がちゃS・ぷち

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No.2653
作者:若杉奈留美
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2008-06-16 09:25:09
萌えた:1
笑った:3
感動だ:5

『運命の悪戯歴史さえ超えて』

「激闘!マナーの鉄娘」シリーズ。
【No:2644】【No:2651】→今回。

(第1戦・冠婚葬祭)

この勝負は、旧世代が対戦したい次世代メンバーを指名するという形で行われる。
指名の際は同じ薔薇の色を選ばなければならない。

「さあ、それでは黄薔薇チームからご指名をどうぞ!」

司会者の声に最初に答えたのは江利子。

「1問目。安西理沙さん、お願いするわ」

その瞬間、理沙の緊張は頂点に達した。
手足が震え、尿意が襲いかかる。

「支倉令さん、2問目の解答者はどなたになさいますか?」

少し考えたあと、令が口にした名は。

「有馬菜々さん。お願いします」
「はい、かしこまりました」

菜々の目は笑っていなかった。

「3問目のご指名を、島津さん、どうぞ!」
「ひとりしか残ってないじゃないの…大橋さゆみさん」

さゆみの口元がゆがんだ。

対戦カードは決まった。

1戦目は冠婚葬祭にまつわる問題。
次世代と旧世代のうち、3問先に正解した方が勝ちである。

「第1問!結婚式の招待状が届いたら、いつ頃返事を出すのが正しい?
1番・受け取ったその日のうち
2番・3日以内
3番・1週間以内

さあお答えをどうぞ!」

ポーン!
江利子も理沙もほぼ同時にボタンを押した。

「おおこれはほぼ同時だが…わずかに安西さんの方が早かったですね。
それではどうぞ!」
「3番です」

ピンポーンと軽快な音が聞こえた。

「正解!」

(よかった〜…)

重圧から解放され、ほっと息をつく理沙。

「結婚式の招待を受けるということは、新郎新婦が時間をかけて『この人にぜひ』と思って選んだということです。
むしろその日にOKの返事を出すぐらいの気持ちでいたほうがよろしいでしょう。
逆にやむを得ずお断りするときは少し時間をかけましょう。
その場合は『どうしても都合がつきませんので、申し訳ありませんが』と一筆添えて送ると失礼にならずに済みます」

審査員の解説に一同納得。

「第2問!結婚式に着て行ってはいけない服の色はどれ?
1番・赤
2番・白
3番・黒

さあお答をどうぞ!」

今度は令が早かった。
青ざめる菜々。

(しまった!)

しかし令は、菜々以上に青ざめていた。
なんと答えを度忘れしてしまったのだ。

(こんなところで…こんなことって…)

菜々は令の姿を見て、みるみるうちに冷静さを取り戻した。

「2番です」
「正解」

(ツーアウト満塁、大ピンチか…!私のせいで…!)

令は重い溜息をつくしかなかった。

(もう、令ちゃんのバカ!何やってんのよ)

あとでお仕置きしてやろうと心を決めた由乃だったが、それを表情に出すことはしなかった。

「第3問は実技問題です。
ここには様々なフォーマル服とアクセサリーがありますが、
今回はいざというときでもOKのブラックフォーマル。
お2人にはこのブラックフォーマルに早着替えをしていただきます。
正しい服、正しいアクセサリーを早く身につけた方が勝ちとなります。
1か所でも間違っていたら不正解です。
この問題は正解すれば2点が入ります。
それでは、用意、スタート!」

由乃とさゆみは用意された服とアクセサリーをがばっとつかんで試着室へと駆け込んだ。
それから数分後、2人は着替えを終わって審査員の前に立った。

「終わりました!」

専門家の審査員が、ブラックフォーマルに着替えた2人に鋭い視線を向ける。
やがてある1点で、その視線の動きが止まった。

「大橋さん、不正解です」
「なぜ!?」

思わず声を張り上げたさゆみに、専門家の先生は冷静に告げた。

「そのパールのネックレスは淡水パールです。これはフォーマルな場では使わないものです」
「くっ…!」

急ぐあまり地味な本真珠ではなく、その横にあった細い方をとってしまった。
痛恨のミスに、がっくりと膝をつくさゆみ。
その傍らで専門家はこれ以上ない解説を付け加えた。

「淡水パールは一見地味に見えますが、非常に装飾性が高いので悲しみのシーンにはふさわしくありません」

ふと令を見ると、なんともいえぬ笑顔でさゆみに視線を向けている。
プライドが高く負けず嫌いなさゆみを打ちのめすには、これで十分だった。
しかし。

「大丈夫?」

由乃が差し出した手を、さゆみは振り払った。

「心配無用。自分で立てます」

その瞳にはかすかな怒りの色が見て取れる。
多少困惑した由乃だったが、それも一瞬だった。
こういうときの切り替えが早いのも、由乃の強みの一つである。
専門家が近づき、その全身を厳しくチェック。
そして笑顔で。

「はい、全部OKです」
「やったぁっ!!」

思わずガッツポーズが出る由乃。
会場からも拍手が沸き起こり、司会者が叫ぶ。

「なんとなんと、0対2からの大逆転!勝負を振り出しに戻しました!
ここからは延長戦。いち早く正解したメンバーのいるチームが勝ちとなります!
今皆さんの前にはご祝儀袋とふくさ(ちょっとした物を包むのに使う、小さな風呂敷のようなもの…作者注)が置かれていますが、これを正しく包んでください。
早く包んだほうが勝ちです。用意、スタート!」

一斉に包み始めたが、ふくさなど目にしたこともない、ごく普通の女子高生ばかり。
さぞかし苦戦するかと思いきや…

(前お母さんがそうしてたようにすればきっと…!)

なんと理沙の手が、左、上、下、右と迷うことなく動いているではないか。
そして。

「終わりました!」

審査員の念入りなチェックが入る。
時間が止まり、重い沈黙が流れる。

結果は…。

「正解です」

その瞬間、理沙は涙でまわりが見えなかった。

「第1戦、勝者は次世代黄薔薇チームです!おめでとうございます!」

司会者の絶叫と観客の拍手が、会場を包み込んでいた。


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