだろうけれど。 問題は……このあとの楽屋落ちかな?
* * * * * * * * * * * * * * * * * * *
「よくわかってるじゃない、ってか、私は魔王なのかい菜々! ……菜々? どこ行ったの? さっきまでここにいなかった?」
「さっきソロ〜ッと出て行きましたわ」
「……私こんなに肌を出すコスチューム嫌だわ。 それにあの下品な高笑いはちょっと…」
「肌を晒すなんて物じゃないわね、マイクロビキニね、それにこの術の名前間違ってるわ」
「ほぇ? そうなの? この手の小説って読まないからわかんなかったけれど」
「ドラゴンをこの術で倒したことから、「ドラゴンスレイヤー」=「ドラグ・スレイブ」ってなったのよ。 名前からすれば、私を倒したから「ヨシノスレイヤー」=「ヨシノ・スレイブ」って言うことになるのよ! って事は何? 私はドラゴンかそれに近いようなモンスターなの?! 却下よ! 何が何でも却下!! 菜々! あとで教育的指導よ!」
「こんな服着たく無いから……」
「”大平原の小さな胸”とか言われるのは嫌だし…」
「まあ、私はたいした出番はありませんけれど、お姉さまがそうおっしゃるなら…」
「志摩子さんの肌を晒させるなんて冗談じゃないわ」
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否決・・・・・・
「あ、逃げて来ちゃいましたけど。 あの場で済ませたほうが良かったでしょうか?」