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私だけが知っている偽志摩子  No.505  [メール]  [HomePage]
   作者:まつのめ  投稿日:2005-09-09 16:39:04  (萌:12  笑:11  感:2
 彼女に出会ったのはとある休日のことだった。

 その日は都心のH駅周辺で午前中だけ志摩子さんと一緒にショッピングを楽しんだ。
 もともと一日中の筈だったんだけど、志摩子さんにご家族の用事が出来てしまい、でも午後からだから午前中だけでもって志摩子さんが言ってくれたのだ。
 それでお昼ご飯まで一緒にしてS駅で別れたあと、せっかく出てきたんだからもう少し何処か回ってこようかと、取り合えず東口の大きな書店に向かった。

 でも何か物足りない。
 大型書店で仏像の大型写真集を物色するのはそれなりに楽しいはずだった。でも行く前からどうも乗り気がしないのだ。
 人ごみにまみれて歩いていくうちに、その物足りなさが何だか気づいた。いや本当は判っていたのだ。先ほど駅の中で志摩子さんを見送った時からずっと感じていた小さな寂しさは書店で仏像の写真を眺めたくらいではなくならないことくらい。

 こんなことなら誰か友達でも誘っておくんだったなどと考えてもいまさらである。書店のエレベータの混み具合を見たらもうなんだか萎えてしまって、寄り道なんかせずに家に帰っておけばよかったとか思い始めた時だった。
 ふと目の前でエレベータに乗り込んでいく高校生の3人連れが目にとまった。
 彼女らは部活帰りなのか休日なのに学校の制服であろう濃い色のチェックのプリーツスカートと白いブラウス姿たったのだが、何気に目で追ってしまったのは別に短いスカートからすっと伸びた足が魅力的だったってわけでは決してなく、そのなかの一人がちょうど志摩子さんのようなふわふわの巻き毛だったからだ。
 しかし高校生のグループって良くも悪くも不思議と同じくらいのプロポーションの人が集まってるケースが多いのは何でなんだろう。その3人も多少のばらつきがあるものの身長もやせ具合も同じくらいだった。
(志摩子さん何気にスタイルいいからあんな短いスカートでも似合うんだろうなー)
 なんて思っていたら、その志摩子さんみたいな巻き毛の子がちょうどエレベータに最後に乗り込んでこっちを向いた。
(そう、あんな風に……)
「って!?」
 思わず声をあげてしまって、近くにいた人の視線を集めてしまった。
 だって扉が閉まる寸前目が合ったそのお顔が志摩子さんだったから。
 そんなまさか。


「そんなに重症なのかな」
 美術・工芸フロアを徘徊しつつ呟いた。
 たしかに菫子さんに『いつも志摩子さん志摩子さん言ってる』とは言われたことがあるけど、ちょっと髪の毛が似ている他人の顔が志摩子さんに見えるなんて。志摩子さんがいないとつまらないとは思ってたけど、幻を見るほどとは。もしかしたら精神的にかなり疲れているのかもしれない。
 美術フロアでは良さそうな本はすでに持っているものか、欲しいけど一介の高校生が持つにはあまりに高価な本ばかりで目ぼしいものはなかった。もちろん『高価な本』を立ち読みして『目の保養』をすることは忘れないけど。
 いつもだったらこのあと宗教関係のフロアを回ってくるんだけど、そっちはあきらめて早めに帰ることにした。心理・宗教のコーナーは一種独特の空気が漂っていて疲れているときにはあまり立ち寄りたくないのだ。
 この書店はフロア間の行き来の手段はエレベータとあとはひと二人がやっと並んで通れるほどの狭い階段がある。
 エレベータホールに差し掛かった時点で三機あるエレベータはあいにくどれもすぐにこのフロアに来そうになかったのでその狭い階段で降りることにした。
 階段に向かう道すがら仏像展の案内があったら貰おうと『ご自由にお持ちください』の案内パンフを眺めていたら、階段の方からきゃらきゃらと陽気におしゃべりをする声が聞こえてきた。甲高い声からなんとなくさっきの3人を連想した。
 案の定、狭い階段の空間に入ったところで濃い色のきわどいプリーツスカートとさっき見たすらっとしたおみ足が目の前に現れた。
 階段を下りようとしていたので、いや、さっきのこともあり落ち込み気味だったのかもしれないけど、とにかく視線が下を向いていたので顔は見てなかったのだけど、相手が立ち止まってしまったのが判って「あ、ごめんなさい」と言って、何気なく顔を上げた瞬間だった。
「しっ!?」
 目の前に志摩子さんのお顔があった。
「し?」
 かわいらしく首を傾げるお姿はやっぱり志摩子さんそのものなのに。
 その志摩子さんらしからぬ短いスカート。白いブラウスはリリアンの制服とは比べ物にならないほどお胸を強調して。違和感というか不条理というか、なんだか眩暈がしてきた。

  〜〜〜〜〜〜〜

「……という話を考えたんだけど、どうかな?」
「どうかなって言われても……そうね、乃梨子は私にそういう制服を着て欲しいの?」
「え? いや、そういうわけでは……」


(→【No:530】

ケテル・ウィスパー > 志摩子さんは一人いたら三十人・・・・げふっげふっ (No.1829 2005-09-10 01:14:00)
joker > 次の日には二人が四人。さらに次の日には四人が八人。一ヶ月後には…… (No.1831 2005-09-10 01:17:20)
春霞 > 空港でこんな風景がっ!   「「「「「おいでやす、志摩子の国へ。 お荷物お持ちしますえ」」」」」  (No.1834 2005-09-10 01:27:56)
 > そして全員黒いのですね。 (No.1903 2005-09-11 22:35:01)

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