【883】 あのささやかな闇の奥  (春霞 2005-11-19 01:44:44)


【No:863】 一体さま作  『魔法使い記念撮影切ないほど』 と 
【No:881】 風さま作    『初めてのマジカルウサギガンティア』 が楽しそうだったので 
【No:647】 拙作      『サスペンス絶対領域全開』         から乱入しまーす。 (^o^) 


                  ◆◆◆


「ふははははは。 小娘どもめ。 真の魔界の力を思い知るがいい!」 
『うむ。 もそっと尊大に。 見下すような感じでな 』 

 うううぅ。 契約とは言え何で私がこんな事を。 顔が見えていないのだけが救いです。 
 可南子は、羞恥のあまり真赤に染まった顔を誰にも見られないよう、元々深く被っていた魔女帽の鍔を更にぐいと引きおろした。 

 何故こんな事になってしまったのか。 原因ははっきりしている。 目の前の奇天烈な格好をした魔女っ娘達のせいだ。 まさかマリアさまの園。リリアン学園に私以外にも魔女が居るなんて。 しかもこの頭の弱そうな格好。 正当な魔術師としてのアイデンティティが崩壊しそうで正視していられませんが。 叩きのめすには目を逸らす訳にもいきません。 何という試練。 

 一方は ”マジ狩るクラッシャーミラ狂由乃” とか、リングネームみたいなのを名乗っていますが。 口から火を噴いたりする辺り、本当にその筋の人なのかも。 小柄で華奢っぽいから違うかしら? ウェーブの掛かったかなり長い髪をふわふわさせて、ひらひらの多いピンクのドレスを着ています。 傍らには自立型の縫いぐるみを侍らせ、手にするは巨大でファンシーなステッキ。 凄く可愛らしい顔なのだけれど、詳しい特徴は見た端から忘れていくという、いわゆる正統派魔女っ娘と言う奴のようですね。 胸も無いし…。 

「だれがぺッタンかーーっ!!!」  轟 とそこらじゅうを焔が吹き荒れる。 口から焔、……正統派じゃないのかも。 

 もう一方は ”マジカル☆ウサギガンティア志摩子” と名乗っています。 所謂きょぬう型魔女っ娘。 最近アキバとか言う土地で増殖中のあの系統です。 こちらは毎回遭遇するたびに衣装が変わっていますね。 どうやらかなりの衣装持ちらしいです。 きょうは背中にウスバカゲロウの羽が生えています。 淡い緑色のふんわりとしたドレス。 ドロワーズのアンダーに3段のパニエ。 頭には小さなシルバーのクラウン。 コンセプトは妖精の女王でしょうか。 手に持つのも小さくて可愛らしい、星をあしらったスティック。 どちらにしろ、いつも胸元が大きく開いているのは仕様のようです。 何故かいつも、おかっぱ頭のリリアン女学生がハン○ィ・カムを構えて周囲を駆け回るのも仕様のようです。 なんとなく、見覚えのある女生徒なのですが、眼前から撮影機械を放すことが無いので、顔は判りません。 

「あんまり見ないで下さい……」 えいえい。 と恥かしげにスティックを振ると。 そこいらの雑草が凄い勢いで成長を始め、 やがて ”マジカル☆ウサギガンティア志摩子” の姿を覆い隠してしまいました。  ……なんのつもりかしらね? アンブッシュってやつかしら。 

『そこな小物ども。 マジカル☆さいとう(有) と マジカル☆たかお(有) で在ったか? 業務ご苦労である。 したがこの領域は既に、我、魔界公爵Sallosと 我が配下のテリトリー。 無謀な戦闘は止め、即刻立ち去るがよかろう。 我は無用の争いを好まぬゆえ、逃げる者は追わぬぞ? 』 

『なに言うてまんねん! シェアは奪い取ってこそのシェア。 相手が公爵とその太鼓持ちやから言うて、引く理由なんぞ ち〜ともありまへん。 大体、公爵はんと言えど、この世界で魔力全開っちゅう訳にはいかへんでっしゃろ。 商機は大有りどっせ。 マジ狩る☆はん 』 妙な縫いぐるみが 妙な踊りを踊りながら 妙な関西弁で吼えています。 

「うがー! マジ狩る☆ 言うなーーー! そこのきょぬうも、そこの爆乳も、全員滅びろぉぉぉぉ。 」 
 轟々とさらに高温の焔が撒き散らされ、マジカル☆ の方を隠していた茂みを蒸発させています。 当人は、そよ風でも吹きぬけた風情で 「あらあら、まあまあ きょぬうだなんて。 恥ずかしいわ 」 と頬を染めながら量感豊かな胸元をそっと両腕で隠してますが。 (もちろん隠し切れないぶんが、腕の間からはみ出している。) 

 私は、漆黒のインパネスを下から押し上げている、自分の胸元を見おろしました。 カムフラージュの為に、インパネスの下は普通の白いシャツと、紋章つきのブレザー。 少し短めのプリーツスカートをはき。 首元はストライプのネクタイを締めてアクセントにしています。 最近ボタンがきつくて留めるのに苦労しています。 特に胸元が。 その点リリアンの制服はゆったりしていて楽なのですが。 「爆乳と言われても、、、」 困惑して胸元に手をやった拍子にぶるんと大きく揺れてしまう。 

 ぷつん。

 ころーん。ころーん。ころーん。 

 …………
 ……

 ボタンがはじけ跳んでしまったみたいです。 (いやん) 

「ふくくくくく。 抹殺、だぁぁぁぁい 決定ぃぃぃぃ! 」 最早目つきがおかしいですね。 

『やれやれ。 正義の魔法少女(達)に相対する、悪の美人魔女のはずが。 なにやらあっちの方がよっぽど悪役のようじゃのう 』 
 公、暢気なことを。 取り敢えず一度引きましょう。 シナリオが完全に崩れていますよ。 
『ううむ。 せっかく出張ってきたんじゃから。 もそっと派手にやりたい所じゃが 』 
 そんなの、どうでも良いです。 あんな変な人たちと長々と係わり合いに成りたくありません。 こんな所をもし、祐巳さまに見られたら。 恥かしくて死んでしまいます。 ああ、ストーカをしていた頃の、あの我が身を隠してくれた木々の陰。 あのささやかな闇の奥が懐かしい。 

『あー。これこれ。 帰ってきや。 しようが無いのう。 では此度は大技を見せて置いて引く事にしようぞ。 ただし、去り際にちゃーんと ”ほほほ”笑いと、捨て台詞は忘れずにの! 』 
 はあ。 取り敢えず、撤退許可には感謝します。(ようやくこの恥辱プレイから解放されますね。) 
『なんの。 相方の精神の平安を図ってこそ、真のぱーとなーしっぷ というものよ。 ほっほっほ。 』 
 心の平安と言うのなら、下らないシェア争いに鼻面を突っ込む事自体を止めて欲しいのですが…。 
『ふふん。 聞こえんのう。 それより、ほれ。 大技じゃ、大技♪ 』 
 わかりましたよ。 では、、
『おう、口上も忘れるでないぞ。 びしっと決めてみや? 』 


「まったく、胸の薄い野獣娘と、露出狂の白痴娘の相手は疲れる。 これを受けて黙るがよいわ。 永遠にな!」 
 懐から、自分の軽量型マジックワンドを取り出す。 皇龍のひげを埋め込んだ一品を高く掲げると、魔界公爵Sallosの力が涛々と雪崩れ込んでくる。 やがてそれは我が身の丈を超えるような緋色の大剣に姿を変えた。 流石に尋常でない魔力を感じ取れたか。 今までひたすら騒いでいた マジ狩る☆ も、ほえほえしていた マジカル☆ も。 真剣な顔で身構えた。 

 じりじりと引き絞られてゆく緊張。 それはやがてピークに達しようとし。 



「ちょーーーーっと、まったーーー!! 神々の巫女、あらゆる神威の代理人。 祝部のゆーみん ただ今参上。 呼ばれてなくても押しかけますっ! 」 

 ま、また次のが orz 
 脱力しながら横目で見遣ると、今度はどうやら毛色が違うようだ。 
 上は白衣。下は緋袴。 艶やかな半襟。 さらに薄く透ける千早をはおり。 手には鈴鉾。 頭には飾り烏帽子に、簪を挿し。 麗々しくも着飾った。 これはつまり巫女? 
 ってゆうか。 魔法少女カモフラージュを突き抜けて、私の心眼はそこに祐巳さまを見出した。 

「うわわわわん。 」 悲鳴をあげて、緋色の大剣を足元に叩きつける。 一気にはじける魔力。 爆風で視界が煙に包まれる。 私はマジックワンドの位相をひねり、賢者の杖を呼び出した。 スタっとばかりそれに飛び乗り。 もういっそ大気圏外までも脱出して、火星まででも逃げ出さんばかりに加速します。 

 背後で祐巳さまが 「あれ? 可なk…」 と呟いたような気がするかど。 聞こえない。 絶対に聞こえない。 もう当分公爵の仕事は引き受けない。 引き受けないったら引き受けないからね。 




 もうバスケに専念しようと、心に誓う可南子だった。 




『ほ、ほ、ほ  そうはいかんぞえ。 りたーんまっちじゃ』 by Sallos 


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