私は賢者蓉子。三賢者(通称Magi)のうちの一人、赤の賢者(マギ・キネンシス)である。
前回(【No:448】)、私は暴走寸前の聖を静める為、遂にキリスト家に行く事にしたのだが……。
「ねえ、江利子。本当に連れて行って大丈夫なの?」
私は、いつもの倍テンションが高い聖を指して言った。
何故なら、此処までの道中「あの」聖が、一切ナンパをしていないのだ。宿屋からキリストの住む牧場まではそんなに離れてはなかったが、此処まで来る途中に、いかにも聖好みの女の子が何人かいた。いつもの聖なら、私が目をはなした数秒のうちには手をだしている。にもかかわらず、今日の聖は目すらくれていない。訪問を許したとはいえ、さすがに心配になってくる。
「だから、大丈夫よ。遠目だったから聖には分からなかっただろうけど、間近で会ったら手を出す気がなくなるわよ。」
フフフ、と嗤う江利子に不気味さを感じつつ、とりあえず、先に進むことにした。
「さあ、着いたわよ!ここが、かの有名になる、キリストさんの生まれ家よ。」
「意外と普通の所なのね。」
今、とある農家の前に私達はいる。思ったよりも、というより、何の変哲も無いただの農家だ。
「当たり前じゃない。今はただの人なんだから。」
「…江利子、いい加減人の心を覗くのやめてちょうだい。」
「さあ!入るわよ!」
人の話聞けよ!
「ごめんくださーい」
私の心の中のツッコミすら無視しやがります、この凸。
「はい、今開けますね。」
そうこう考えている内に、中から綺麗な人が出てきた。おそらくキリストの母親、マリアだろう。
「わっ……」
聖がいろいろな意味で絶句している。確かに、マリアは絶世の美聖女と言っていいほどだったが、何故か頭の中で「シスター上村」という単語が浮かび上がった。
「へぇー、最近赤ちゃんが生まれたんですか。見てみたいです。」
私は自分でも白々しいな、と思いながら話す。
あれから、江利子の商談や聖とマリアさんのお茶会等を経てようやく本来の目的となった。
「いいですよ。今は隣の部屋にいるんですよ。こちらですよ。」
私達三人はマリアさんに案内され、遂にキリストと面会する。三人で同時に揺り篭の中を覗きこむとそこには……
「むぅ…」「なるほどね…」「…フフフ」
これは、遠い昔、三賢者がまだ幸せだった時の、旅の物語である。
「〜三賢者〜いざキリストへ!シリーズ(完)」