がちゃS・ぷち

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No.3886
作者:ヘススナバス
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2018-10-26 20:23:28
萌えた:4
笑った:6
感動だ:1

『勢い勝負』

【No:3885】の続き
マリみてと城下町のダンデライオンのクロス的な何か。


「あの、お姉様…私と祐巳は本当に姉妹と言えるのでしょうか?」

「なに言ってるの祥子?」

放課後、薔薇の館にあるビスケット色の扉の前に立つとそんな会話が聞こえてきた。

入るに入れず扉の前で止まってしまった。

「噂をご存じないですか?葵様と祐巳が本当は姉妹なのではないかという。」

「何馬鹿なこと言っているのよ。葵さんも祐巳ちゃんもそんなことする人じゃないでしょう。」

「その噂がでたらめなのはわかっています!でも葵様と祐巳が一緒にいる所を見て…私自身が思ってしまったんです。ああいうのが本当の姉妹なんじゃないかって。」

「祥子…」

「気づいていたけれど見ないふりをしていたのです。祐巳が本当に頼りにしているのは葵様か聖様でしょう。それなら私は何者なのでしょうか?必要ないでしょう。形だけの姉なんて…」

違う!私が心から妹になりたいのは祥子様ただ一人です!形だけなんかじゃない!と叫びたいのに足がすくんで動かなかった。

「あれ祐巳ちゃん?中に入らないの?」

後ろから白薔薇さまの声が聞こえて間髪を入れずドアノブに手を伸ばして開けた。

「祐巳…!」

お姉様があたしに気づいた後、横をすり抜けてどこかへ行ってしまった。

「祥子!!聖、祐巳ちゃんのこと頼んだわよ。」

そう言って紅薔薇さまも出て行ってしまった。

「まったく事情は分からないけど、祐巳ちゃんとりあえず立って涙ふきな?」

そう言われて私は自分が泣いていることに気づいた。

「どうしよう、私のせいだ…わたしのせいで」

どうすればいいの?謝る?そんなんじゃ祥子様の心には響かない。

本当に私は自分では何もできない…いつも周りに助けてもらってばかりで。

これは自分でどうにかしなきゃ。

「祐巳ちゃん?」

「白薔薇さま、今回は自分でどうにかしなきゃダメなんです!そうじゃなきゃ祥子様の心に届かない!」

「そっか。じゃあ私は何もしないよ。」

そう言って白薔薇さまは自分のお茶を入れに行った。

まず何が原因か?私が白薔薇さまや葵様を頼りすぎたのが原因で間違いないだろう。

ではお姉様を頼る?いやそんなの聞いていたのがばれているのだから逆効果だろう。

ええい!もう考えても無駄だ!ここは自分の恥も外聞もなく人助けをする親友を見習うべきだ!

「うおおお!迷わず突っ込む!」

そう叫んで私は薔薇の館を出て行った。

「うーんあのアグレッシブさ。伊達に茜ちゃんの親友じゃないね。ただうおおお!と叫ぶのは女の子としてどうなのよ。」


いろいろ探しているがまだ見つからない。

そんな中見知った顔を見つけた。

「祐巳さん?そんなに走ってはだめよ?」

「志摩子さん!お姉様か紅薔薇さま見なかった!?」

「いいえ、見てないけど。」

「ありがと!じゃあ!」

「あらあら元気ね。」

志摩子さんにお礼を言って離れた。


ちょっとしてまた見知った顔に出会った。

「祐巳何してんの!?」

「茜ちゃん!かなちゃん!」

「ちょっと!祐巳!学校では様つけなさいよ!」

「そんなことよりお姉様か紅薔薇様見なかった!?」

「そんなことって…私たちは見てないわよ。」

「それじゃあ!」

私はそう言ってまた駆け出した。

「あんな祐巳久しぶりに見た気がするなー。」

「まるで能力使った時の茜みたいね。」

そうこう走り回っているうちに古い温室にたどり着いた。

中を見るとお姉様と紅薔薇さまがいらっしゃった。

わたしはダッシュでその扉を開けた。

「お姉様!」

「祐巳ちゃん!」

「祐巳…私にロザリオを返しに来たのね。」

「そんなわけないじゃないですか!お姉様これからわたしのいうことを黙って聞いてください!」

「え、ええ…」

いつもと違う私に若干戸惑っている気がするけど気にしない!

「すきだああああああ!あたしは小笠原祥子様が大好きだあああああ!」

「ゆ、祐巳ちゃん…!?」

「マリア祭でピアノ弾いている所を見た時から祥子様の虜になってしまったんです!わがままで高飛車なところも大好きです!祥子様のことは全部知りたいです!」

「祥子様以外私は姉になってもらいたい人はいません!祥子様を愛しているんだああああ!」

「やめなさい祐巳!」

頭をスパーンとたたかれた。

「もうわかりましたから恥ずかしいことはおやめなさい。」

「あ、はい。」

なんか急に冷静になって恥ずかしくなってきた。

「私が恥も外聞も捨ててこういうことが出来るのは祥子様にだけです。白薔薇さまでも葵様でもないです。」

「わかったからもう2度とこういうのはやめなさいね。ほらタイが曲がっているわよ。」

そう言ってお姉様はタイを直してくれた。

「でもこう言われるのはわるい気はしないわ。あなたのことで悩んでいたのにあなたに解決して貰えるなんてね。」

「お姉様…」

「二人とも私がいること忘れてない?」

二人で声のした方を見ると呆れたような紅薔薇さまがいらっしゃった。

「い、いえそんなことはありません!」

「そうですわ。お姉様のことを忘れるわけないじゃないですか。」

「そう?それならいいけど。解決したんなら薔薇の館へ戻りましょう。白薔薇さまも待ちくたびれてるだろうし。」

そうして3人で薔薇の館へ戻った。

そして次の日…

「なにこれ…?」

蔦子さんが持ってきたリリアンかわら版号外を見て私は顔を伏せた。

そこには、紅薔薇の蕾の妹、愛を叫ぶと見出しがあった。

中身を見ると私が言ったことがそのまま全文記載されていた。

そこに書いてあることを見て茜ちゃんは淑女とは思えない爆笑をしている。

「情熱の赤いバラね祐巳さん?」

「蔦子さん…」

「新聞部はそこらじゅうにいるんだから学園内では気をつけなさいな。」

「ていうかこの走っている写真撮ったの蔦子さんだよね?」

「写真部もどこにでもいるから気をつけなさいな。」

はぁ…と私はため息をついた。

とりあえずクリスマスと終業式に向けて頑張らなくちゃ。


黄薔薇さまや白薔薇さまにからかわれ、櫻田家の人に茜ちゃんが持ち帰ったかわら版のせいで爆笑され、祐麒に呆れられながらもなんとかクリスマスパーティーまでやってきた。

「これ美味しい!」

私はケーキを一口食べて思わず声を上げてしまった。

「令ちゃんなんか張り切って作ってたからね。」

由乃さんもケーキを食べながらそう言った。黄薔薇の妹特製ケーキおそるべし。

「ところで祐巳さん、踊るんだから食べすぎないようにね。」

「あ、そうだった。」

美味しくてつい食べ過ぎてしまいそうだったが由乃さんのおかげで何とかセーブできた。

「じゃあ1年生諸君、よろしくね。」

白薔薇さまがそう言ったので。私たちは小道具を準備し志摩子さんのキーボードでの演奏が始まった。

私たちは余興としてはまあまあな出来だったはずだったんだけど…

「これに比べるとインパクト弱いわね。」

黄薔薇さまはそう言った。これと指差したのは例のリリアンかわら版である。

「あ、そうだこれの再現してよ!」

あ、これはお姉様が…

「何言ってるんですか!黄薔薇さまやるわけないでしょ!」

「えー紅薔薇さまだけ見たのずるいじゃない。祥子はケチね。」

「ケチ!?そういう問題ではありませんわ!」

お姉様と黄薔薇さまの言い争いで無茶苦茶になってしまったクリスマスパーティーであった。

しかし紅薔薇さまも呆れながらも笑顔だし、クリスマスと聞いてちょっと暗い顔をなさってた白薔薇さまも楽しそうにヤジを飛ばしている。

志摩子さんはそんな白薔薇さまを見て微笑み、由乃さんが踊るのを見て涙ぐんでた令様に呆れてる由乃さんとみんなそれぞれ楽しそうであった。

こんな風にみんなが笑顔でいられますようにと私はマリア様に願った。


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