がちゃS・ぷち

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No.3872
作者:ヘススナバス
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2018-03-03 23:16:27
萌えた:3
笑った:2
感動だ:1

『微笑む瞬間』

【No:3868】【No:3869】【No:3871】の続き。
マリみてと城下町のダンデライオンのクロス的な何か。


「ゆ、祐巳ちゃん!大丈夫!?」

紅茶を吹きだした紅薔薇様はあわてて私をタオルで拭いてくださった。
ちなみに黄薔薇様と白薔薇様は笑い転げている。

「「えーと、申し訳ありませんでした。」」

柏木さんと修くんは頭を下げた。
こんなことになるとはマリア様もお釈迦様もわからなかったであろう。
紅薔薇様もごめんなさいね?と言ってくださったがむしろ悪いのは突然現れたこちら側なので私は紅薔薇様にすみませんでしたと頭を下げた。

「まあ謝るのはこれくらいにして祐巳ちゃんを着替えさせなきゃ。祐巳ちゃん着替えは持ってる?」

「いえ、今日は体育なかったので…」

白薔薇様がそう言って私に聞いたが、首を横に振ってそう答えた。

「あー祐巳、着替えは俺が持ってくるよ。祐巳のお母さんに頼めば大丈夫だろ?」

「じゃあお願いしていいかな?」

修くんがそう提案したのでそれに乗ることにした。
じゃあまたと言って修くんはいなくなった。

「ところでなんで本物の王子様がいたの?」

聖様より復活の遅かった黄薔薇様が私に聞いてきた。

「能力を使った荷物持ちのために連れてきたみたいですよ。」

私は聞いた通りのことをそのまま話した。

「なるほどねー花寺の生徒会長も顔が広いわねぇ。」

黄薔薇様は感心したようにつぶやいた。

「そういえば祥子様はどちらへ?」

祥子様はこの部屋のどこにもいなかった。
やっぱり途中で見たのは祥子様だったのかなと思い聞いてみた。

「先に体育館へ行くって言って出て行っちゃったわ。」

「そうですか。やっぱり学校内で身内に会うのってどこか気まずいですからね。」

私は黄薔薇様が答えてくれたのに対してそうつぶやいた。
その瞬間なぜか部屋の空気が凍りついた感じがした。
なぜみんな固まっているのだろうか。

「…祐巳ちゃん。いまなんて言った?」

白薔薇様が確認するように言ってきた。

「え、はい。学校内で身内に会うのは気まずいですよね、と。」

私はなぜ聞かれたのか分からなかったがそう答えた。

「…誰と誰が身内なの?」

今度は紅薔薇様が聞いてきた。

「えっと、祥子様と柏木さんがです。」

私はですよね?という視線を柏木さんに投げかけた。

「ああ、確かに僕と小笠原祥子は従妹の間柄だ。」

柏木さんがそう言った。

「失敗した…」

白薔薇様はそうつぶやいた。
失敗したって身内だと不都合があるってことだろうか。
私がそう考えていると白薔薇様が私を引っ張って小声で話しだした。

「祐巳ちゃんは知らないと思うけど祥子の家庭は複雑でね。おじい様もお父様も外に女の人をかこっていて、それが祥子の男嫌いの原因なわけよ。それであそこの男はその原因に近い存在なわけで、そんな人で男嫌い直ると思う?」

私は首を横に振った。じゃあこれからどうするのだろうか。
薔薇様方も無理にやらせるわけにはいかなくなった。
消去法でいけば私以外にいないだろう。

「ただいまー祐巳。着替え持ってきたぞ。」

そう考えていると修くんが帰ってきた。
紙袋を持っているのでお母さんがそれに入れてくれたのだろう。

「ありがとう!では私も先に体育館に行って着替えてきます。」

そう言って私は薔薇の館を出た。
シンデレラの件については薔薇様たちが話し合って決めるだろう。

先ほど祥子様がいらっしゃったあたりを探してみたがもうすでに誰もいなかった。
そろそろ着替えないとまずいと思い私は早歩きで体育館に向かうと上履きが1つだけ入っているのが目に入った。
「きっと祥子様だ!」

私は急いで上履きを脱ぎ、扉を静かに開けた。
そこには祥子様が1人でポツンと座っていた。

「祥子様…」

「ああ、祐巳。」

元気がなさげである。

「祥子様、先ほど図書館のわきの道にいらっしゃいませんでしたか?」

私はそう聞いてみることにした。

「…いかないわ。」

「そうですか。」

私はそれ以上聞かないで祥子様の隣に座った。

「スカートが汚れるわよ。」

祥子様が笑いながら言った。

「あとで着替えるので大丈夫です。」

「そういえばあなた制服が濡れているわね。どうしたの?」

「ちょっといろいろありまして…」

あなたのお姉様にぶっかけられましたとは言えず曖昧に答えることにした。

そこから少し沈黙が続いたが決して嫌なものではなくむしろ心地のいいものだった。

「いたのよ。」

「へ?」
変な返事になってしまった。

「あそこにいたのよ。どうしても先に生徒会長の姿を見たくてね。」

「見て、どうでした?」

「別に、感想とかないわよ。」

私はそこで考え込んだ。身内の姿を先に見るためだけにあの場所にわざわざいたということか。
でもそれだけなのだろうか。
もっと特別な理由があるのではないだろうか。

「祐巳、何を考えているの?」

「い、いえ!なにも!」

祥子様と柏木さんの関係について考えていました。なんて言えるわけもなくとっさにそう言った。

「嘘おっしゃい!あなたの顔はそうは言ってなくてよ?」
そう言って祥子様は私のほっぺたを両手で引っ張った。

「い、いひゃいでしゅ。しゃちこしゃま。」

私は精一杯の抗議をした。

「正直に話したら解放してあげるわよ。」

「わかりまひた!はなしましゅ!」

そう言うと祥子様は解放してくれた。

「うぅ…祥子様ひどいですよ…」

「ごめんなさいね?で無理やりにでも聞いておかないといけない気がして。こんなこと初めてしたけどなかなか頬って気持ちいいものね。」

謝ってはいるけど悪びれた様子はない。
こういうのが似合うんだからずるいよなぁ。

「それで考えていたのは祥子様と柏木さんの関係についてです。」

祥子様の眉がピクリと動いた。

「…だれからそれを?」

祥子様は声を抑えて聞いた。

「花寺の知り合いからです。祥子様と花寺の生徒会長が従兄同士の間柄だと。」

「そうよね、あなたは王家の方々と幼馴染なのだから花寺の方にも知り合いが多いわよね。」

祥子様はため息をついてそう言った。

「それだけなの?」

続けてそう聞いてきた。

「いえ、それで従兄の姿を見るためだけに祥子様があの場所にわざわざ行くのはどうしてかなと思いまして…」

「…なるほどね。特別な理由があるんじゃないかと思ったわけね。」

私はコクンと頷いた。

「私と優さんはね、婚約者同士なのよ。」

こんやくしゃ?こんやくしゃというのはあの婚約者のことだろうか。

「祥子様は柏木さんのことがお好きということですか?」

男嫌いの祥子様が婚約者である柏木さんのことを好きだけど踊るのは嫌でと頭の中がぐるぐる混乱してきたので。

「昔はね。」

祥子様は下を向いたまま答えた。

そのあと祥子様は、柏木さんに言われたことをすべて語ってくれた。
男しか愛せないこと。高校入学時に似た者同士だから結婚して他に恋人を作って自由にしてくれと言われたこと。
私の中で柏木さんの株が急落した。

「婚約解消なさらないのですか?」

私はストレートに聞いてみることにした。

「…迷っていたけど祐巳に聞いてもらって踏ん切りがついたわ。」

そう言って祥子様は座っていた舞台から降りた。
そして振り向いて

「ありがとう。」

そう笑って言った祥子様の顔は今まで見た中で一番きれいだった。

「せっかくだから踊りましょう?」

「はい!」



「婚約を解消して欲しいの。」

柏木さんが体育館へ来てすぐに祥子様は私と柏木さんを連れてマリア像のところまで来てこう言った。
何故私もいるのかわからなかったが見守ることにした。

「ずいぶん急だな。」

柏木さんは動揺もせずにそう言った。

「ずっと考えていたことではあるの。でも踏ん切りがつかなかったけど今日きっかけをもらったのよ。」
そう言って祥子様は私を見た。

「この子がそのきっかけか。僕たちの血筋は福沢家に縁があるみたいだな。わかった。僕の方はそれでOKだ。」

柏木さんも私を見てから祥子様の方に向き直りそう言った。

「おじい様方には私から言うから。」

「わかった。これでちゃんと演技できそうかいシンデレラ?」

「これがなくても私はしっかりやって見せるわよ。ね、祐巳?」

「へ?あ、はい!」

「祐巳ちゃんも大変だな。さっちゃんへの文句があったら僕へ言うといい。」

柏木さんは笑いながらそう言うと体育館へ戻っていった。

「さあ私たちも戻りましょう?」

「はい!」

私たちも体育館へ戻ろうとした時、

「祐巳、祥子さん。ごきげんよう。」

後ろから声をかけられた。

「奏さん、ごきげんよう。」

「奏様、ごきげんよう。」

それは茜ちゃんの姉であり、修くんの双子の妹になる櫻田奏様だった。
それと奏様にしがみついている茜ちゃんもいた。

「祐巳、これどうにかしてくれない?」

奏様は茜ちゃんを指さしそう言った。

「えーと、大体想像できますがいったい何が?」

「買い物当番。葵姉さんは委員会。」

「なるほどわかりました。」

茜ちゃんまた買い物当番になったのか。
カメラに映るのが嫌な茜ちゃんはいつも買い物当番になった時は葵様や私と一緒に行っているのだ。

「茜さんよくこれで生活できているわね…」

祥子様はそう呆れながらつぶやいた。
でも茜ちゃんは頼りになるし、意外にもクラスではまとめ役になっていたりするのだ。
これさえ直れば次の王様に向いているのではないかと私は思っている。

「とりあえずしがみつくのはやめなさい。」

奏様は茜ちゃんにそう言った。

「離したら走って逃げるでしょ?」

茜ちゃんがしがみつきながら言った。

「リリアンの生徒が走って逃げるなんてするわけないじゃない。」

「じゃあ…」

そう言って茜ちゃんが離すと全力疾走で奏様は校門に向かっていった。

「ちょっと待ってよ!」

茜ちゃんが慌てて追いかける。
心配なので私も早歩きで追いかける。祥子様もついてきてくれている。

「落ち葉があるから走ると危ないわね。」

祥子様が足元を見て言った。

「確かに…あ、奏様は止まりましたね。」

奏様は校門をちょっと出たあたりで止まった。
茜ちゃんはまだ走っている。

「なんで逃げるのー!」

茜ちゃんがそう言って奏様に追いついたと思った時転んで道路の方に飛び出てしまった。

「危ない!」
車が来ているのを見て私は大声を上げた。
「いてて…ん?」
茜ちゃんが状況を把握した時はもう車はすぐそばだった。
ぶつかると思って私は目を閉じた。

衝撃音はなく茜ちゃんのいた場所を見ると壁が立っていた。

「間一髪だったわね。」
奏様はそう言って茜ちゃんを抱き上げた。

その壁は奏様が能力で産み出したものだった。
奏様の能力は奏様の預金の範囲内で何でも生成できるというものだ。

「すごい壁ね…車も無傷なんて。」

祥子様がそうつぶやいていた。

「茜ちゃん大丈夫!?」

私は茜ちゃんに駆け寄った。

「うん。カナちゃんが助けてくれたから。」

「茜はもっとしっかりしなさい。あんまり祐巳に心配かけちゃだめよ?」

奏様が茜ちゃんに言った。

「ごめんなさい…」

茜ちゃんは素直に謝った。

「わかればよろしい。じゃあこの壁の処理よろしくね。」

「え?こんな大きい物どうすれば…」

茜ちゃんは困惑している。

「とりあえず私の家に預けてはいかが?誰の邪魔にもならないでしょう。」

祥子様が助け舟を出してくださった。

「祥子さんいいの?」

奏様が祥子様に聞いた。

「ええ。祐巳には助けてもらったのでそのお返しを祐巳の幼馴染にしようかと。」

祥子様はそう言ってほほ笑んだ。

「私たちはまず劇の練習に出なくてはならないので、ついてきてくださる?」

そういうことで4人は体育館に向かった。


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