がちゃS・ぷち

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No.3726
作者:ケテル
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2013-05-03 19:54:17
萌えた:5
笑った:10
感動だ:5

『急がば回れ紅薔薇の蕾』

【No:3726】【No:3730】【No:3744】【No:3755】

CONTENTS - 1




 戦車を使った武道である戦車道。
 それは華道や茶道と並び大和撫子の嗜みとされている伝統的な文化であり、世界中で女子の嗜みとして受け継がれてきたものである。
 礼節のある、淑やかで慎ましく、凛々しい婦女子を育成することを目指した武芸として、世界的に広く認知されている……。




 S・二年生1号車Aチーム


{……なるほど…うん、ここなら…}

 コマンダーズ・キューポラから身を乗り出してコンパスと地図で地形を確認していた祐巳は、演習指定エリアの境界線になっている遊歩道を確認した。 同じ岸側スタートのB・Dチームの乗る2号車と4号車が別の道へと分かれていく。

 起伏に富んだ草原と森林が混在する緑地公園の中に東から西へS字型にゆったりと用水が流れ、エリアのほぼ中央と東と西の端ギリギリに三ヶ所橋がある。 森林をぬう様に舗装や砂利や獣道のような遊歩道がひかれている。

「他の車両も見えなくなったし、そろそろいいかな……。 桂さん合図したら不整地最大速。 由乃さん停車と同時に指示した目標に向けて砲塔旋回照準をセット。 志摩子さんは停車したら装填作業開始」
『了解!』
『え? ちょっと祐巳さん?!』
『あの、祐巳さん激しい機動後の装填は…』
『面白い物が撮れそうだわね』

 由乃と志摩子が軽く抗議してくる事など予想の範囲内。

 今年度から必須選択科目になった戦車道、今まで4時間、それぞれの操作方法の基礎を習い、先週ようやく戦車に乗り込み校庭内をゆっくりと動かし操作を確認し役割を決めたところだ。
 高速走行→停車しての砲撃、いわゆる躍進射撃。
 ほとんど素人なのだ不安に思うのも無理は無い、無いのだがそれでは困るのだ。
 由乃と志摩子をよそに桂は、どのくらいまで戦車を動かせるか知りたくて嬉々としていた。
 重いはずの変速レバーに苦労したのは最初だけ、今ではそつなくギアチェンジをしているし、車幅感覚も良く掴めているらしく、リリアン戦車道チームの中で操縦手としての腕は一番良いと祐巳は思っている。

「桂さん、エンジン音は抑え目にスタート!」

 咽頭マイクを押さえた祐巳が無慈悲な指示を出すと桂がアクセルを踏み込む。
 ロールスロイス製ミーティアエンジンが唸りを上げ『第二次世界大戦中最速の戦車』と言われるA27M 巡航戦車Mrk[ クロムウェルMrkZが、履帯を草地に衝き立て、前を跳ね上げるように加速する。

 戦車道で使われる戦車は、1945年8月15日までに生産された車両、あるいは設計が完了し試作された車輌と、それらに搭載される予定だった部材を使用した車輌のみとされている。 その条件を満たしていれば、実在しない部材同士の組合せは認められる。 ただ設計段階の車輌に関しては、部材が調達出来ない物も当然あり、再現が困難な場合は戦車道連盟と個別に協議が行なわれ、許るされた範囲内で改造する事は認められている。

『『キャぁぁぁア;△;アアぁぁ;△;〜〜#☆〜▼△☆!?!』』

 路上では最速64km/h出るものの、路外は30km/hそこそこになる……が砲手の由乃と装填手の志摩子は、加速感はともかく普段体験しないような振動と騒音で悲鳴を上げている。
 それを聞かないことにして、祐巳は周囲で標的に使えそうな物を探す。

「前方の稜線、試合だと不用意に稜線を越えると的になっちゃうから、今回は左側に回りこむように越えて!」
『まあ、まだ試合開始されてないから敵いないけどね』

 通信手席の蔦子が振り向いて、瞬間は撮れなかったもののちょっと涙目の由乃と志摩子をカメラに収める。
 左側に進路を取って稜線を回りこんだところで、祐巳は良さそうな目標物を見つけた。

「急停車! 目標10時方向丘の上の大岩、距離500! 主砲発射用意!」

 つんのめるように急停車、サスペンションが車体を安定させる。 未だに涙目だが歯を食いしばって立ち直った由乃が砲塔を左に旋回させ目標を捕らえる。

『照準よし!』

 砲弾を持ち上げた志摩子は、薬室への装填に手間取ってしまった。

『ごめんなさい、装填完了!』
「了解。 由乃さん撃たないでね」

 志摩子の装填完了の声に、由乃は引きかけた指先をあわてて引き金から離す。 停車から装填完了の声までの時間を測っていた祐巳、想定していたより時間が掛かったが初めてだし及第点と納得することにした。

「桂さん、1時の方向へ…もう100m位かな? 前進させて、その辺りがスタート地点だから」
『巡航速でいいの?』
「うん、巡航速でお願い」
『了解〜♪』
「蔦子さん、まだ他のチームはスタート地点に到着してないわよね?」
『まだみたいよ、いきなり不整地全速運転なんてしてないみたいね』
『無茶な砲撃準備指示も出さないだろうしね』
「一応、躍進射撃って基本の一つなんだけど」
『私もちょっと説明を求めたい気分だわ』
「はははは…」
『だいたい100m前進したと思うけど、祐巳さん確認して』
「了解、みんなちょっと待ってね」

 祐巳は四方を見渡して地図と地形を確認する。

「だいたい、この辺りでいいはずだけど。 蔦子さん、スタート地点に着いたって坂本教官に連絡して」
『了解』
「あと写真撮るのは構わないけど、試合中の車内でフラッシュは控えめにね」
『ハッハッハッ、善処します』

 蔦子は通信機を操作して、特別講師で教官である陸上自衛隊戦車教導隊の坂本菊代一尉に到着の報告をする。
 キューポラから上半身を引っ込めて車長席に座った祐巳は、砲塔側戦闘室スペース砲手席の由乃、装填手席の志摩子、車体側操縦室スペース操縦手席の桂、通信手席でこちらへと振り返った蔦子を順繰りに見る。
 アイドリングまで落とされたエンジン音が車体を震わせる。

「ハハ…ごめんね、いきなり躍進射撃なんかさせて、でもやっといて損はないわよこのチームの場合は」
「このチームの場合は?」
「うん……、なんかこれまでの流れでいくとね、私がリリアン戦車道チームの隊長を任されるんじゃないかと思うのよ」
「まあ、そうなるでしょうね、なんせ戦車道経験者で家元の孫じゃあね」
「長期の休みの時におばあちゃん家に行って、ちょっと教えてもらったり、ちょっと戦車に乗ったり、ちょっと試合に参加したり、って程度なんだけど・・・ねぇ」
「いや、リリアンで言ったら十分な経験じゃない?」
「そうね、全くの未経験と言う訳ではないと思うわ、勉強はしてるのでしょ?」
「まあねぇ〜、質問の電話するとおばあちゃん喜ぶのよね、この前教本いっぱい送ってきてくれて読むのが大変…」
「教本あるんだ、祝部流…」
「わたし用の一般公開閲覧禁止のと、公開可の教室用と二種類あるから、今度教室用持って来るわね」
「やっぱり順当なんじゃないかな」
「そう思うわね」
「人事みたいに言ってるけど……ん〜、と言うことはね、この一号車は隊長車…指揮車両ってことになるわ。 チームの指揮を取るため前線で最後まで居なきゃなのよ、必然的に乗員はそれを実現するためにチーム内で一番うまくならなきゃなのよ」
「「「「……はい?」」」」

 全員の目が点になっているが、祐巳は最後通告するようにゆっくり一つうなずいた。

「だから、あんなことしたの。 たぶんこれからも無茶言うと思うけどよろしくね」




 S・二年生2号車Bチーム


「この道でほんとにいいの?」

 キューポラから身を乗り出して周りをキョロキョロ見回しながら、ちさとは咽頭マイクで誰にともなく問いかける。

『しっかりしてよ、それを確認するのも車長の勤めでしょ』
「わかってるけど、地図苦手なのよね…」
『大丈夫なの? スズさんと交代する?』

 心許無いちさとに操縦手の環がそんな事を言い出す。
 身長と体力で決めた役割なので特に操縦手がやりたかったと言う訳ではない、環自身は砲手をしたかったのだが…。

『私はイヤよ』

 名指しされた、リリアン戦車道チームの中でも一際小柄な砲手の萩村スズがぶっきらぼうに答える。

『あ〜、スズちゃんだと車長席で立っても目の辺りまでしか…』
『何か言ったムツミ〜』
『…うぇ〜…いや〜…なんにも…』

 ”スズちゃん”に身長の話しはタブーだって十分知っているはずで、確かそう教えてくれた装填手の三葉ムツミが、手を振り回して変な踊りを踊っている。 戦闘室内でケンカはひかえて欲しいものだが、この二人で言いあいだと勝負になりはしない。

『通信。 Aチームがスタート地点に着いたわ、各チーム自分の担当を確認しつつ進むようにね』
「了解。 坂本教官からよ、Aチームがスタート地点に着いたもよう、もう一度各人操作方法を確認してって」

 二年生Bチームと一年生Dチームは四人チームで、車長のちさとが通信手も兼任している。

 三年生の受講者は今日になって5人になった。 二年生は9人で、一年生も9人である。 乃梨子と瞳子も含めるとほぼ1/3は強制参加の山百合会の面々、各学年別々で授業が出来る状況ではないので、全学年合同の授業になった。

 最低3人いれば戦車は動かせる。 第二次世界大戦初期までは、車長が砲手や装填手を兼任する戦車も多かったが、変化の激しい流動的な機動戦をする機会が増え、専任の砲手や装填手が着くようになり、車長は指揮に専念できるようになっていったのだ。
 3人分けで七チーム組むという話しもあったのだが、結局一年二年は5人4人でチーム分けされる事になり五チーム編成されることになった。

「うまくいくかな…」




 S・一年生3号車Cチーム


『Aチームがスタート地点に着いたそうよ』
「了解。 …はぁ〜……」

 キューポラから身を乗り出して首から提げた地図を見ていた乃梨子は、通信手の日出実の報告に一つ溜息を吐いた。
 格納庫からの距離はAチームのスタート地点の方が近い、とは言え思っていたよりもずいぶん早い。
 ちなみにCチームのスタート地点は、リリアン学園艦第二甲板21番格納庫から一番遠い。

{やっぱり経験者が乗ってるから? 薔薇の館で見た感じそうは見えなかったけど、やっぱり家元効果とかあるのかな。 志摩子さんに頼まれていっしょにできると思ったから戦車道取ってみたけど大丈夫かな?}

「笙子さん、スピードアップできる?」
『え〜?! なんか怖いんだけど…』
「いや、スピードアップし…」
『無理にスピードアップしなくてもいいと思いますわ、振動でお尻痛くて…』
『あ〜、確かに痛いですね音もすごいし』

 確かにお尻にブルブルと激しい振動がきて痛いし、ヘッドフォンしててもまだ耳元でデスメタルをガナられてるような大音量は聞こえてくる。

{同学年でのチーム分けって問題あるんじゃないだろうか? 同学年の気安さからか車長の指示が通りにくい気がするんだけど……いや、このチームだけなのかもしれない……}

「その意見は良っくわかるんだけど……練習試合なんだから、試合開始後は今以上の振動が来るわよ」
『到着時間の指定は無いのですしゆっくりでいいですわよ』
「時間掛ければいいってものでもないでしょ、いつまでも振動し続ける席に座ってたいなら話しは別だけど。 ……笙子さん、スピードアップして」
『……了解…』

{やっぱり問題あるわよね…}

 強権発動している気分でイヤなのだが、砲手の瞳子と装填手の百の意見は無視して、乃梨子は笙子にスピードアップを指示する。

 ………が。
 笙子も気乗りしないようで、心もち早くなったかなと言う程度のスピードアップに、乃梨子はまた溜息を吐いた。

「こんなんで試合になるのかな……」

 一抹の不安はあるものの負けるつもりも無い乃梨子は再度地図を見る。

 橋を渡らなければこちら側へ来られない対岸の車両の事ではなく、当面の仮想敵は同じ岸側をスタート地点とする三年生。 車長の祥子さまは、はたしてどういう指揮を取るのか、乃梨子はあれこれシミュレーションすることにした。

 まだ、スタート地点に着きそうもないし……。




 S・一年生4号車Dチーム


「サクヤさん右よ! 右に寄せて!」
『ひゃっ、ひゃい〜! 了解〜』

 苔むした岩をぎこちなく右側へとかわし、可南子は一つ息を吐く。 よくここまでエンストしないで来れたものだと思う。

『サキちゃん、肩に力入りっぱなしだよ〜、リラ〜ックスリラックス』
『そ、そんなこと言ったって…』
『サクヤ、考えすぎ』

 緊張しっぱなしな操縦手の花菱サクヤに装填手の愛川アイがお気楽な様子で声をかけ、砲手の黒葉レンゲは戦車の騒音に掻き消えそうな声で呟く。
 サクヤとアイは幼馴染、レンゲとは高等部に入って知り合ったとかで仲がいい3人なのだが、戦車道の授業でしか顔を合わせない車長の可南子はちょっと距離感がつかめなくて困っている。
 ちなみにアイが何で”サクヤ”のことを”サキちゃん”と呼んでいるのかは不明だ。

「配置…もう一度考えた方がいいかな。 とりあえず今日はこれで行くしかないけど」

 自分の身長でこの鉄の箱の中に入って耐えられるんだろうか?
 まあ、イギリス人が乗ってたくらいだから問題は無いのだろうが、どうも気が引ける。 他の人達を押し込めておいてなんだが…。

「サクヤさん、今度は寄せすぎよ! 左へ!」
『は、はいぃぃ〜』

 ヘロヘロととても戦車と思えない動きで方向転換していく。
 サクヤはグランドでの機動の時はもう少しましだった、そこに期待する事にして可南子は、地図とコンパスを確認しようと首から提げたファイルに手を伸ばした。


『自車両が近くに存在するのを知られるので、外部との通信は車長の判断で慎重にね』

 …と言われていた。

 通信機の機能には制限が掛けられている。
 坂本教官は、乗ってきた10(ヒトマル)式戦車を介して全車両に送受信できる。 今回練習と言う事で各車両の通信機は出力は最低限に抑えられ非暗号化モードの設定になっている、近くにいれば当然のように混線してしまう。 10式の通信機が、超近距離通信しか出来ない各車両に送信はともかくなぜ受信が出来るのかは、機密事項で謎である。

 混信状態の時の相談、有効に作用すればあるいは・・・・・・。




 S・三年生5号車Eチーム


『二年生のAチームがスタート地点に着いたもよう』

 当初の予定通り通信手に就けた三奈子が、車長の祥子に嬉々として伝える。 授業は授業、普段は普段。

「了解、多摩さん東さんマニュアルは読み終わったかしら?」
『んん? とりあえず読み終わったわよぉ』
『私も読み終わったわ』

 三年生になって、それまでと違う教科を選択する奇特な生徒はなかなか、と言うか殆んど居なかったらしく、車長兼通信手の祥子、操縦手の令、砲手兼装填手の三奈子と言う3人で試合に臨むしかないかと思っていたところ、今日になって境多摩と松原東の2人が受講変更願いと供にやってきたのだ。

『それで〜、ちょっと動かしていい? 実際にやってみないと感覚わかんないしぃ』
『装填もして見たいわね、それにしても今日入っていきなり試合させられるとは思わなかったわ』
『あ〜それ私も思ったぁ』

 早速、多摩には砲手、東には装填手に就いてもらう事にしてようやく三年生は5人で動かす体制にできた…が、今年から始まった戦車道の授業、自分たちも、そして当然2人とも戦車の”せ”の字も知らない未経験者、取り合えず先行して4時間授業を受けている3人はともかく、今日加入の2人には気休め程度でもスタート地点に着くまでにマニュアルを読んでもらっていたのだが、確かに実際に動かしてみないと解らないところは確かにある。

「そうね…令、少し速度を落としてくれる?」
『了…』
『このままでもいいわよ、あんまり当らないらしいけど動きながらでも撃たなきゃなんでしょ』
『私もそれで構わないわ。 試合開始が遅くなるのは申し訳ないし。 あと多摩、その表情はやめた方がいいって前言ったでしょ』

 今祥子が見た多摩の表情はとっても悪い顔をしていた。 成績優秀、運動神経抜群、品行方正で人望もある東となんでつるんでいるのか解らないが、祐巳が前に言っていた言葉が思い出された”気にしたら負け”と言うことなんだろうか。

「発射はしないようにね、そのほかの事は構わないから試してみて、装填時に手を挟まないように注意して」
『『了解』♪』

 今日はまず操作を覚えてもらう事を優先した方がいい、射撃はそうそう当たるものではない。

「令、左折し…キャッ?!」

 許可はしたものの、進行方向と違う急旋回を始めた砲塔に、キューポラで振り回された祥子は悲鳴を上げた。




 S・公園管理棟監視塔


『三号車Cチームです、スタート地点に到着しました』

{どうなるかと思ったけれど、予習はしっかりしていてくれたみたいね}


『戦車なんてバーッと動かして、ダーッと操作して、ドーンと撃てばいいんだから!!』


 と言ったのは、同僚の蝶野亜美だったが、案外何とかなる物なのかもしれない。

 全車両スタート地点に到着したという報告を受けた特別講師の陸上自衛隊戦車教導隊の坂本菊代一尉は、一先ず双眼鏡で全車両の配置を確認した。

 今年度から戦車道が始まるにあたり、第一甲板後部に広がる散策などに一般開放されていた緑地公園は、戦車道の授業がある毎週木曜日と翌金曜日は安全上の理由から入園が禁止にされることになった。

 全長9800m、中規模のリリアン学園艦とは言え、戦車を平気で動かせ射撃練習が出来る広大なスペースは案外少ないのである。

 日本戦車道連盟公認の弾薬に不発弾はでないようになっているが、この場所は一般開放区域のため極力射撃練習はしないよう言い渡されていて、もし使用した場合は使用弾数の確認と発射場所と着弾位置の確認、その後念を入れて点検整備されることになっている。

「全車スタート位置に着いたわね。 高校生の試合はフラッグ車を撃破するフラッグ戦で行なわれるのが一般的だけど、この試合のルールはもっと簡単、自分たち以外の車両を動けなくすればいいの、最後まで生き残った者の勝ち、分かったはね?」

 味方以外の相手方の車両すべてを撃破する殲滅戦。 今回は味方は無しで、全車両撃破の変則的な殲滅戦で行なわれる。
 高校生の公式戦は少しでも戦力差を縮め、戦術を駆使すれば勝ち進めるようフラッグ戦で行なわれる。
 準々決勝までは参加車両は10両まで、準決勝は15両まで、決勝戦は20両までとなっている。

「戦車道は武道だから”礼に始まり礼に終わる”の、一同背筋を正して…礼!」

 カメラが付いている訳ではないから各車両の中は見えないが、各員の顔を思い浮かべてみる。

「それでは、試合開始!!」


    ・・・・・
     ・・・
      ・

「「「「 Panzer vor!! 」」」」

      ・
     ・・・
    ・・・・・




 S・二年生1号車Aチーム


『? 祐巳さん?』
「イギリスの戦車使ってるのに”パンツァー・フォー”でいいのかな? ”ゴー・ア・ヘッド”? それとも ”ヒィア・ウィ・ゴー”?」

 試合開始の号令が来たのに、発進の指示を出さない祐巳に桂は操縦手席から振り返って見る。 桂と目が合うと珍しく不敵な笑みを浮かべてキューポラの上端の手摺に手をかけて半身を外に出した。

「桂さん……」




 〜〜 リリアン学園艦は、渥美半島沖20kmを15ノットで、僚艦ともいえる一隻と供に東へ向かって航行中。 〜〜




                       〜〜〜CONTENTS - 1 了 〜〜


(コメント)
ケテル >リリアンのメンツだけじゃ足らなくて、いろんなマンガから出演願いました。(No.20810 2013-05-03 19:57:18)
ディンブラ >いきなり英国面ですか。由乃さんがポンコツ属性な気がして仕方ない。(No.20814 2013-05-07 02:27:09)
ケテル >ディンブラさま>なんでイギリスになったかは後で書きたいと思ってます。 砲塔内に三人を並べたかっただけなんですが、さあ、どうしましょうね由乃んは……。(No.20815 2013-05-07 21:21:33)

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