がちゃS・ぷち

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No.3744
作者:ケテル
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2013-07-10 00:14:03
萌えた:1
笑った:8
感動だ:5

『まず服を脱ぎます』

【No:3726】【No:3730】【No:3744】【No:3755】

CONTENTS - 3



 〜 〜 ・ 〜 〜 ・ 〜 〜 ・ 〜 〜 ・ 〜 〜 ・ 〜 〜 


S・ リリアン学園艦、山百合会第二執務室


「ここもか〜…」

 戦車道用に戦車を用意しなければならない……私に丸投げされた戦車道関係の仕事の一つだけど、10件目の武器屋からの書類を見て頭を抱えて机に突っ伏した。

「どうしたの祐巳さん?」
「あ〜、また武器屋にフラれたの…」

 武器屋ってのは戦車道用の機材を扱っている武道具屋、戦車道ショップの通称なんだけど、扱ってる物が扱っている物だからこの通称も頷ける。
 武器屋からの書類は在庫状況のお知らせ。

『ティーガーTかパンターG型』

 上記、こちらの希望は伝えました。 予算は十分あります。

 まあ、ティーガーは在ったらいいな程度なんだけど、パンターは欲しかった………にもかかわらず、知らされて来た結果は惨憺たる物だった。
 やっぱり人気車種なのか在庫は無し、一年後ならってとこもあったわね……、ドイツ戦車だからとW号戦車D型を勧めてくれる所は在るけど、それも1両か2両くらいならって……最低でも5両は欲しいし……納期はバラけるけど、かき集めれば6両はそろえられるわね…。 装備がまちまちなのが気になるけど。
 一度にそろえようと思うとV号戦車になる、もう少し攻撃力が欲しい……いや、装甲も欲しい……速度は、まああれば歓迎。

『無名校に、そんないい戦車売れるわけない』言外にそう言われた様な気がしてきた……被害妄想だろうけど。

 一応各種武道などで名は売れている名門のリリアン、お嬢様校でお金はあっても戦車道の実績は皆無の言わば無名校。

「そろえられる戦車でいいのではないかしら? 必ず大会に出なければいけないわけではないのでしょ?」
「練習続けてくと、どうしたって試合したくなるものでしょ? 適当なのを選ぶと後で苦労するから、今苦悩してるの……なにこれ……」
「祐巳」

 なるべく使わないでおこうと思ってたけど、おばあちゃんの名前出してやろうかな…長老とか言われてるらしいし、西住流とも昵懇だし…なんて思ってると、お姉さまからお声が掛かる。

「はい、なんでしょう」

 戦車道関係の事だろうか? 最初に丸投げ発言して以来なんだけど。

「イギリスかフランスの戦車がいいと思うのだけれど、ダメかしら?」

 ……よ、よりにもよって……。

「ああ、いいんじゃないかな。 」

 しかも令さままで同調する。

「戦車の発祥はイギリスと聞くわ、きっと優秀な戦車もあるんでしょう? フランスには気品のある戦車があるのではなくて?」

 機動の戦車の発祥ですね。 馬が引く戦車は、もっと古くていろいろな所にありましたが。 気品で勝てるものなんでしょうか、お姉さま?

 イギリスには、歩兵戦車(インファントリー・タンク)と巡航戦車(クルーザー・タンク)の二種類がある……。
 歩兵戦車は、歩兵と行動を共にして支援するのを前提に設計されてて、装甲はすごく厚いけど速度がかなり遅い、『歩兵の支援なのに対歩兵用の榴弾が撃てないのはむしろ興味深い』byロンメル将軍。 この言葉がすべてを物語っていると思うけど、戦車道では対歩兵戦は無いから滅多に使わないけど榴弾……HEAT( 成形炸薬弾 )は使うか。
 巡航戦車は、追撃や偵察を主任務にした戦車で、確かに当時の戦車としてはスピードが早い……装甲は紙同然だけど。
 フランスは…ルノーFTで世界で始めて全周回転砲塔を搭載した実用戦車を作った国。
 フランスの戦車も歩兵戦車(シャール・ダンファントリィ)と、騎兵戦車(シャール・ド・カヴァルリィ)があって、あとは重量によって分けられる(シャール・レジェー、シャール・モワイヤン、シャール・ド・バタイユ、シャール・ルール)。 カタログスペックは申し分ないんだけど、フランス人特有の”革新的だがちょっと凝り性”なところが災いして整備がやりにくいらしいし、砲塔が小さくて車長が砲手を兼任していて指揮能力の低下を招くのもマイナスポイント、機動戦である戦車道では致命的になる。 独仏戦の後の自由フランス軍は、アメリカのM4シャーマンを使ってますからね…。

 しかしですね……いかな無茶振りでも、お姉さまのご要望、何とか叶えるのも妹の務め………パンターがいいと思うんだけど私自身は。
 なんか、リリアンが窮地に陥りそうな気もする……。 戦車道を履修する皆さんごめんなさい。
 ちなみにドイツは、質実剛健で面白みに欠けそうだと仰いました…。 日本は?

 そんな事があり、もう一度選定をやり直して、クロムウェル巡航戦車に落ち着いたわけだけれど、たぶんに妥協した感はある。 17ポンド砲弾は重いんじゃないかな?

 ただ………。

「ヴィレル・ボカージュ?」

 ティーガーT型1台に、一個大隊15両が撃破された? 一気に不安になった……。




 〜 〜 ・ 〜 〜 ・ 〜 〜 ・ 〜 〜 ・ 〜 〜 ・ 〜 〜 




 S・二年生1号車Aチーム


 由乃は少々悔しそうな顔で下を向いていた。
 志摩子は少々申し訳無さそうな顔をしていた。
 蔦子は少々呆れ顔をしていた。
 桂は少々困り顔をしていた。
 そして祐巳は頭を抱えていた(ふりをしていた)。

『 幅3mの戦車が、照準器で4ミルに見える。 距離は何mになるか? 』

 祐巳が出したこの問題を、志摩子、蔦子、桂は答えられた。

  3÷4×1000=750m

 砲手の由乃は……答えられなかった。


 今回の練習試合にほぼ必要の無い仰角が砲に付いているのに気がついた祐巳だったが、すぐに防戦撤退の指示で忙しくなった。

 一旦1号車を10m程下げた祐巳は、仰角は付いているしと思い4号車を狙うよう指示して撃ったものの、感で付けている仰角であたる訳もなくはずれた。
 そうこうしているうちに接近して来る2台、誘うようにゆっくり方向転換して来た道を戻るよう指示した。
 当然のように来る砲撃をジグザグに走って避けつつ遊歩道を戻った1号車は、スタート地点へと戻れる左ではなく、右へと曲がった。 50mほど進んだ所で180度急ターンしてまた全速で前進、ちょうど出てきた2号車の直前をすり抜けたため1号車の後部と2号車の前部が一部接触して火花が散る。
 急停車した2号車とまだ少し離れている4号車を放って置いてそのまま直進。

 この時にEチーム5号車行動不能の通信が入ってきた。

 左折してスタート地点の遊歩道に飛び込んでいく。
 そのままの路外地最高速度で進み、稜線の手前から減速して越えた所で停車し砲塔を回す。 2号車の事があったため慎重に侵入してくる4号車を、牽制の意味で砲撃してから路外地で高速を出すのを、まだ躊躇している2号車と4号車を振り切った。

 現在地は、4号車のスタート地点のさらに先、三本ある橋の内、格納庫からもっとも遠い橋の袂である。


 言葉を選ばないと反発が来て、臍を曲げられると厄介な由乃だし…と思った祐巳は、問題と言う形で四人に出題したのだ。

 結果は思っていたとおり。

 たださっきは何で外したのかと思った祐巳だったが、今はそれ程気にしてはいない。 そう、みんな初めてなのだ、外して当たり前なのだと思い直したが、それを表には出してはいない。 砲手を由乃から変更する、という考えは頭の中から消えていた。
 もう一つの懸念材料が頭に浮かんでくる、そちらの方が大変なのだが……。

 車長席で祐巳は考え込んでしまっていた……というふりをしている。
 サーキュレーターでも排出しきれない重苦しい空気が一見支配しているように見える車内で、なんと言っていいものか解らず押し黙っている面々、突破口が見出せず手詰まり。

「あの、祐「 由乃さん! 」巳さ…ん…?」
「「「 …っ?! 」」」

 後ろを取ったのに撃破できず、その後も当てられなかった。 さっき出された問題にも答えられなかったし、このままじゃ負ける…自分のせいで負けたなんてそんなのイヤだ。 周りの雰囲気もあって珍しく少し落ち込んで、自分から交代させてと言い出そうとした由乃の言葉に、それを待っていた祐巳が言葉を重ねてきた。

 車長席から身を乗り出した祐巳は、由乃の肩にそっと手を乗せる。

「……いっしょにがんばろう由乃さん」
「え?! で…でも…わたし…」

 普段の優しい笑顔を向けてくる祐巳は、任せたからと言うように、肩に置かれた手に少し力を込めた。

「はじめからうまい人なんかめったにいないもの、私も戦車に乗せてもらって、いろいろ操作させてもらってるけど、射撃は苦手なのよ。 みんなもそうだけど、ちょっとづつ上手くなっていこうよ!」
「祐巳さん…」
「でも、適当な照準での射撃は勘弁ね、すぐには使いこなせないと思うけど計算はして。 まあ、今回の距離なら水平か少し下目くらいでもいいんじゃないかな」
「ちょ、ちょっと下目ね、わかった!」

 由乃は、仰角の修正をするため照準器を覗き込む。
 『ありがとう』と動いたように見えた由乃の唇を見た祐巳は、ホッっと胸を撫で下ろしてから微笑んだ。 装填手用グローブをした手で志摩子は祐巳の袖をチョイチョイと引っ張り、ヘッドセットを持ち上げて耳元でささやくように問いかける。

「由乃さん、大丈夫かしら?」
「大丈夫よ、ろくに射撃練習しないでの練習試合だもの外して当たりまえよ」
「私も…装填の速度、速くなくて迷惑掛けている気がして……」
「今の時点なら小さな事よ、乗り越えてもらうためならいくらだって背中押すわ。 志摩子さんのも由乃さんのもね」
「…フフフ、その時はお願いね」

 { 砲手と装填手は攻撃の要だから、上手くなきゃ困るんだけどね〜… } 言えるわけがない……。
 一応、型は付いたところで頭の中身を切り替え、咽頭マイクを操作する。

「索敵しながら慎重に進んできているにしても、そろそろここまで来るはず。 2両まとまって来るか、分かれてくるか、先頭はどちらなのか、対岸から3号車がこちら側へやってきて乱戦になるか……対応の仕方は当然変えますから、指示どうりにお願いします」
『『『『 了解! 』』』』

 話している途中から、祐巳は車長用プラットホームに上りハッチを開けて索敵のため立ち上がる。 ちょっと怖いのだが試して見たいことがあったのだ、失敗する可能性もあるのだが、その時は素直に頭を下げるしかない。

 今止まっている橋の袂の広場への入り口は、4号車のスタート地点方面からのコースと、用水路沿いを抜けてくるコース、対岸側から橋を渡ってくるコースの三箇所。 用水路を沿ってくるコースは、かなり遠くまで見通せるが変化はない。

「来た! 1時の方向! 桂さん、2時の方向へ向けて」

 正面、Dチーム4号車スタート地点方面から、4号車を先頭に縦隊で接近して来る2両の戦車が確認できた。
 4号車が前というのはラッキーだと祐巳は思った、正直2号車の砲手の萩村スズと、装填手の三葉ムツミのコンビの方が今の時点では脅威だ。
 超信地旋回で方向修正して、擬似的傾斜装甲にする。

「クロムウェルMkZの正面装甲は、アップリケ装甲を入れて101mm、装備されている75mm砲では正面装甲は撃ち抜けないからある意味安心できるわ」

{ 車体の前面装甲の話で、なぜか砲塔の方はもっと薄いんだけどね…言わないでおこう }

「由乃さんは履帯を狙ってみて。 志摩子さん装填はなるべく早めにお願い。 蔦子さん、機銃でも距離は測れるからサポートお願い。 桂さん、合図した動作は力いっぱいやって」
『今の私で履帯だけ狙い撃ちって無理だと思うけど…』
「大丈夫よ、さっきだって左右方向は大体正確だったわよ」
『距離435mよ!』
『ありがとう!』

 想像以上にゆっくりと接近してきている4号車の砲口を見つめている祐巳。

『装填完了!』
「撃て!」

 祐巳の号令に由乃が激発レバーを引く、初速618m/sで発射された75mmL40砲弾が、4号車の履帯フェンダー上の収納箱に命中した。
 熱い空薬莢がバスケットの中に自動排出されて、志摩子は装填にかかる。
 至近弾でもすごいのに、車体に当った音と衝撃はもの凄い事になる。 あまり体験したいものではないけれど、一種の通過儀礼みたいなもの。

{ これで辞めるって言い出す人がいなきゃいいけど }

 ……しかしDチームの面々は、やられっぱなしではなかった。

「由乃さん、修正下へ0.5、右……」

 祐巳がそこまで言った時、4号車が発砲した。

{ …外れる… }

 指揮をしつつも4号車の砲口を凝視していた祐巳の思ったと通り、右側1mに着弾した砲弾は土煙と砂礫を盛大に巻き上げて車体にもバラバラと当っている。 キューポラから身を乗り出している祐巳の所にも砂礫が少し飛んでくるがそんな事気にしていられない。

『下へ0.5修正よし!』
『装填完了!』
「撃て!!」

 修正はうまくできた砲弾は、4号車が右斜め後方へと後退したため惜しくも外れてしまった。 小さく下がった4号車のその向こうに見える2号車の砲塔が、こちらに指向してきている。 4号車の砲口は、完全に1号車から外れている。

『閉鎖よし、装填完了!』
「?! 桂さんダッシュ!!」
『わわっ?!』

 返事より先にミーティアエンジンが唸りを上げ、デイヴィット・ブラウン・トラクター社のトリプル・ディファレンシャル・ステアリングシステムが高効率で26.5tの車体を一気に加速させる。 2号車が発射した砲弾は、1号車の砲塔の横をかすめる様に逸れて後ろの草むらを吹き飛ばした。
 偶然というのは有るもので、突然のダッシュの揺れで由乃は激発レバーを引いてしまった。 打ち出された砲弾は、こちらは運が悪かったのだろう2号車の車体と砲塔の間ターレットリングに当る。

「よ、由乃さんどうかしたの?」
『ゴメン、急発進の揺れで引いちゃった……』
「え〜〜っ…偶然…なの? ……ま、まぁ…いいか……」

 確実に撃破判定が出る位置に偶然当ってしまったのを見た祐巳は、ちょっと釈然としない思いで上がった白旗を見つめた。

『2号車Bチーム、行動不能!』

 



 〜〜 横浜港沖を目指すリリアン女学園学園艦と、その僚艦(とも言える)の三段空母時仕様の加賀をモデルにした花寺学院学園艦。 他の学園艦と異なる装備として、両艦を繋げるための接舷アームがある。 余剰物資のやり取りは通常ヘリを使って行なわれるが、重量物がある場合は接舷して行なわれる。 もちろん、滅多にあることではない。 〜〜




                       〜〜〜CONTENTS - 3 了 〜〜





(コメント)
千早 >私はガールズ&パンツァーが好きですからこういう小説も好きです、続きも頑張ってください(No.20851 2013-07-11 17:58:49)
くま一号 >そういえば、初代薔薇さまありなら、黒森峰副隊長はエリカ様、じゃなかった江利子さまでよろ。……中の人ネタに走ると祐巳が桃ちゃんになっちゃうけど……桃ちゃんって由乃ポジションだったのかw(No.20853 2013-07-12 19:44:33)
ディンブラ >タイトルw、三段空母w、そしてやっぱり由乃さんw お姉さまの要望では仕方ないですね。戦車の中で紅茶を嗜む祥子さまが目に浮かぶようです。(No.20855 2013-07-13 23:01:01)
ケテル >千早さま> ありがとうございます。 只今、ツール・ド・フランスを見ながら、はたらく魔王さまの2次SSなどを観ながら構想中です。 4号車を何とかしたかったですね。(No.20856 2013-07-13 23:02:48)
ケテル >くま一号様> 基本的にリリアンの生徒はリリアンで出します。 ちょこちょことガルパンの登場人物も出したいんですがね〜。(No.20857 2013-07-13 23:07:02)
ケテル >ディンブラさま> 一年のツインテの娘のセリフがガチャって出たので思わず・・・・・・。 クロムウェルの車長席の左側に4ガロンの水タンクが4個在るらしいですが、紅茶を淹れられるかは不明です。 資料少ないので苦労してます。(No.20858 2013-07-13 23:11:49)
くま一号 >うーん、ネット上には資料がない……クロムウェル巡航戦車の前までは間違いなく紅茶入れられるようになってるみたいなんで、まず間違いないと思うんですが。そう言えば、蓉子さまってオレンジ・ペコーが柑橘系の薫りと思い込んでいたけど訂正されたかな?(No.20859 2013-07-18 18:40:58)
ケテル >くま一号さま> ん? 1945年以降で、センチュリオンからじゃなかったかな? 一応レトルト食品の温めの装置の筈で紅茶用って訳じゃないようですが。 まあ、紅茶がメインでしょうね。(No.20860 2013-07-19 19:04:14)

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