がちゃS・ぷち

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No.3887
作者:ヘススナバス
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2018-11-26 23:06:18
萌えた:1
笑った:9
感動だ:1

『あなたの1票が決める』

【No:3886】の続き(多分)
マリみてと城下町のダンデライオンのクロス的な何か。



「ロサ・カニーナってご存知かしら?」

志摩子さんが挨拶もなしに薔薇の館へ来るなりそう言った。

ロサ・カニーナ…ロサカニ鍋。カニ鍋食べたい。

「祐巳さん絶対食べ物じゃないわよ。」

由乃さんは呆れながら私にそう言った。

「ねえ、ロサ・カニーナってだれ?」

令様が入ってくるなりそう言った。

「少なくとも祐巳の考えているような食べ物じゃないことが確定したわね。」

祥子さまも呆れながらそう言った。

私の頭の中でカニ鍋が人の形になってしまった。

「それでロサ・カニーナさんがどうかしたの?」

由乃さんがそう聞いた。お正月モードが抜け切っていないのか敬語じゃなくなっている。

「えーとたしか…そうだ!立候補するって。」

「へえ、受けて立とうじゃない。」

祥子さまはそう不敵な笑みを浮かべた。祥子さまなんだかんだで勝負事好きだよなぁ。

そう今リリアンは選挙が迫っているのである。それは次期薔薇様を決める大事な選挙なんだけど今年はちょっと大変なことになりそうだ。

基本的には蕾の人たちがそのまま薔薇になることが多いのだけれど…

「お姉様なら大丈夫ですよね!」

「勝負はやってみないとわからないわ。でも負けるつもりはないわよ。」

流石祥子さま!この自信満々な様子なら立ってるだけで票が入りそうだ。

しかしあたしはどうお手伝いすればよいのだろうか。この様子だと1人で何とかしちゃいそうで私は何の力にもなれない気がする。

「祥子さま、令さまより確率的に言えば私が落ちるでしょうね。」

志摩子さんがそう発言した。

「志摩子!」

祥子さまがたしなめるように呼んだ。

「その方が2年生ならむしろ自然なことではないでしょうか。」

「逃げるの?」

「いえ、私を妹に選んでくださったお姉様に申し訳ありませんもの。選挙には出ます。もちろん負けるつもりもありません。」

「ずいぶん消極的な強気ね。」

とりあえずここで議論しても仕方がないので情報を集めてまた集まることになった。


そして次の日私はロサ・カニーナについて調べるために図書館へ来ていた。

どういった薔薇なんだろう。

「むむ…」

検索したいが使い方がよくわからない。蔦子さんに付き合ってもらえばよかったなぁ。茜ちゃんは知らないだろうし。

「そんな難しい顔してどうしたの?福沢祐巳さん。」

「ロサ・カニーナという薔薇について調べたいんですけど使い方がわからなくて…。あ、使わないのに場所独占してすみません。」

後ろから話しかけられて場所を空けた。

「そうね。それにそろそろ遅刻になっちゃうから調べものなら昼休みか放課後にした方がいいわよ。」

「はい。そうします。」

「今日はお姫様やお嬢様と一緒じゃないのね。」

「はぁ。」

前者はきっと茜ちゃんのことで後者は祥子さまのことだろう。

「あら?祐巳こんなところで珍しいわね。」

別の方向からまた声をかけられた。

「あ、奏様。ごきげんよう。」

「はい。ごきげんよう。静もお疲れ様。」

「奏さんも朝から熱心ね。」

「奏様のお知り合いだったんですね。」

「ええ。ところでそろそろ出ましょうか。」

「はい!」

そう言って三人で図書館を出た。

「祐巳さん。ロサ・カニーナってどんな花だと思う?」

静さまが歩きながら尋ねてきた

「そうですね…黒薔薇でしょうか。」

「正解よ。」

静さまは微笑みながらそう言った。そうなのかぁ。そして私はごきげんようと言って教室に向かった。



「静どういうつもりなの?」

私は祐巳と別れた後静にそう聞いた。

「何が?」

「ロサ・カニーナについてよ。」

「祐巳さんが驚く顔が見たいじゃない。」

「はぁ…まったく。」

いい性格してるわ。ほんとに。




「というわけでロサ・カニーナについて調べてるんだよね。茜ちゃん何か知らない?」

「ふーん、私が知ってるわけないでしょ。」

「だよねぇ。」

「そう即座に納得されるとなんか複雑…。」

「ロサ・カニーナについてお調べで?」

茜ちゃんと話していると蔦子さんがやってきてそう言った。

「うん。蔦子さん何かご存じ?」

「名前は蟹名静。2年藤組、出席番号十番。合唱部所属」

「へ?」

「ロサ・カニーナの正体よ。」

「相変わらず凄いね蔦子さん…。」

茜ちゃんが驚きながら言った。

「今朝ひったくり犯を捕まえてた茜さんよりはすごくないわよ。」

「え、なんでそれを!」

「そりゃリリアン生の通学路ですもの。人の目はあるわよ。」

ちなみにこれがその写真ね。と言って蔦子さんが差し出してきた。
それは見事にひったくり犯にタックルをきめた茜ちゃんだった。

「写真まで…」

茜ちゃんはそう言って机に突っ伏した。

「それはそうと蟹名静さまについてはご存じ?」

「ううん。全然。茜ちゃん知ってる?」

茜ちゃんから返事がない。どうやらしっかり見られていたことが恥ずかしかったらしい。

「まあ祐巳さんは知らないわよね。後で由乃さんにでも聞いてみなさいな。」

「うん。そうする。」

蟹名静さまかぁ。どんな方なんだろ。



「それで蟹名静さまって知ってる?」

早速由乃さんに聞いてみた。

「超有名人じゃない!合唱部の歌姫って本当に祐巳さん知らないの?」

「いやー面目ない…。」

「まったく祐巳はどこか抜けてるわね。」

祥子さまがためいきをつきながらおっしゃった。

「冬休みの間にばっさり髪を切ったらしくイメージが変わっていらしたわね。」

志摩子さんが思い出すようにそう言った。

髪が短いのか…

「そういえば奏さんと一緒にいる所をよく見るわね。」

ん?奏さまの友人で静さまという名前、そして髪が短い。

「あー!!!!」

私は思い至ってつい立ち上がって叫んでしまった。

「祐巳!いきなり大声を上げるんじゃありません!」

「あ、はい。すみません。」

「それでどうしたの?」

祥子さまが聞いてきた。

「なんて申してよいのやら…多分その静さまにロサ・カニーナについて調べてると言ってしまいました。」

「それじゃあ宣戦布告みたいになってしまったわね。まあいいでしょう。」

祥子さまはそうおっしゃってくれたけどなんだか申し訳なくなった。

「そう言えば彼女白薔薇さまの妹候補って呼ばれていたよね。」

令さまが仕切りなおすようにそう言った。

私はつい志摩子さんを見た。パッと見特に何もないようだけど実際はどうなんだろうか。白薔薇はミステリアスでよくわからない。

静さまはどうして選挙に出たんだろうか。私には何もわからなかった。


その日の帰り忘れ物をしていたのを思い出したのでみんなには先に帰ってもらい一人校舎に戻った。

「あった、あった!」

忘れ物はしっかり回収できた。しかし祥子さまにもう少し落ち着きなさいとまた呆れられてしまった。なんとか挽回しなくちゃなぁ。と考えていると

「祐巳さん。今帰りなの?」

「あ!ロサ・カニーナ!」

「あら、もうばれちゃったのね。」

そう笑いながら言ったのは渦中の人である蟹名静さまであった。

「ひどいじゃないですか!言ってくれてもよかったのに。」

「わざわざあなたたちの敵のロサ・カニーナですっていうのも変じゃないかしら?」

確かにそれは変だな。

「カナちゃんも言ってくれたってよかったのに…」

「奏さんのことカナちゃんって呼んでるの?私も呼んでみようかしら。祐巳さんを見習ったって言って。」

「あ、やめてください!怒ると怖いんですから!」

この人結構なサドだ。そういうところは白薔薇さまに近いのかもしれない。

「もう遅いしせっかくだから一緒に帰りましょう。」

どうしようか考えたが特に断る理由もないのではいと返事をした。



「ふふ。」

突然静さまが笑った。

「どうしたんですか?」

「このシーンを新聞部にでも見られたら紅薔薇の蕾の妹裏切りか!?って記事が出そうだなと思ってね。」

「まさか!」

「ありえないことはないわよ。いっそ祐巳さん本当にこっちくる?」

「…からかってますよね?」

「正解。」

そういって静さんはまた笑った。

「じゃあ私はこっちだから。また図書館で逢いましょう。ロサ・カニーナの載ってる本も用意しておくから。」

「ありがとうございます。ごきげんよう。」

わたしにとっては敵だけどなんか憎めない方だなぁ。白薔薇さまの妹候補だったっていうのもわかる気がする。




その日帰ってテレビを見ていると臨時ニュースが流れた。

『速報です!新国王を決める選挙が来年の今頃に行われることがわかりました!』

『いやー発表されましたね。私は断然葵様派ですよ。』

『僕は茜様ですね。なんといっても今日もひったくりを撃退したあの正義感が素晴らしい。』

『私は栞様よ!あの愛くるしさたまらないわ!』

『スタジオ内でも白熱してますねー選挙までは毎週支持率を発表していきますので動向に要注目です。あなたの1票が王を決めます!』

「ええ!!!!!」

「いやー総一郎君は祐巳の生徒会選挙にかぶせてW選挙だって言ってたが本当にかぶせてくるとはな。」

「お父さん知ってたの?」

「祐巳もしかして知らなかったの?俺は修さんから聞いたけど?」

そう祐麒は言った。

「え?聞いてない!」

「あーそれじゃ祐巳と茜を驚かすために総一郎おじさん言わなかったんだな。どっちかに言うと必ずばれるから。」

そう言って祐麒は2階へあがって行った。

いやーなんか大変なことになったぞ。

「お母さんは葵ちゃんにしようかしら。」

「父さんは修にするぞ!」

両親は勝手に盛り上がってるが茜ちゃん大丈夫かな?選挙でる気全然なさそうだったけど。

突然ピンポーンと玄関のチャイムが鳴ったので私が出るとカナちゃんがいた。

「あ、祐巳。祐麒いる?」

「2階にいるけど。」

「ちょっとお邪魔するわね。」

そう言って2階に上がっていった。

後をついて行って聞き耳を立てると

『うわ!何急に入ってきてるんだよ!』

『つべこべ言わず私の選挙活動に協力しなさい。あのことばらすわよ!』

『そんな無茶苦茶な…祐巳に頼めばいいだろ』

『祐巳はどう考えても茜派でしょ。』

『祐巳の意志尊重するなら俺の意志も尊重してくれ!』

『そんなのは捨てなさい。』

『ひでえひでえよ。』

ドンマイ祐麒。カナちゃんには勝てないよ。

玄関に戻ると修くんもいた。

「奏は!?」

「祐麒のところ。」

「くそ!先を越されたか。なら祐巳でいいや。奏を王にしないように協力してくれ!妨害工作しまくるぞ。」

選挙の規模は違うけど祥子さまは対抗馬がいても堂々としていたのに修くんは…

「作戦は追って連絡する。じゃあな。」

そう言って帰って行った。選挙って怖いな。来年私の時に何もなければいいんだけど…


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