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置き去りにされた心あります  No.903  [メール]  [HomePage]
   作者:8人目  投稿日:2005-11-23 13:38:18  (萌:1  笑:2  感:23
『がちゃSレイニー』

     †     †     †

「マリア祭の頃から、ずっと祐巳さまのことを見ていたんです……」
「そうなんだ。でも、私はそのときからずっと、瞳子ちゃんに嫉妬してたから」
「……」

「いいのよ。さっき瞳子ちゃんは謝ってくれた、その気持ちを持っていてくれただけでいいの。だって瞳子ちゃんは、いつも通り祥子さまに接していただけでしょ? 変に勘繰ったのは私」
「でも。私はもっと、祐巳さまのことを考えるべきだったんです。あの時、薔薇の館の一階で、祐巳さまの声が聞こえたんです。それなのに私は、祥子さまに問い掛けることしかしなかった。もしあの時、私が注意していれば――」

     †     †     †

 金曜日の放課後、薔薇の館。
 彩子お祖母さまの容体が急変したと祖父の病院から知らせを受け、祥子さまに伝えた後のことだった。

『私より瞳子ちゃんの方を選ぶんですね!』

 祐巳さまの声が聞こえる。祐巳さま、より? 私? 何故?
 その帰り道、私は気になったので、さりげなく祥子さまに訊ねた。

「祥子お姉さま。祐巳さまのこと、よろしいのですか?」
「……瞳子ちゃんもわかっているでしょう? お祖母さまに『祐巳には言わないで』って頼まれたから。祐巳に心配をかけたくないって」
「そう、ですか……」

     〜     〜     〜

 日曜日、彩子お祖母さまのお見舞いの帰り道に、祥子さまが悪心(おしん)を訴えた。
 いつもの車が使えず、仕方なく優お兄さまの運転する車を出してもらい、それで酔われたのだ。
 まったく優お兄さまったら。もう少し丁寧に運転できないものでしょうか。私ですら気持ち悪くなったくらいです。
 祥子さまは『もう二度と乗らない』と仰っていたけれど、同感ですわ。

 祥子さまの様子もだいぶ落ち着き、お休みになられたので、瞳子はそっと部屋を出た。
 居間でくつろいでいる優お兄さまのところに行くと、

「さっちゃんの様子はどうだい?」
「もう大丈夫ですわ。今はお休みになられています」
「そうか」
「心配するくらいなら、最初から――」
「ああ、今度からそうするよ」

(はぁ、“今度”はもう無いと思います)

「そう言えば、さっき祐巳ちゃんから電話があってね」
「祐巳、さま?」
「うん、さっちゃんの代わりに僕が出たんだけれど。今日、三人でドライブして、さっちゃんが車に酔ったから電話に出られないって話をしたら。急ぎの用じゃないから、さっちゃんには伝えなくて良いって言われてね。よく解からない電話だったな。ははは」

(優お兄さまには、一生わからないと思います)
 おそらく祐巳さまは、祥子さまに本当のことを聞きたかったのではないのだろうか。
 そして、何か誤解をなさっている?

     〜     〜     〜

 その予感は的中した。用事があるはずの祐巳さまは、薔薇の館に姿を現さなかったらしい。

「祥子お姉さま。やはり祐巳さまに、全てをお話された方が良いと思いますわ」

 私は祥子さまに提案した。彩子お祖母さまが危篤だと聞かされたのだ。
 祥子さまは、明日から学校をお休みして付き添うことになる。このまま放っておいて良い筈ありません。

「そう、ね。祐巳にこれ以上黙っていることは出来ないわ、逆に心配をかけているみたいだもの。でも、祐巳に会えないのよ。学校には来ているらしいのだけれど」
「それなら帰りに昇降口でお待ちになったらいかがでしょう。私も、そちらで待ち合わせいたしますわ」
「わかったわ。帰りに昇降口で」

 その日の帰り道、あの事件が起こった。

「もう、いいんです」
「あっ、祐巳さま!?」

 祐巳さまは、悲しそうな顔で祥子さまと瞳子の顔を見比べ、雨の中を傘も差さずに走っていかれた。
 祥子さまは驚いていたが、そのまま後を追いかけるように無言で歩き出す。
 正門前で、投げ出されて雨に濡れ、土で汚れた祐巳さまの傘と鞄を祥子さまが拾い、

「祐巳」

 祥子さまが呼びかけても、こちらを向こうとはしない。
 祐巳さまは聖さまの胸で泣いていた。

「お世話おかけします」

 祥子さまは祐巳さまの傘と鞄を聖さまに託し、彩子お祖母さまの入院されている病院へ行くために、車の後部座席へと乗り込んだ。私もそれに倣う。
 緩やかに走り出す車のミラーに、祐巳さまがチラリと写った気がした。

「祐巳さまのこと、よろしいのですか?」

 以前にも使った問いかけ、再度祥子さまに問う。
 だけど、祥子さまは何も答えなかった。窓の外をじっと見つめ、硬く握られた手は微かに震えていた。
 昇降口で私を見た時の祐巳さまの表情が、頭から離れない。

(私の、所為?)

     〜     〜     〜

 翌日のお昼休み。ミルクホールからの帰り道に、祐巳さまの笑顔を見てどうにも我慢できなくなった。

「最低」

 祥子さまが祐巳さまのことを、どれだけ大切に思っているかわからないのだろうか。
 祥子さまが彩子お祖母さまのことで大変な時に、昨日あんなことをしておいて、今日はもうヘラヘラ笑っていられるなんて。

「見損ないました、祐巳さま」
「……あなたにそんなこと言われる筋合いはないわ」

 落ち着いて、真っ直ぐ瞳子の目を見て、祐巳さまが言い返してきた。
 確かに私は関係がない、むしろ事態を悪化させていたのだろう。
 気持ちが揺らぐ。でも、昨日の祥子さまを思い出すと黙っていられません。

「筋合いなんてあってもなくても、私は言いたいことは言うんです」

 双方、友人たちに腕を掴まれて引きずられる。でもここまできたら止まらない。
 連れて行かれる前に言っておかなければならない。祐巳さまの本心を問い質したい。

「反論があるなら、おっしゃればいいんです。言いたいことがあるなら、はっきり言ったらどうなんです」
「大事なことから目をそらして、どうしてヘラヘラ笑っていられるんですか」

 私に言いたいことは無いのですか? 祥子さまのこと、大切ではないのですか?
 だけど祐巳さまは何も言い返しては来なかった。

「やっぱり、祐巳さまは祥子お姉さまに相応しくありませんっ」

 私のことは、どう責められようともかまいません。ですが、
(このままでは八方塞がりの祥子お姉さまが、あまりに不憫です)

     〜     〜     〜

 瞳子は、彩子お祖母さまが入院されている病院には行かなくなった。正しくは、行けなくなったと言うべきか。
 もともと、お見舞いに行く祥子さまに我侭を言って、ついて行っていただけなのだから仕方が無い。
 先週から祥子さまは学校を休み、学校から病院に通うことを止め、彩子お祖母さまに付き添っている。
 祐巳さまも薔薇の館に戻ったようだ。祥子さまのことを待つ気になったのだろうか。
(それで良いですわ。もう私は、お邪魔いたしませんから……)

 そんなある日、午前中にだらだらと降り続いた雨が、お昼休みに止んだ。その時を狙ってなのか、瞳子は祐巳さまに呼び出された。
(いったい何をされるのでしょうか。もしかして仕返し……)
 あれから数日、瞳子はあの時の自分の行動を少しは反省していた。凄い噂も聞いた。
 つい、かっとなって公衆の面前で祐巳さまに暴言を吐いたけれど、やはり悪いのは自分なのだ。
 我ながら、はしたなかったと思いつつ、でも噂と同じようなことをされるのは不本意。
 それに、今度は冷静に祐巳さまの本心を聞いてみたいとも考えた。

 ……つもりだったのに。祐巳さまが、わけのわからない暴走をはじめた。話についていくのがやっとだ。

「期間限定、一学期いっぱい。無報酬、お茶飲み放題。どう?」

 どうやら私に山百合会の手伝いを頼みたいらしい。せっかく貴女の邪魔をしないと決めたのですよ?
 なのになぜ私なんかに。私を嫌っていたんじゃないのですか? もう、全然わからない。
 思いついた言い訳で、なんとか誤魔化そうとするのだけど、全部さらりと躱されていく。
(はぁ、まったくこの人は……)

「他の皆さんは承知しているんでしょうね」
「へ?」
「私が手伝いにいくという話です」
「え、じゃあ――」

 屈託の無い笑顔。
 このまま素直に認めてしまっては、なんだか一方的に負けたような気がする。それだけは気に入らない。

「ただし、紅薔薇さまがお休みの間だけです。黄薔薇さまや由乃さまの分まで、お手伝いをするつもりはありません」
「よし、その条件のんだ」

 うやむやのうちに乗せられてしまった様な気が、しないでもないけれど。
 それにしても、祐巳さまがわざわざ私を指名する理由がわからない。

「でも、何で祐巳さまが来たんですか」
「何か言った?」

 目障りな筈の私を傍において、何かを企んでいる? でもこの笑顔に嘘偽りは無いだろう。何故?
 ぼんやりと考え事をしていると、
(あれ? 腕に違和感が、って、うわっ!?)

「――何してるんですかっ!?」
「え? ああ、腕くらい組んだ方がいいかなって」

(ななな何を考えているんですか貴女はっ!? まったく……)

「だから、わざと仲よくみせる必要はないんです、ってば」

     〜     〜     〜

 私が山百合会のお手伝いをはじめて数日。
 あのいじいじしていた祐巳さまは、もうどこにも居ない。今は元気で、天真爛漫に磨きがかかっている。
(いったい、何を考えていらっしゃるのでしょう)
 その祐巳さまが、とうとう瞳子に絡んで来た。理由は祥子さまのことだ。
 いつかは追求されるだろうと予想はしていたけれど、祥子さまとの約束を破るわけにはいかない。いや、私が伝えて良いことではないのです。
 ですが。この状態の祐巳さまに絡まれて平静を保っていられるほど、私の意思は強くないらしい。それは先日の一件で証明済みです。令さまにも軽くあしらわれた今、残る手段は一つ、不本意ですが逃げ出すしかありません。
 なのに、付かず離れず祐巳さまがついてくる。

「元気になっちゃって」

 あんなことがあったのに、何一つ解決していないのに、どうして一人で元気になれるのですか?
 私の……。私はどうすれば良いのですか?

「祥子さまを好きな人が、祥子さまがいない分がんばるべきじゃない?――」

 もう、祐巳さまは大丈夫だろう。だから祥子さまも。
 だから、私のことは……もういいですわ。

 > 感動に一票・・・かな? (No.4895 2005-11-23 14:12:24)
 > 続きを楽しみにしていますよ! (No.4896 2005-11-23 14:15:27)
 > …やっぱり、アレもコレもで纏まりが悪かったかな。と思ってバッサリ外科手術を敢行しました。
原作と『リリアン駆け足で 【No:594】』を頑張って意識しています。 (No.4898 2005-11-23 15:54:05)

くま一号 > ここから一気にエンドと思って書いた、祐巳志摩対決の【No:594】から二ヶ月たっちゃったのかあ。ありがと、私には書けなかったし意外に二次創作でもあんまり書かれてないレイニー瞳子視点。そりゃあ、ほんとなら文庫本一冊くらいほしいところだもん(笑)いろいろ入れたくなっちゃうんだよねー。 (No.4901 2005-11-23 19:10:19)
くま一号 > と書いたら変わってる。危機のところに焦点を絞った外科手術成功してます。 (No.4902 2005-11-23 19:14:06)
 >  外科手術に踏み切ったのは、良さまの微妙な反応(苦笑)を見たからです。成功と言ってくれてホッとしました。
 一つの投稿ごとに“テーマを絞る”これってナスビと違って連作の難しい所ですよね。取捨選択の思い切りが、かなり必要だから。 (No.4916 2005-11-24 00:53:50)

一体 > 原作ライクな雰囲気を残しつつも、ガチャレイニー風さまテイストが加わっていて瞳子がとてもかわいく仕上がってますね。続きが楽しみ! (No.4918 2005-11-24 04:54:18)
 > 自分のせいで外科手術を!?それはすみませんでした。それでは次回作を楽しみにしてます!手術成功おめでとうございました。 (No.4921 2005-11-24 08:17:39)
 > いえ、ありがたいと思いました。
 話の構成を「こうしたらもっと良いかもしれない」と提案してくれる方が少ないし、コメントの表情を見て判断するしかないのが現状で。「纏まりが無いかも?」と自分でも思っていたところでしたから。>良さま
 新刊発売前までに終われるかな?(笑)>一体さま (No.4934 2005-11-24 13:01:52)


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