このSSはパロディ且つイフ要素も含んでいます。苦手な方は読まないが吉です。
昼休み桂さんとお弁当を食べている時、桂さんをチラチラ見ながら私はひとつの決意を固めた。
前から気になっていることを桂さんに聞いてみることにした。
「桂さんってさ」
「ん?わたしがどうかしたの?祐巳さん」
「名字無いよね」
「い…いやぁ……そんな事ない…けど」
明らかに動揺している。何だか余計気になってきた。
「それっておかしいよね」
「そ……そうかなぁ…名字が無いなんて…この日本には五万とあることだよ」
五万人も名字が無い人がいたら大変ですよ、桂さん。
「桂さんってホントは名字あるんじゃないの?」
ビクッ!
「そ…そそそそそ」
これかなり面白い、私がしている道路工事のような桂さんがつぼにはまってしまった。
「そんな事ないよ!私は名字が無いのよ!」
あ、復活した。けど、顔は動揺の色を隠しきれていない。
「ホントは名字があるんでしょ?」
「あるんだったら、みんなに…言ってるわよ」
桂さんは目を泳がせながらミルクホールで買ったコーヒー牛乳を飲んでいる。
「そう、例えば………」
私は考えた、そう、名字があるのに人に言えない名字……つまり、人に言うのが嫌な名字、っていう事は……
「人に言うのが恥ずかしい名字……とか?」
ブウウウウゥゥゥ!!
桂さんは口から大量のコーヒー牛乳を吐いた。
「げほっ、げほっ」
「桂さん、はしたないよ」
桂さんはまだむせている。
「そんな……名字…ゲホッ…あるわけないでしょ」
「いや、一見名字だけなら違和感無いけど……」
ドクン、ドクン、桂さんはかなり緊張しているようだ。背景にドクンと言う文字がたくさん出ている。
「…そう、下の名前が桂だったら、あっという間にとあるの有名な落語家の名前につながってしまうとか…」
ギクッ!!!!
「……ち…ちがうよぉ」
声が思いっきり裏返っていますよ、桂さん。
「その名字は、1高橋、2佐藤、3田中、そして…………4小枝、さあどれだと思う?」
「え…えっと、1の高橋……かな」
「ちなみに、これに正解したら皆にはバラさないであげるよ」
「祐巳さんは私の名字……知らないでしょ?」
「桂さんの顔を見たらわかるわ、さあ、オーディエンスとテレホンにヒフティヒフティもあるわよ、桂さん」
「……じゃ…じゃあ、オーディエンスで」
「あらかじめ、リリアン生徒100人に聞いておいた、アンケートです。
1 高橋 0
2 佐藤 0
3 田中 0
4 小枝 100……です」
「それ絶対嘘でしょ!」
「そんな事無いよ」
「じゃあ、ヒフティヒフティで!」
「1と2と3が消えます。あ、口が滑っちゃった。消えるのは1と2だけだよ。3も消えちゃったらもう4の小枝しか無くなっちゃうもんねぇ〜?」
「…ワザと言ってるでしょ?」
「まさかぁ?」
「じゃ……テレホンを」
「はい、これどうぞ。もうつながってるからね」
私は桂さんに携帯電話を渡した。
「もしもし?」
『あ、もしもし?桂さん?』
「その声は蔦子さん?」
『そうだよ、今私、小枝って言う人の家にお邪魔してるんだけど』
「………へえ……えっ?」
『今小枝さんに変わるね』
『お〜い、桂聞いてるか?』
「こ…この声は…」
『そうだ、桂、お前のお父さ…』
プツッ…プープープー…
桂さんは携帯を切ったようだ。
「どうしたの桂さん。答え教えてもらった?」
「……わ…私は…」
「うん、桂さんは?」
「……私の…私の名字は!……こ…こえ」
……ん……んん…
チュン、チュン鳥の声がする。
「ふああ」
あ〜、変な夢見たなぁ、少し嫌な汗が出てるよ。私が祐巳さんの視点で自分を陥れようとする夢なんて……けど夢でよかったぁ。
「桂早く起きなさいよぉ〜!」
下から声がする。さてと学校に行こう。
学校の授業は普通に消化していく蔦子さんが休みなのが気になったが何事も無く、もう昼休みだ。
今は祐巳さんとお弁当を食べている。
なんだろう。
祐巳さんがチラチラ見てくる。
まさか………ね、あれは夢だし……けど、蔦子さん休みだし……………なんだかデジャブ。
「桂さんってさ」
ああ、やっぱり。だけど、大丈夫あれは夢。
きっと、大丈夫だ。
「ん?私がどうかしたの?祐巳さん」
私は平静を装って答えた。
「名字無いよね」
そして私の日常はループしていく。
切れ目の無いメビウスリングの様に………
==続く?==