【986】 猛チャージ荒くれ悶々と  (joker 2005-12-23 00:34:33)


「うがーーー!!」
 そのとき由乃は叫んでいた。福沢邸祐麒の部屋のパソコンの前で。
「よ、由乃さん、どうさたの?」
 叫び声に驚いた祐麒が、ジュースを持って部屋に駆け込んでくる。
「どうもこうもないわよ!『マリク様がみてる』のネタばれ小説書きたいのに駄目だって書いてるのよ!」
 そう言って祐麒の肩を掴んでぐらぐら揺らす由乃。
 現在由乃は帰りがけに買った愛読者の最新刊『マリク様がみてる〜聖都のクォリティー〜』を読んで、その二次小説を書かんと、パソコンを持っている祐麒の部屋に遊びに来ていた。
 ちなみに『マリク様がみてる』とは、異世界エルナードの国々の戦乱の様子を、聖都レインジアを中心に描いた小説である。
「せっかくルシオラの一騎打ちを帝国大守のテレーゼが断るっていう予想外の展開になったのにー!!」
 うきー、と頭をかきむしる由乃に、祐麒はしばらく思案した後
「由乃さん」
「何よ!ゆ――」
 呼ばれて振り返った由乃を正面から抱きしめて、頬に軽く口づけする。
「これで我慢してくれる?」
「…………ばか」
 真っ赤になった由乃を抱きしめたまま、二人は、祐巳が帰ってきて祐麒の部屋に入るまでそのままで過ごしたそうな。


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