トゥルルルルーー。リビングにある電話が鳴った。菫子さんは、友人と
出かけてしまったので、私は電話に出た。電話は、出かけた菫子さんから
だった。いい感じに出来上がっているみたいで、聞き取るのが大変だった。
「リコ〜。私、今日は帰らないから〜ね〜。物騒だから、
戸締りは〜ちゃんと〜やるんだ〜〜よ。」
「はいはい。子供じゃないから。そんなことわかってるってば。」
「わかればよろしい。じゃあね〜。」
受話器を置いた私は、大きくガッツポーズ。どれだけこの日を待ったことか・・・。
TVを消して、自分の部屋へ駆け込んだ。そして、通販で購入した抱きまくら
(160×50)を引っ張り出した。別にこれだけならなんてことない。菫子さんが
いない夜になるのをずっと待っていたのには訳がある。机の引き出しの奥から、
出番を待っていた私の宝物を取り出した。
「志摩子さん抱き枕〜〜!!」
そこには、パジャマ姿で微笑む志摩子さん。いますぐ、押し倒したい衝動に
駆られるぐらい可愛いじゃないか!その衝動をグッと抑えて、志摩子さんの
カバーを抱き枕に装着。ほとんど等身大。志摩子さんが、パジャマ姿で、
私のベッドで微笑んでる・・・・。この光景だけで、私の顔はきっとかなり
ニヤついてるような気がする。これだから一人の夜じゃないと駄目だった訳。
大きく深呼吸。落ち着け乃梨子。今日は菫子さんは帰ってこない。朝まで
この部屋には誰も来ない。まずは、ゆっくりと抱きしめてみる。これは
いいものだ!抱き枕を発明した人って素晴らしい。これだけ出来がいいと、
本当に志摩子さんと一緒に寝てるような気になってきて、どんどん目が
冴えてきて、全然眠れない。一晩中、志摩子さん抱き枕を可愛がっていた。
ーーー翌日の朝ーーー
「リコ。ただいま〜。」
結局、朝帰りだった菫子さんが見たのは、志摩子さん抱き枕に顔を埋めて
爆睡する私だった。それを見て菫子さんの酔いは一発で吹き飛んだらしい。
「志摩子さん・・・・。大好き・・・・。」
「リコ・・・。あんた変わったねえ・・・。」
(終わり)