がちゃS・ぷち

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No.3875
作者:ヘススナバス
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2018-03-17 08:47:29
萌えた:0
笑った:1
感動だ:9

『愛する祐巳へ』

【No:3868】【No:3869】【No:3871】【No:3872】の続き。
マリみてと城下町のダンデライオンのクロス的な何か。
5話で一巻が終わるはずだったのに終わらなかった。


「あら、祥子に祐巳ちゃん。遅かったわね。」

「遅れてすみません、お姉様。すぐに着替えてきます。ほら、祐巳。行くわよ。」

「あ、はい!」
そう言って祥子様は祐巳の手を引っ張っていった。

「それで、奏さんと茜さんはどうしてあの二人と?」

蓉子様がそう聞いてきたのでカナちゃんが説明をした。

「なるほどね。祥子にしてはずいぶん積極的ね。何かあったのかしら…シンデレラも急に私がやりますって言ってきたし。」

蓉子様はそう言って考え込んだ。

「あら、ちょっと考え込んでしまってごめんなさい。聖たちのいる所で見学していってね。」

蓉子様に案内され私とカナちゃんは薔薇様方のいる所へ行った。
そこにはなぜか修ちゃんもいた。

「茜さん、お久しぶり。奏さんはこうやってお話するのは初めてかな?」

聖様がそうおっしゃった。

「ええ、お見かけすることは何度かありましたがこうしてお話しするのは初めてですね。」

カナちゃんが外行き用の笑顔でそう答えた。

「お久しぶりです。」

私はそう頭を下げた。

「茜さんにはうちの志摩子も仲良くしてもらっているようだしコンゴトモヨロシク。」

聖様は笑いながらそう言った。

「ところで修ちゃんはなぜここにいるの?」

カナちゃんがそう聞いた。

「生徒会長に頼まれて雑用係にな。リリアンに来る機会なんて滅多にないからありがたかった。」

「下心丸出しね…」

カナちゃんは呆れたように言った。

「そういうお前らはなんでここにいるんだ?茜だけなら祐巳の様子を見に来たのかと思うが。」

「まあいろいろあってね。そうだ!今日私と茜と祐巳は帰りが遅くなるってみんなに言っておいてくれない?」

「大事な用事か?わかった。言っておこう。茜は買い物できなかったから来週も買い物当番な。」

そ、そんな…自業自得とはいえ泣きたくなる。

「奏さんと茜さんも劇に出ない?葵さん見る限り踊りはばっちりみたいだし。」

私たちの会話が終わるのを待って江利子様が聞いた。

「せっかくですが私は遠慮させていただきます。受付とかいろいろ引き受けちゃったので。」

カナちゃんはそう言って断った。

「茜さんはどう?」

聖様が聞いてきた。

「演劇かぁ…」

やってみたい気持ちは大いにある。

「茜が出るとなるとさらに人集まるけど人見知りのあんたがその中で演技できるの?」

「うっ…私も遠慮します。」

そんなこと無理に決まっている。こんな中で演技する祐巳はすごいなぁ。

「お待たせしました。」

祥子様が祐巳を連れて更衣室からやってきた。

「あら、祐巳。似合っているじゃない。」

「そうですか…?私にはちょっと豪華すぎる気がするけど。」

カナちゃんが笑いながら言い、祐巳は複雑そうな顔をした。
そしてカナちゃんは隠していた携帯でこそこそ写真を撮っていた。

「あとで何かのネタになるかも。」

カナちゃんは邪悪な笑みを浮かべていたが私は見なかったことにした。

「もう少し前だったら祐巳ちゃんのシンデレラ姿も見られたんだけど残念だねーあれは一見の価値ありだったよ。」

聖様が笑いながらそう言った。
それは見てみたかったなぁ。

「さあ、しゃべってないで練習しましょう。祥子、祐巳ちゃん位置について。」

蓉子様が手をパンパンとたたき促して練習が始まった。



練習が終わり私、祥子様、茜ちゃん、奏様の4人は祥子様お宅に向かっていた。
茜ちゃんは能力を使って壁を持っているので目立つことこの上ない。

「茜ちゃん大丈夫?」

「うん。それに壁で顔も隠れてて誰だかわからないでしょ?それはうれしいかな。」

そう言ったそばからすれ違った子供が「あ、茜様だ。」って言っていた。
無言になる私と茜ちゃんであった。

「…それにしても祐巳堂々と演技してたねー見直しちゃった。」

「いやいや、いっぱいいっぱいだったよ!」

茜ちゃんにそう言われたが私は首をぶんぶん振って否定した。

「そうかしら?わたしから見ても茜より堂々とした雰囲気だったわよ。茜の代わりに王様に立候補する?」

奏様がとんでもないことを言い出した。
この国ではある時期に櫻田家の7人の兄弟姉妹で国民選挙を行いその結果で王様が決まる。
まだ選挙をいつやるかは発表してないが近々告示があるのではないかと言われている。
茜ちゃんもその候補の一人なんだけどいまいちやる気はないみたいだ。

「あら、いいわね。私は祐巳に投票するわよ。」

祥子様が笑いながら言った。
こういう冗談に乗るのは珍しい気がするなぁ。
柏木さんとのことが解決して何か変わったのだろうか。

「何言ってるんですか!?私は茜ちゃんが相応しいと思ってますよ。」

「え?私?」

「うん。選挙になったら絶対茜ちゃんに入れるからね!」

私は茜ちゃんの手を握りながら言った。

「あら?祐巳。私には入れてくれないの?」

奏様がそう言った。

「えーとですね。気持ちとしてはみんなに入れたいんですけど1票しかないわけだし、やっぱり茜ちゃんが1番過ごしてきた期間が長くて…」

「冗談だから冗談。あんたが茜に入れるのはわかってたわよ。」

「カナちゃん、あんまり祐巳をいじめないようにね。」

「はいはい。」

冗談だったのかぁ。でも実際選挙になったら私は迷いなく茜ちゃんに入れるだろう。
1番王様にふさわしいと思っているから。

そうこうしているうちに祥子様のお宅に着いた。
さすがに大きい。

「さすがに大きいわね・・・」

奏様がつぶやいた。

「あなたたちは宮殿があるし見慣れているのではなくて?あ、茜さん。壁はその辺に置いてちょうだい。」

「あ、はい。」

そういって茜ちゃんは壁を置いた。

「お疲れ様。茜ちゃん。」

「ありがと。いつものカナちゃんならもうちょっと小さいの作ったはずなのになぁ。」

奏様は普段茜ちゃんにツンケンしているけど実際はとても妹想いなのだ。
必死だったからこんなに大きくなってしまったのだろう。

「とりあえず中に入って。」

祥子様に案内されて私たちはお屋敷に入った。

「祥子さん、お帰りなさい。まあまあ、奏様と茜様がご一緒とはどういうことかしら。」

玄関を入ると祥子様にそっくりな綺麗なご婦人がいらっしゃった。

「お母様、ただ今戻りました。ちょっと大きな荷物ができたので家に置いてもらうことにしましたの。お爺様やお父様にはあとで私からお話ししますわ。」

「ご迷惑をおかけします。」

奏様がそう言って頭を下げたので茜ちゃんと私も頭を下げた。

「そのくらいだったらお安い御用よ。そういえば自己紹介がまだだったわね。私は祥子の母で清子と申します。」

「櫻田家第二王女の奏と申します。」

「お、同じく第三王女の茜です。」

「私はリリアン高等部1年の福沢祐巳と申します。」

みんなで自己紹介をした。

「祥子さんが山百合会以外の人を家に呼ぶなんて初めてかもしれないわね。お茶を入れさせますから上がってくださいな。」

清子様にそう促されみんなでついていった。

その途中で、
「あ、あの大変申し訳ないのですがお手洗いお借りしてよろしいですか?」

割と限界だったので恥ずかしいけど清子様にお願いすることにした。

「いいわよ。だけど多分迷うわよね…祥子さん、奏様たちを案内してもらっていいかしら?」

「ええ。わかりました。」

「あの、私もお手洗いに…」

茜ちゃんがそう言って手を挙げた。

「じゃあ二人ともついてきて。」

そうして祥子様、奏様といったん別れて行動することになった。



「いやー祐巳がお手洗いって言ってくれて助かったよ。」

私は小声で祐巳に言った。
私も限界だったのだ。

「私はここで待っているからごゆっくりね。」

清子様に案内してもらってお手洗いについた。

「まるで宮殿のトイレのようだね。」

祐巳がそう言った。

「私もそう思った。」

ふたりでふふっと笑った。

用事が終わってトイレから出るとまだ祐巳はいなかった。

「茜様の方が先ね。」

清子様がそう言った。
ど、どうしよう。人見知りの私には二人きりは辛いので祐巳を待たずに行っちゃおうかな。
そう決めて

「あ、あの私先にカナちゃんのところへ行ってようと思うので道を教えて貰っていいですか?」

「あら、そう?私は祐巳ちゃんを待っているわね。道は・・・」

「あ、ありがとうございましゅ。」

思いっきり噛んだ。恥ずかしすぎるよ。

私は頭を下げて早歩きでカナちゃんのところへ向かった。
清子様の言葉を思い出しながら向かったところで祥子様とカナちゃんの話し声が聞こえた。
ここだと思い戸を開けようと手を伸ばしたところで

「祥子さんは本気で祐巳のことを妹にするつもりなの?」

カナちゃんのその言葉で私は戸を開けるのをやめた。



お母様達はお手洗いに向かったので、私と奏さんで先に向かってお茶を入れた。

「どうぞ。」

「ありがとう。」

私はそう言ってお茶を出した。
奏さんとはほとんど話したことはない。
だけど最近なにか敵意みたいなものを感じる気がする。

「奏さんも祐巳とは仲がよろしいのね。」

「ええ。家族ぐるみの付き合いですしね。」

櫻田家と本当に近い関係にあるのね。
意外と堂々としているのは王族と付き合ううちに視線になれたということなのだろうか。

「祥子さん、一つ質問をしてよろしいかしら?」

「ええ、答えられることなら。」

そう言われて奏さんを見るとリリアンでは見ることのない鋭い目つきをしていた。

「祥子さんは本気で祐巳のことを妹にするつもりなの?」

奏さんは冷たい視線のまま私にそう聞いた。
私は一つ息を吸って奏さんを見つめ返して
「本気よ。」

そう心の底から言った。

「本当に本気?茜に事情を聴いた限りだと妹にするのはだれでもよかったように思えるけど?」

「最初はそういう気持ちもあったというのは事実よ。ただ祐巳と接しているうちに私にはこの子しかいないと心の底から思えたわ。」

「私たち櫻田家の人間は全員あの子のことを愛してるわよ。あの子を不幸にしたら私たちはあなたをゆるさないと思うわ。その覚悟はあって?」

「あの子は絶対私が幸せにするわ。」

心からの言葉を素直に言ったがこれは冷静に考えるとプロポーズみたいではないだろうか。

「…」

「…」

ふたりとも無言になる。

「まあ最終的に決めるのは祐巳だしこれくらいにしておくわ。ただ不幸にしたら許さないっていうのは本当よ?」

「ええ。わかっているわ。」

敵意が薄れた気がする。
私がいい加減な気持ちで祐巳をもてあそんでいると思っていたのだろう。
過去を振り返るとそう思われてもしかたない。
それはこれから証明していけばいいだろう。
祐巳がロザリオを受け取ってくれることが前提だけれど…

ん?今思うと受け取ってくれる可能性は低いのではないか?
私は祐巳に対して特に何もしていない。
それどころか恥をさらしている気がする。

これはまずい。どうにかしなければ。

「あの、奏さん?私からも質問いいかしら?」

「ええ。」

「祐巳って何が好きなのかしら?」

物で釣るのは我ながらはしたないと思うが背に腹は代えられない。

奏さんは目を丸くしている。
そして少し笑って

「あの子は甘いものが好きね。葵姉さんのお菓子をよく食べているわよ。」

こう教えてくれた。


茜ちゃんが先に言ったことを聞き清子様と一緒におしゃべりをしながら歩いて部屋に向かった。

部屋の近くまで来ると茜ちゃんがしゃがみながら戸に耳を当てていた。

「茜ちゃんなにしてるの?」

「え!?ゆ、祐巳!な、なんでもないよ。」

何でもなさそうにないが慌てて隠すので聞くのはやめておいた。

「ほらほら、そこでしゃがんでないで中に入りましょう。」

清子様に促され私と茜ちゃんも中に入った。
中ではすでに祥子様と奏様がお茶を飲んでいた。



「ではお邪魔しました。壁のこと本当にありがとうございました。」
奏様と共に私と茜ちゃんも頭を下げた。

「いえいえ、珍しいものを見られて幸せだわ。」

清子様がそうコロコロ笑った。こういうところは失礼ながらかわいらしいと思ってしまう。

「そうだ。お土産にこのお菓子持って行ってくれない?たまたま、たまたまあったのだけれど、うちじゃ食べきれなくて。甘い物よ。」

祥子様はそう言って私と茜ちゃんに手渡した。
奏様はなにか笑っているけど何がおかしいのだろうか。

「よかったわね祐巳。大好物の甘い物よ。」
奏様は笑いながら言った。

「はぁ。祥子様ありがとうございます!」

なんか釈然としなかったがうれしかったのでお礼を言った。

「では、ごきげんよう。また学校で。」

そう奏様が言い帰路についた。



祐巳と家の前で別れてカナちゃんと二人きりになった所で私は思っていたことをカナちゃんに聞くことにした。

「カナちゃんはさ、祐巳を妹にしたかったの?」

「突然なによ。」

「祥子様との会話聞いたたんだけど、私たちや祐巳以外相手にああいう感じで話すの珍しいなと思って。」

普段もっと温厚な感じで話しているはずだ。

「あんた聞いてたの?」

カナちゃんは呆れたように言った。

「うん。ごめんね。あ、でも私だけで祐巳は聞いてないよ。」

「まあそうでしょうね。祐巳を妹にっていうのは祐巳が2年になって姉がいなかったら妹にしようかなと思っていた程度よ。」

「そうなんだ…」

前に遥は95%祥子様が姉になるって言っていたたけどもしかして残り5%はカナちゃんだったりしたのかな。

「あんたにも聞きたいことがあるんだけど。」

「え、なに?」

「祐巳に姉ができるのは寂しい?」

あんまり考えたことなかったなぁ。でもこれからは姉のいる祐巳と付き合うことになるかもしれないんだよね。しかも山百合会に入るとなったら今まで通りにはいかないだろう。

「うん、寂しいのかもしれない。」

私は正直に言った。

「しかも姉になるかもしれない祥子様に嫉妬してる。」

「それは私もそうよ。だからああいう態度になったわけだしね。」

こういうところは姉妹で似ているのかもしれない。

「まあでも姉が出来ようと祐巳の私たちに対する気持ちは変わらない。そうでしょ?」

カナちゃんはそう言った

「うん。そう。そうだね。」

寂しいけど祥子様が姉になったら思いっきり祝福しよう。

「ところで祐巳が断る可能性はないの?」

「祥子様が祐巳と向き合ったならないと思うよ。祐巳って祥子様好き好き病だから。」

「なによそれ。」

ふたりで笑いながら家に入った。


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