【882】 おままごとサービス  (気分屋 2005-11-18 20:05:25)




お昼休み、薔薇館で志摩子さんと由乃とで弁当を食べていると由乃さんが変な提案をしてきた。

「ねえ、祐巳さん、おままごとしない?」

「え?おままごと?」

おままごととか言ったら幼稚園の子がするようなアレかなぁ?

「私おままごとなんてやった事無いのよ」

「あら、志摩子さん私が教えてあげるわ。おままごととは……」

「おままごととは…?」

「いかにリアリティを追求するかにあるの!」

「そうなの?」

志摩子さんが聞いてきた。

「そうじゃなかったような」

「そうよ!間違いなくそうだわ!だからしましょう!お医者さんごっこ!」

「いや、何かタイトル変わってない?」

「お医者さんごっこなら患者さんは祐巳さんね。お医者様は私か由乃さん」

「……なんで私なの?」

「まあ、言わずもがな…ね」

「そうよ!祐巳さんこの世には二種類の人間がいるのよ!」

ああ、なんかそれ聞いたことがあるようなぁ。

「そう、それはタチとネコよ!」

いや、やっぱり聞いたこと無い。

「ねえ、志摩子さん嫌な予感するから、やめようよ」

「私はしたいわ。お医者さんごっこ」

志摩子さんが笑ってる。天使のような微笑が今では小悪魔のように見えるよ。

「祐巳さん、今ここで私たちと一緒にお医者さんごっこするか、後で保健室のベッドでお医者さんごっこするかどっちがいい?」

「それって絶対的に二択なの?」

「二択なのよ」

「二択よ」

「じゃ、1つ質問していい?」

「いいわよ。祐巳さん」

志摩子さんは聞き分けが良くて助かるよ。

「なんで保健室なの?」

「保健の先生さえ追い出せば誰も来ないでしょ?」

由乃さん、怖い事いわないで。

「今ここでお医者さんごっこをします!」

「じゃあ、配役決めましょう」

「じゃあ、私お医者さんがいい!」

私は身の安全のために先手を打った。

「却下よ」

「却下ね」

ええ!?却下とかありなの!?

「私と志摩子さんはお医者さんと看護士さんね」

「私は看護士役ね、最初お医者さん役は由乃さんに譲るわ」

「で祐巳さんは風邪気味の患者さん役ね」

「なんでわざわざ風邪気味って設定にするの?」

「服を脱がす事が出来るからよ」

「いや、関係ないでしょ」

「さあ、スタート!」

え?え?なにもう始まってるの?

「あ、祐巳さん一旦外に出て、5分後に呼ぶから呼んだら部屋に入ってきてね」

志摩子さんはそう言って私の背中を押し外に出した。




5分後

「次の方どうぞぉ」

なんか呼び出し方妙にリアルだなぁ。

「失礼しまぁす」

そう言って、私は中に入る事にした。

「どうぞ、そこの椅子に座ってください」

看護士役の志摩子さんが促してくれた。

「ありがと、志摩子さん」

そう言った瞬間に由乃さんに睨まれた。

「あ…ありがとうございます」

由乃さんの顔は満足気になった。ふう、ヘタになれなれしく出来ないな。

それにしても、この仕切り確か保健室にあったやつじゃなかったっけ?しかも、由乃さん白衣着てるし。

「で、今回はどうしたんですか?」

「え?あ、ああ、確か風邪です」

「では、服を脱いで下さい」

「え?ええ!?」

由乃さんあなたなにいってるんですか!?

「さあ、脱いでください、先生の言うことは絶対です」

「ちょ、待ってよ!……やめ…いやああ!」

私は何故か下着姿にされた。

「うう、どうして下着姿にするのよ!」

「見たかったから…じゃなくて、診察が出来ないからよ」

「いいから、早く診察でも何でもしてください!」

「あら、患者さんホントに何でもしていいの?先生はホントになんでもするわよ」

「診察だけしてください」

「ちっ、解かりました。見た感じじゃ解からないわね」

ちっ、ってあなた。

「風邪は見ただけじゃ、解からないと思うよ」

「じゃあ、先生アレですね」

「そうね。アレしかないわね」

アレってなんだか。滅茶苦茶いやな予感するんですけど。

「アレとは?」

志摩子さんが私に向かって言った。

「触診よ」

「ええええ!?」

志摩子さんに目を向けている間にいつの間にか由乃さんが私の両手をリボンで結んだ。

「ちょ、なにやってるの!」

「最初は痛いけど…」

「痛いけど?」

「すぐに良くなるわ」

うわぁ、聖様みたい。じゃなくて!

「いやぁぁぁぁ!」

「待ちなさい!」

その時扉からお姉さまが入ってきた。

「お姉さま!…………お姉……さま?」

入ってきたのはお姉さまだったが、何故かお姉さまは白衣を着ていた。

「由乃、志摩子、患者の容態は!?」

「へ?お姉さま?」

「風邪のようですが」

「どうも診ただけでは決められず」

「じゃあ、体温計でもすればいいでしょ!」

「体温計は無いのよ。祐巳さん」

「診ただけでは解からないのね?」

そう言った、お姉さまの息遣いはドンドン荒くなってゆく。

「そうです教授」

ええ!?お姉さま教授役だったの?志摩子さん。

「ですからアレしかありません」

「そう、アレしかないですよ教授」

「…ハァハァ…そう、アレしかないわね」

あれ?何だかついさっきこんなやりとりがあったような。

「あ……あの、アレとは?」

あ、何だかこんな質問もついさっきやってたような……

「ふふ…決まってるでしょ?触診よ」

何故に!?

「って、志摩子さん!足もリボンで結ばないで!」

「そうよ、志摩子さん、足結んじゃったら、足開けないじゃないの」

いや、突っ込むとこそこじゃないと思います。

「目隠しって言うのも良くないですか?」

「目隠しで触診なんて聞いたこと無いよ!」

「気にしないで祐巳さんこれはお医者さんごっこだから」

「今の状況第三者の人が見たら絶対、お医者さんごっこには見えないと思います!」

「少しうるさいわね。タオルでも噛ませようかしら」

「いやぁ!たすけてぇ!」

「ちょっと、待ちなさい!」

そして、扉から出てきたのは紅薔薇様だった。

「よ…蓉子様!…………蓉子…様?」


入ってきたのは確かに蓉子様だった。だがその蓉子様は、何故か白衣を着ていた。


そして、開口一番……





「祥子、由乃ちゃん、志摩子、患者の容態は!?」





もう、お医者さんごっこなんてしません。















番外編


私と祥子は珍しく一緒に弁当を食べた。

そして、ついでに薔薇館に寄ろう。という話になり、薔薇館の前まできた。

「なに?これ?」

そこには手紙付きの白衣がドアにかけられていた。

手紙には「この白衣を着てから入ってください」とかかれている。

「いったい、誰がしたのでしょうか?私が見てきます」

そう言って祥子が上に上がってからもう5分近く立った。少し不安になったから、私も行く事にしよう。

ギィィ、階段を上る度にきしむ音がする。

「いやぁ!たすけてぇ!」

祐巳ちゃんの声だ!

私は階段を急いで上り、ドアを開けた。

すると、そこには下着姿の祐巳ちゃんが手足を縛られて、祥子と由乃ちゃんと志摩子が祐巳ちゃんを押さえつけていた。

「ちょっと、待ちなさい!」

「よ…蓉子様!………蓉子…様?」

祐巳ちゃんは泣き出しそうな顔をしている。

私は無償にその顔を見たら虐めたくなって来た。

多分、祥子もあの祐巳ちゃんの顔を見てしまったから、この状況になったのだろう。

そして、私もつい……

「祥子、由乃ちゃん、志摩子、患者の容態は!?」

と言ってしまった。














==了==


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