がちゃS・ぷち

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No.3100
作者:ケテル
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2009-11-26 23:33:19
萌えた:2
笑った:0
感動だ:6

『甦る』

宇宙戦艦ヤマトとのクロスです。


 ついに始動します。


【No:3084】>【No:3089】>【これ】>【No:3437】>【No:3626】


S−16 太平洋 硫黄島上空

『テスト飛行中のコスモタイガー012、014。 敵偵察機2機が対空システムを突破、九州坊の岬沖、北緯30度43分、東経128度4分に向けて進行中。 テストは中止して至急迎撃に向かって』

 防空司令部からの通信に、これから大気圏離脱テストをする為、エンジンのモードを変更しようとしていたコスモタイガー012の細川可南子は、014の方を見る、桂がサムアップを出しているのを確認した。

「了解、テスト飛行を中止し迎撃に向かいます」

『大圏テスト、また延びちゃったわね』

「でも、武装のテストもしなければならなかったのですから、ちょうど良かったのでは?」

『30mmパルスレーザー機関砲ね、でもホントなら重戦の方の50mm重粒子機関砲をテストしたいんだけどね』

 可南子と桂の今回のミッションは新鋭戦闘攻撃機 F/A-218U コスモタイガーの大気圏離脱モードのテストだった。
 まだ組みあがっていない機種が2機種ある。 50mm重粒子機関砲を装備した重戦闘攻撃機 A-210 コスモライガー。 そしてF/A-235-ZERO 指揮官機と言うことだが、可南子も一度くらい飛ばしてみたいと思っていたが、こればかりはどうなるか分からない。

「しょうがないですよ、まだ組みあがってもいないんですから。 さあ、行きましょうのんびりしてると取り逃がします。 速度マッハ4」

『了解! マッハ4!』

 スロットルを推し進める、グッとシートに押さえつけられるように加速する。
 防空司令部からの敵偵察機のデータが着信する。

「また、九州坊の岬沖……。 あの辺って大昔の戦艦のスクラップしかなかったはずだけど……、何かあるのかな?」


  *  *  *  *  *  *  *  * 


 敵機は右旋回から地上の方へ降下する。 意外にすばやい敵偵察機に、可南子は翻弄されなかなか攻撃できないでいた、しかし上を取った。 上方から敵機は丸見えだ。
 テスト飛行のつもりだったので、マルチモードミサイルなどは搭載していない、機首の30mmパルスレーザー機関砲のみでのドックファイト。
 上方から敵偵察機の上に被さるように襲い掛かる。 照準セット、シュ……。 可南子がレーザー機関砲の引き金を引く前に、前から銃撃された敵偵察機が四散、撃墜される。 レーダーを見ると、桂のコスモタイガー014は左上空5000で敵機を追いかけている。 もう一機、地上付近からに味方の練習機が上がってきた。

『さっすが〜練習機でよく撃墜したわね祐巳さん』
『やりようよ、地上近くに来てくれてよかったわ』

「祐巳さま?!」

『お? しまった! ははは、可南子ちゃん、ごきげんよう』

「ごきげんよう。 でも祐巳さまひどいです、私の獲物とらないでください」

『あ〜、ごめんね可南子ちゃん。 由乃さんに”練習機で墜とせるわけ無いでしょ”って言われちゃったから、やり様ってのを見せてやろうと……』

『ちょっと祐巳さん! 逃げて、そっち行ったわよ!』

『え〜〜〜?!』

 祐巳が操縦しているらしい練習機は、桂に追われた敵偵察機が急速に近づいてくるのを確認すると機首を敵偵察機正面に向ける、敵機はミサイルを放ってくる、距離が近すぎるのとロックオンされていないようで祐巳達のほうに向かって来る物は少ない。 照準も付けられ無いが当たればめっけもの程度で撃ったレーザーバルカン砲はミサイル3発に当る、その爆炎を煙幕代わりに機体を捻って背面飛行で敵機の上側をすり抜ける、だが目の前には…。

『だ〜〜、祐巳さん!!』

『上へ!!』

 真正面から向かってくる祐巳の乗った練習機を、桂は思いっきりスティックを引いてコスモタイガー014を急上昇させることで避けるが敵機から離れてしまう。 祐巳は練習機を緩降下させて南に機首を向けた。
 可南子はさらにエンジンパワーを上げ増速するがまだ少し遠い。 機首をめぐらせた敵偵察機の方が早い、祐巳の練習機は後ろを取られ左右に機体を振って逃げるが、所詮運動性能の鈍い練習機、振り切れずに右翼の付け根を撃ち抜かれて撃墜されてしまった。

「祐巳さま!」

 有効射程距離までようやく持って来た可南子は、煙を引いて落ちていく祐巳の練習機を視線の端で追いながら、引き金を引いた。


  *  *  *  *  *  *  *  * 


 遊星爆弾のクレーターの中に練習機は墜落した、その直前に射出座席で脱出した祐巳と由乃は、かつて海底だった赤い大地の中に降り立った。

「はぁ〜、やっちゃったね〜」
「始末書で済むのかしらこれって…」
「まあ、一機は撃墜したんだから、それでチャラって事に……」
「…ならないと思うわよ〜…」
「まあ、戦闘訓練だと思えば…」

 『あははは…』っと笑う祐巳を、ヘルメットのバイザー越しに睨みつけた由乃だったが盛大な溜息をついてクレーターの外輪を登っていく。

「…あ〜もう〜とんだ巻き沿いだわ、おとなしくあのままマニュアル読んでればよかったわ… あ? ねえ、祐巳さんあれ!」

 ちょっとした小山のような外輪を登りきった上から、由乃はある物を見つけて祐巳を呼ぶ。


 夕日を背に、赤く錆つき朽ちかけているかつての鋼鉄(くろがね)の塔が骸を曝していた。

 静かに眠る船体は堆積物に埋もれ、地上にはかつての艦橋と煙突、折れ曲がったマストの一部が露出している程度、だが、露出している構造物だけでも往時の大きさが想像できる。 


 2740名の将兵とともに沈んだ巨大な墓標の上空を、コスモタイガーが2機旋回していた。







S−17 地球防衛軍司令部

『ニューヨーク、エネルギー低下を訴えてきています』
『パリ、交信不能。 バックアップ体制に移行中の模様』
『ケニア、パニック状態に陥っています』
『ウラジオストック、”さよなら”を打ち続けています。 モスクワ、エネルギー供給範囲縮小を通達』
『北京、リオデジャネイロ出力低下、回線維持が困難になりつつあります』

 蓉子は防衛軍本部の集中司令室へ向かう。 行く途中で聞こえてくるのは世界的に起こっているエネルギーの枯渇。 状況は日増しに悪くなる。

 集中司令室正面の大スクリーンには現在の関東地区の放射能レベルが表示されている。

『関東地区の放射能汚染さらに0.3km降下』

 日に日に蝕まれていくのを数字で見せ付けられる。

「ヤマトの進行状況は?」

 コンソールの前に付いている優、今気にかかるのは唯一つの希望ヤマトだけである。

「設計変更後より3%遅れていますが、作業は進行しています」

 設計変更より五ヶ月、昼夜を問わず未知の部分の多い工事は行われている、3%の遅れはまだ想定内だ。

「柏木指令、私は行くわ、もう一刻の猶予も無い。 多少の作業なら飛びながらでもできるから」
「…しかし、水野大佐君の体は…」
「15万7千光年の旅は私の命を奪うかもしれない、でも、イスカンダルへの旅は命を掛けるだけの価値はあると私は思うの」

 優は、蓉子の方を向き直る。

「…確かの状態がいいとは言えなが、僕としては完全な状態で出発してもらいたんだが……」
「気遣いは無用よ」





 ― ―― ― ―― ― ―― ― ―― ― ―― ―





S−18 九州南西端

 祐巳達が火星から帰還して5ヶ月。
 機種転換訓練、シミュレーターの訓練などをしていた。

 訓練に明け暮れていた3人だが、2週間前に宇宙空間での戦闘に参加した。 武装防御を強化した”あまぎ”を中心に、コスモタイガー 24機、コスモライガー 18機による、建設中だった敵の月前進基地の破壊攻略作戦である。
 攻略作戦では、祐巳は最新鋭戦闘攻撃機 F-235 コスモゼロで攻撃機部隊の指揮を取り、由乃は”あまぎ”で副操舵手として躁艦航法の補助を、志摩子はレーダー分析班のチーフとして参加、月前進基地破壊攻略作戦は成功した。



 出頭命令を受けた祐巳達は防衛軍本部差向けのエアーカーに乗って地下ハイウェーを通って九州南西端に着いた。 今回は一緒に出頭命令を受けた江利子が便乗していて、由乃は少し機嫌が悪かったが、強引に乗り込んできたゴロンタが場を和ませるつもりでかじゃべり撒くり、祐巳や志摩子もその輪に加わって比較的にぎやかな道中だった。


 プログラムされた経路を通ったため詳しい場所は分からない、止まった場所はかなり大規模な工場のようだった。

「凄い工場地帯ね、上の方にエレベータがたくさん行ってるけど上で何を作ってるのか知っている?」
「いえ、何なんでしょうね」
「まさか、ここで働けって言うんじゃないでしょうね? せっかくこの前一矢を報いたと思ったのに」
「でも、命令されたのなら…しかたないのではないかしら? あら?」
「ん? どうしたの志摩子さん?」
「あれは……なにかしら?」

 志摩子の指差す方を見ると、200m程上の天井に巨大な物体が見える。

「……宇宙船の…後部に見えるんだけど……大きいわよ、あれ」

 巨大なノズルが一つそれより小型のノズルが平行して2つ付いていて、安定翼が2枚ななめに付いているのが見えるが、全体像は岩盤にさえぎられて見えない。

「と、とにかく行こうよ。 ここにいてもしかたないわ」
「でも、どこに?」
「え〜〜と………どこだろ?」
「これにしたがって来いって事じゃあない?」

 江利子が言ったように、足元のイルミネーションが、矢印パターンに光り、行き先を示すように工場群の奥に誘う。 奥の建物の自動ドアが開く、さらにその奥のエレベーターの口が開けていた。

「これ……で、いいのよね?」
「でもこれ、何階に行けばいいのよ?」

『祐巳ちゃん、由乃ちゃん、志摩子、そして江利子もいるわね。 乗り込んだら開閉ボタンを押して、こちらから誘導するわ』

「蓉子さま?」
「まあ、とにかく言うとおりにして見ましょうか」

 全員が乗り込んだのを確認してから江利子が開閉ボタンを押す。 すると床が突然傾く、右壁側にいた志摩子に祐巳がバランスを崩して軽くぶつかってしまった。

「な、なによ傾いてるじゃない」
「志摩子さんごめん大丈夫だった?」
「ええ、大丈夫よ」

『ヤク 25ド カタムイテイマスネ』

 高速エレベーターは指定階に到着、扉が開いた。

「…あっ…」
「…これは…」
「…すごいわね…宇宙艦橋だわ…」

 手前に一段高いコの字型をした艦長席。 その前に艦長席ほどではないが各種システムが集中しているコンソールが2つ、一番前に躁艦用のコンソールが5つ、左右側面には2つずつ席がある。 艦橋のほぼ中央に羅針盤がある。 二重の積層ガラスの先には錆び付いた鉄板でふさがれている。

「はあ〜、かなりの大型艦ね。 あ、蓉子」
「来たわね……。 祐巳ちゃん、由乃ちゃん、志摩子、良く来てくれたわ。 船が右に傾いているから気をつけてね」
「蓉子、私は?」
「ふふふ、江利子も良く来てくれたわ。 面倒臭がるんじゃあないかと思ったのだけれど」

 蓉子の後ろからヒョッコリと笙子が顔を出した。

「あ〜?!」
「笙子ちゃん?」
「どうして?」
「お久しぶりです!」

 そういうと笙子はニコリと笑う。 その様子を見ていた蓉子もつられて微笑むが、江利子の後ろにいるゴロンタに気が付いた。

「江利子、これは何?」
「自己紹介しなさい」

『ハイ ワタシハ”ゴロンタ”デス エリコセンセイノモトデ カクシュブンセキサギョウナドノ オテツダイヲシテイマス ワタシモ コノフネニ ノセテモラエナイデショウカ? カナラズ ヤクニタツト オモイマス』

「…江利子?」
「分析性能は優秀だし結構頑丈だから役に立つと思うわよ」
「そう、あなたがそう言うんなら本当に優秀なんでしょうね。 いいわ乗船を許可します」

『アリガトウゴザイマス』

 ゴロンタは深々とお辞儀をする。
 それを横目に蓉子は、祐巳、由乃、志摩子の三人に向き直る。

「そういえば、祐巳ちゃんと由乃ちゃんは、この上でやんちゃな事をしたらしいわね。 始末書書かされたそうだけれど」

 蓉子はクスクス笑いながら二人を見ると、祐巳と由乃は顔を赤くする。

「し、始末書の件ご存知だったんですか…」
「え、で、でも、この上って……?」

 蓉子は赤い錆び色の見える艦橋の前へと、ゆっくりと歩いていく。

「各種特別訓練を受けてもらったあなたたちを呼んだのは他でもないの、この船に、この戦艦に乗り組み、それぞれ各部門の責任者として任務を果たしてもらいたいの。 たった今から私の指揮下に入ってもらうわ」

 その蓉子の言葉に、三人は喜色を浮かべて顔を見合わせる。

「蓉子さま! この船はもう完成しているんですか?」
「…残念ながら、まだエンジンのチェックがすんでいないの。 それがすめば補助エンジンで取りあえずの太陽系内くらいの航海は出来るわ。 でも、それだけではこの艦の使命には十分ではないの」 

 操舵席のシートに手を掛けてつづける。

「メインエンジンは、あなたたちが火星から持ち帰った通信カプセルの中にあった設計図を元にして、回収した宇宙船と、笙子ちゃんの協力の下に製造したの。 だからこの艦には、今までの地球の船とはまったく違うエンジンを取り付けてあるわ。 惑星イスカンダルへの航海を可能にする波動エンジンよ」
「…波動エンジン? 惑星イスカンダルって、笙子ちゃんの故郷よね?」
「そうね。 惑星イスカンダルまでいけるほど強力な船ということは、敵の宇宙船と互角に戦えるということですか?」
「たぶんね。 でも、三人とも聞いて欲しいの。 私達の任務は敵と戦って打ち勝つだけではダメなの。 惑星イスカンダルに行き…」

 突然艦橋内に警戒警報が鳴り響く。

「防空本部より入電、敵艦載機52機、防空ラインを突破、こちらへ接近中!」 
「…突破されたのね」

 マレー半島沖で大気圏に突入した敵艦載機群の爆撃により艦橋が小刻みに揺れる。 メインスクリーンにもレーダーにもエネルギーがまだ回されていない、爆撃が激しくなる。

「ガミラス宇宙空母、対地高度175,000kmより降下を開始、方位202から304へ!」

 激しい波状攻撃による大きなゆれでバランスを崩した江利子が転びかけたのをゴロンタが受け止める。

『ダイジョウブデスカ エリコセンセ』

「あ〜、ありがとうゴロンタ」
「蓉子さま、まだこの船は戦えないのですか?!」

 祐巳のその問いに答えず、蓉子は一段高くなった艦長席へと着く。

「…待つのよ、時が来るのを…」

 こぶしを握り締め、コンソールの一点を見つめる。

『補助エンジンエネルギー充填99%! 始動回路チェックせよ!』

「回路始動しない?! 補助エンジン始動しないわ!」

 執拗に繰り返される攻撃は、練度の問題か直撃こそしていないものの激しい。

「このままじゃあ何もしないうちにメチャメチャにされてしまいますよ! なぜ応戦しないんですか?!」
「蓉子さま!」
「うろたえるな!!!」

 あまり聞いた事が無い蓉子の怒鳴り声に、祐巳も由乃も首をすくめて黙り込む。

「外部からエネルギーと電源の供給を受けている状態では、パルスレーザー一つ撃てないのよ。 補助エンジンが始動しなければ手も足も出ないわ」

 激しく揺れる艦橋の中で、機関部内で、必死に補助エンジン始動のための作業をしているだろう技師達からの報告をじっと待つ。

『第一艦橋大スクリーン及び全艦制御システム、エネルギー回路接続チェック完了!』
「了解、エネルギー接続オン!」

 蓉子は内ポケットから起動キーを取り出し、艦長席にある集中起動ボックスに差し込み捻る。 起動ボックスは艦長席のコンソールの内に収納される。 大スクリーンに光が宿り艦橋内の計器が次々チェック画面を映し出す。 メインスクリーンにはガミラスの宇宙空母の望遠映像が揺らいで映し出される。

『ガミラス宇宙空母、高度134,000kmさらに降下中』

「蓉子さま! この次は直接攻撃が来るはずです! このままじゃあやられるだけじゃあないですか! まだ動けないんですか?!」

 蓉子はただ冷静に報告を待っている


『補助エンジンチェック完了、エネルギー充填100%!』

『回路よし、始動シリンダー準備よし! 補助エンジン始動シークェンス完了!』



「 ……! 総員配置に着け!! 補助エンジン始動5秒前! 砲雷激戦用意!!」

 各コンソールに着いている技師達が、次々とチェック用画面からメイン画面へと各モニターを切り替えていく。

「地上エネルギー伝道チューブ電源ケーブルパージ! 重動力線コンタクト! メイン回路エネルギースイッチオン! 傾斜復元! 船体起こせ!!」

『傾斜復元! 船体起こします!!』

 補助エンジンが始動、低音で力強い振動が艦全体を揺さぶりはじめる。 音は徐々に高音にさらに力強くなっていき、爆撃とは違う何かを打ち破るような大きな振動が来る。

「補助エンジン両舷全速! 取り舵いっぱい!!」

 乾き切った堆積物の大地に大きな亀裂が次々走り、亀裂からは土煙が吹き上がる。

「う、動き出した!」
「祐巳ちゃん、戦闘部門へ着いて! 由乃ちゃんはメインパイロットの席へ! 志摩子は索敵レーダーへ着いて! この船にはまだ作業技師しか乗っていないの!」
「「「 はい! 」」」
「江利子、私の横の補助シートに着いて」

 三人はそれぞれの席へと走る。 志摩子は3Dレーダーのチェック、防空本部からのデータでガミラスの宇宙空母の現在位置を確認する。 祐巳は火器管制装置のチェック、連動装置のチェック。 由乃は操舵装置と羅針盤を確認、艦の傾斜角を戻す手順の進み具合をチェックする。
 シートに着いてそれぞれが準備をしていると、積層ガラスの前に有る錆びた鉄板がバラバラと剥離し始める。

「な、なに?!」

 偽装のための外装が次々剥がれ落ちていき、その内から新たな命を吹き込まれ建造された宇宙戦艦が姿を現す。
 乾いた大量の堆積物をものともせず艦体の傾斜を復元、徐々に浮上していく。
 三連装三基、長大な砲身を持つ主砲が、鎌首をもたげるように土くれを破り天を突く。

「観測レーダー及びセンサーウィングを展開せよ!」 

 折り畳まれていたレーダーとセンサーウイングが展開される。 志摩子のついているレーダー手席の各モニターに展開された自艦の索敵レーダーのデータと、各種センサー類のデータが送られてくる。

「レーダー及びセンサー全システム完全起動、索敵データ防空本部よりのデータと照合開始。 方位180.3、高度126,000km 上下角35°」

 艦体の振動はさらに増し、艦首が大地を突き破り巨大な砲口が姿を現す。
 土煙を立てて岩石を振り落としながらゆっくりと 265.8m、62,000tの艦体が浮上する。

「補助エンジン出力120%、自動懸垂装置正常作動。 高度150m。 動力伝達。 取り舵いっぱい!」

 由乃は操縦桿を操作して、高度150mまで浮上した艦を左へ回頭させる。

「あ、砲塔動力装置始動! ショックカノン、エネルギー100%!」

 しばらく呆然と、流れていく赤茶けた台地を見ていた祐巳だったが、操作を開始している由乃の声に反応して主砲の操作を再開する。

『主砲射撃連動装置作動よし』
『副砲射撃連動よし』
『艦首艦尾側面各ミサイルランチャー準備完了』
『上面長射程対空ミサイル準備よし』
『対空パルスレーザー砲群、フェーザー光線砲群準備よし』
『艦首波動砲のみ動力不足』

「目標降下中の敵空母! 主砲全自動射撃モード用意!」

「距離100,000km 上下角45° 対地速度1000km/S!」
「各砲連動、仰角9時から9時05分へ自動追尾セット20:45 射撃スイッチ艦長へ渡します」

 艦長席のモニター上に主砲制御データーが映し出される。 しかし、第三砲塔のデータが祐巳の報告に合わない数字を表示する。

「第三砲塔0.2秒遅れてるわよ、しっかりして。 訓練と同じよ慌てないで」
「は、はい! 落ち着いて…落ち着いて……」

 一番二番砲塔が連動して旋回仰角を合わせる。 少し遅れて三番砲塔が旋回を始める。 連動装置の数字があう。

「全員ショックに備えよ!!」

 蓉子は艦長席の発射スティックを上げセーフティーを外す。

「発射!!!」

 二番砲塔三番砲塔一番砲塔の順で放たれた、今までの地球の戦艦の砲を遥かに凌駕する青白い高エネルギー弾は、目標の宇宙空母を貫いてもなお余りあるエネルギーで空間を切り裂いた。

「や、やった! やったわ!! 由乃さん! やったよ!」
「ははははっ! すごい! この船すごい! 祐巳さんもすごい!!」

 シートの近い祐巳と由乃は手を取り合って喜ぶ。 志摩子は一度艦長席の蓉子を見てからレーダー手席から立ち上がり祐巳と由乃の方へ歩み寄る。

「志摩子さん! 誘導ありがとう!」
「システムが整理されていてとても使いやすかったの。 でも、うまく迎撃できてよかったわ」
「祐巳ちゃん、由乃ちゃん、志摩子、どう? これがヤマトよ」

 艦長席から立ち上がった蓉子は、集中コンソールより一段下へ降りる。

「え?」
「宇宙戦艦ヤマトよ」
「あ、あの、ほら祐巳さん」
「うん、あの赤錆びた鉄の塊だった…」
「そうよ、われわれが待ち望んでいたヤマトよ!」


 ゆっくりと艦橋の前側へ歩みを進める蓉子、積層ガラスから望める赤茶けた地表を眺める。

「……この宇宙戦艦ヤマトは、戦うために改造されたのではないの…」
「え?」
「そ、そうなんですか?」

 主機関関連のやり取りをしていたらしい笙子が、祐巳、由乃、志摩子のそばにやってくる。

「………本当は放射能の影響で生物が全滅してしまうのを避けるために、選ばれた動物や人間を乗せて、新天地を求めて地球を脱出するのが目的だったわ…」

 ゆっくりと三人へと向かい合う蓉子。

「祐巳ちゃん、由乃ちゃん、志摩子。 あなた達は地球脱出のために特別訓練を受けてきた、ヤマトの目的は変わったけれどあなた達の受けてきた訓練は必ず生かせるはずよ。 しっかり頼むわ」
「「「 …はい!」」」
「往復31万4千光年の旅は果てしなく遠い、いまだ人類が経験したことも無い宇宙飛行よ。 でも、波動エンジンさえ完全に働けば必ず行ける。 いえ、私は必ず行くわ、そしてコスモクリーナDを受け取り必ず帰ってくる!」

 蓉子のその言葉に深く一礼する笙子、互いに目を見てうなずきあう三人を、蓉子は暖かく見つめていた。




 宇宙戦艦ヤマトよ、人類の未来をかけて15万7千光年の旅に出発する日は近い。
 放射能の地下汚染は刻々と進んでいく。

 人類の絶滅の日まであと364日。

 ヤマトよ行け、地球と人類の未来をかけて。


      あと  364日 ……



 First version OP
 http://www.youtube.com/watch?v=L4u_Js5BLbU&NR=1

幻の廃盤 イスカンダル編 1
 http://www.youtube.com/watch?v=dkq2Fc5SaSM&feature=related


―――  ―――  ―――  ―――  ―――  ―――

* 今の観測結果ですと大マゼラン星雲までで15万7千光年、星雲の直径が1万5千光年。 いらない事を考えたかもしれませんが、銀河系に比べると小さいんですね。

* F/A-218U A-210 F/A-235-ZERO 、などの形式番号は、原作にはありません。 また A-210 コスモライガーは原作にも無く完全に架空です。

* ブラックタイガーではなくコスモタイガーにしてみました。 ブラックタイガーだと”海老”を思い浮かべてしまうので (/ω\

* 第二話での”A140-F5-SB-Y ”も原作に無かったはずです。 A140F5は戦艦大和の計画名です。 知ってらっしゃる方も多いでしょう。

* 戦艦大和の着底状態については把握しています。 まあ、スルーしてください。 企画・原案の西崎義展氏は、水中撮影で大和の着底状態がわかったとき非常に落胆されたそうです。



(コメント)
bqex >蓉子さま分補給完了! しゃきーん!(No.18293 2009-11-27 00:00:06)
きはりん >待ってました。戦闘班長の祐巳と生活班長の志摩子のロマンスになるんでしょうか、なんちゃって。ちなみに「宇宙戦艦リ○アン」もありかなと思っちゃいました。(No.18296 2009-11-27 19:48:19)
ケテル >bqex様>蓉子さまか・・・何もかもみな懐かしい・・・。(No.18300 2009-11-28 00:35:05)
ケテル >きはりんさま>う〜〜ん男性が減ってしまったって言う設定にしてますからね〜、ありなのかな? 『考えていない』と言っておこう! (/ω\(No.18301 2009-11-28 00:37:21)
kyouko >いやあ、「宇宙戦艦マリア」では?(No.18303 2009-11-28 20:52:28)
ケテル >kyouko様>舷側面にマリア様を描く位で許してください。 十字架だと十字軍になりそうだし、ユリやバラを描くと違う意味に取られたりしちゃったりなんかしちゃったりして。(No.18306 2009-11-28 23:38:44)
ガチャSファン >宇宙戦艦ヤマ○ト蓉子さま、とか。(^^;) ヤマトは見たことなかったから、むしろ「こんな話なのね」って感じです。(^^;)(No.18312 2009-11-29 23:09:04)
ケテル >ガチャSファン様>『Get Ready Go!』 ですね、題名だけ知ってます。 いろいろ妄想いれてますから、このままじゃあもちろん無いですが、アニメ原作のつもりで書いてます。 Youtubeで全話見られますけど、26話ありますからそれなりの覚悟がいりますね。(No.18317 2009-12-03 00:48:14)

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