「『火の七日間』に次回に出てくるキーワード次第でつながるのかもしれないのですわ」
「そうなのよ瞳子ちゃん。『一発ツモキャンペーン』参加作品なの」
「祐巳さまっ。キャンペーンの名前を勝手にかえないでくださいっ」
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この季節、さすがに外でお弁当はつらい。
とはいえ、他のクラスの子と一緒、となるとどこかの教室というのはなんとなく居づらい面々はいるもの。中庭に面した、暖房の効いた音楽準備室にもぐりこんだ三人。
「なんだか、騒がしいなあ」
「姉妹、ねえ。別に、姉や妹が二人いたってその人にとっていい形なら、他の人がとやかく言う事じゃないけどなあ。今日子さん、どう思う?」
「うん、演説っていってもねえ。その人自身が演説したとおりにすればいいだけだもん」
「でも、こんなに今の姉妹に不満な人っていたんだねえ、ひかりちゃん?」
「どうかしら。わりとさ、みんななんかイベントがあってわくわくするようなことだったら乗ってくるじゃない。言いたいことはあってもほんとに今の自分の状態が不満とは限らないわよ」
「あーあ、ライブとおなじ?」
「うー、そういえば、私たち三人とも姉妹なしで来ちゃったのよねえ、もう卒業が目の前なのに」
「だって、その必要がなかったんですもの。今日子さんがいるし」
「うわあ、え? そういう関係だったわけ? ひかり、ちゃん?」
「ちょおっと。美冬さん、こういう時だけちゃんづけするぅ?」
「だって、同じ学年でちゃんづけで呼ぶの、今日子さんがひかりちゃんを呼ぶ時くらいよほど親しい同志でないとめずらしいわよ」
「いや、それにはわけがあってねえ。ちょっと信じられないような話なんだけど……」
† † †
「………」
「美冬さん、美冬さんってば。どうしたの? そりゃあ、ありえないような話だから信じてくれなくてもいいけれど、どうしちゃったの?」
「だまされてると思った? そう思われてもしょうがないけど、美冬さんなら話してもいいかなって、ごめんね」
「ちがうの!」
「は?」
「あのね、ひかりさん、あなたそれで平気なの?」
「平気って、なにが?」
「なにがって、小学校の時からさがしてさがして、探し続けた『お姉さま』がとうとう見つかった、それでおなじクラスだったから嬉しかった、とってもよくわかる。 よくわかるけれど、あなたそれでいいの? 姉妹になれなくていいの? ロザリオもらえなくていいの?」
「え? あ、それはそう思ったこともある……」
「あ、そうなんだ、ひかりちゃん。私もね、もし病院のベッドの上で思った通りひかりちゃんが一つ下だったらなあって時々考えるよ」
「ねえ、これって悲劇じゃないの? ねえねえ、姉妹にさ、同じ歳の姉妹、てか双子、かなあ、なんでないの?」
「えー、一緒にいられるから悲劇なんて思ったことないけど、そういわれればそうね。でもそういう美冬さん、ひょっとしてあなたも?」
「あ……、うん」
「紅薔薇さまでしょ」
「きゃあああ、きょきょきょ」
「キョンシー」
「シームレスカップブラ」
「ブランコ」
「コットンのハンカチ」
「血がついちゃった」
「たいへんだ、洗ってかえさなきゃ」
「きゃああ、って、きょきょきょーこさんって、ひかりちゃんもやめてーーー」
「あぁは、あの話、紅薔薇さまだったんだ」
「うふふ、美冬さん見てれば一目でわかるじゃないの、ひかりちゃん」
「ねえねえ、今日子さん、耳貸して……」
「ん?」
「なになに、なによ二人とも」
† †
「あ、あ、あ、あたしが演説ぅぅぅぅぅ!?」
「そう。双子がないのは運命の悲劇だ。同学年のスールがあったっていいじゃないか」
「万国の同学年カップル団結せよ」
「「おーーー!」」
「ちょちょちょっとまってよ。ないのはないだけの理由があるじゃない、先輩が後輩を指導する姉妹の形とは違っちゃうし、同学年の子が一緒にいるのって別に姉妹にならなくたっていいし、だからその」
「だからその、それでいいの?」
「う……よくない」
「だから演説」
「万国の双子団結せよ」
「「おー!」」
「だあから二人ともっ。なんで私なのよ」
「ラストチャンスでしょ」
「え??」
「紅薔薇さまに直接ぶつかれるラストチャンスって、今日子さんは言ってるのよ」
「年が明けたら自主登校になる。あと何日会えるかもわからないのよ」
「演説の時には、祥子さんは絶対にいる。ね、ラストチャンスなの、逃したらもうないかもしれないのよ?」
「……そうだ、もう私たち、卒業なんだね……」
「やる」
「おおおおやんややんや」
「遠くからじゃ見えないわよねえ。令さんに30センチ高い演説台作ってもらおう」
「ひかりっ、それNGワード。ひとがきよぶたしようっていうのに」
「演説台ねえ、たしかに清水の舞台くらいありそうな」
「今日子さん? なんか言った?」
「いえ、なんにも」