【1035】 貴女は私のお姫様情熱の鍵  (OZ 2006-01-14 22:35:54)


私、山口真美は今期2年生になった。
現在、私のお姉様である三奈子様は新聞部の部室内をあっちゃこっちゃ、どったんばったんと荒らしまわっている。
「・・・いったい何をなさっているのですか・・・」私はため息をついた。
私の存在に気づいたお姉様は目をうるうるさせながら私に叫んだ。
「ま、真美、真美!! どうしよう!! 机に置いておいた原稿がないのよ〜〜」

やれやれ

「これのことですか、お姉様?」私は一枚の原稿用紙をお姉様に見せた。
「そ! それよ、それ!! ああ〜〜よかった、 って、何処にあったの?」
「廊下です。」
「廊下? ろうか・・・? なんで??」
「なんで?? じゃ!! ありません!! お姉さま!! この原稿は部室の外に落ちていたんですよ!?」
原稿を手に、詰め寄る 「そ、それは、今さっき聞いたわよ、ちょっと疑問に思っただけじゃない、真美ちゃん、あ、あの、ちょっと怖い・・・」
私はお姉様の目を見つつ、じりじりと距離を詰める。お姉様の額に汗がたらたらと流れる。
 目に涙を溜めつつ、真美の言葉を受け止めるためがんばって身をぎゅっと引き締める三奈子様。

「お姉様!! なんでこんなことになったのか解っていますのかしら?」
「さ、さあ、なんでかしら・・・」 グスグス

不本意ながら、私は額に青筋をたてて叫んだ!!

「部室が散らかっているからです!! しかも!! ほとんどお姉様の仕業なんですよ!! 私が何度も何度も!! 口をすっぱくするほど言っても、何度片付けたって、2,3日すれば元の木阿弥!! いい加減にしてください!!」

三奈子様は、うるうる、もじもじしながら
「そ、そんなこと言ったって、気づいたらごちゃごちゃになっているん・だもん・・・」 今日は可愛く言ったって許しません。
「そのつど、そのつど、整理すれば問題ないはずです。」
「で、でも・・・」
「でもも、すともありません、とにかく、せっかくの記事が廊下、いいですか!!廊下ですよ!? 一般生徒の面前に晒されていたんですよ!? 他の年輩、後輩、いいえ、三奈子様のお姉様、あの方に知れたらどんなお叱りがあるか。ほんと、私だったから良かったもの・・・」

現在、三奈子様のお姉様はリリアン女子大に通っていて、月に1日ほど後輩の指導(監視?)みたいな感じで高等部の新聞部に顔を出していた。
真美には物凄く迷惑だったのだが・・・

それを聞いたお姉様は、私にがばっと掴みかかり、
「ま、真美、と言う事は、今現在、お姉様には言ってないってことよね? 知れてないって事よね、ね?」微妙に振るえている。
「ええ、とりあえず今は言ってはいませんし知れてないと思います。後は知りませんけど。」
「うえ!? 後はって!? な、何? どうゆうこと?」
「さあ? 何のことでしょうか?」
「ま、真美〜〜!!」
ちょっと意地悪しすぎたかしら、でも、いつになってもお姉様である三奈子様の口から『お姉様』と聞くとなんかむかつく!!
あの人(三奈子様の姉)は確かに尊敬しうる素晴らしい人、新聞部を今のように大きくし、薔薇様達とのパイプを繋いだと噂される伝説的な(新聞部内)お方。
でも、私が三奈子様の妹になったとき、あの女はこう言った。



「真美ちゃん、三奈子の妹になったのね。」
「は、はい、これからご指導よろしくお願いします!!」ペコリと頭を下げる。
でも、   『いやよ!!』  彼女はふんぞり返って言い放った。
「はい? いま、なんて?」
「いやっ!! て言ったの、真美ちゃん、 イ・ヤ・!! どう? OK? 今度は聞こえた?」
「聞こえました・・・  で・でも、なぜです?」
「OK、いい質問ね、それは、私が三奈子を大好きだからよ!! そして、三奈子も私を1番に思っているはず、まあ、これは核心ですけど、悪い? 真美ちゃんがいくら三奈子のことを好きでも、私にはかなわないわよね〜〜〜 ほ〜〜〜ほっほっほ。」
その言葉に!! ムカムカムカムカ〜〜〜なんだ!! この女!! プチン!!

「だったら、私が貴方を抜いて三奈子様の1番になります!! ふん!! たかだか2歳年上のお方には負けません!! ば〜か ば〜か!!」

『ば〜か ば〜か!!』 言いつつも、悔しくて涙があふれてきた、三奈子様の姉であるこの人にはどうあっても勝てない気がした、歴史が違う、悔しいが三奈子様はこの人を本当に大好きなのだろう でも!! 本当に、本当に、悔しい!!
 
涙を見られるのも嫌だったので、プイッとそっぽを向いた、そのとき
「いい根性してるわね。」 突然、フワッと、わたしは後ろから抱きしめられた、
「な、なにを??」
「お願い、ちょっとこのままでいてくれる・・・   その、 ありがとう、真美ちゃん ・・・ 実際、ほんとに、私はバカなのかも、私は3年生になり、卒業も在る、そろそろ妹離れしなくちゃならないのに。」
ふと、柔らかな、優しい、まるでマリア様、いや、母親のような笑顔で私に言った。
 

「OK 安心した。」
「それは・・・どういうことですか?」
「三奈子は私の可愛い妹、でも、事あるごとに暴走するの、それは真美ちゃんも判っているわよね?」
「は、はい、困ることが多々・・・。」
「OK だからね、私が卒業したら、貴方が舵を取るのよ!!」
「か、舵ですか??」

「そう、期待してるわよ、お姫様、おばあちゃんからのお願い。」

なぜか、私の瞳からは、また、(でも、今度は嬉しい)涙があふれてきた、
「わ、わたし、そんな、大それたこと・・・ 」ポロポロ涙を流しながら 
「そんな、出来ません!!」
「大丈夫、貴方なら出来る、貴方になら頼める、貴方がいて、ホントありがたいと思った。 三奈子の扉を開ける鍵は今、貴方の心の中にあるのよ。」
なんてやさしい気持ち、なんと素晴らしい心。
「真美ちゃん、がんばって、そして、ありがとう。」

悔しいけど、こりゃ、今は勝てないわ・・・ まあ、そのうちは巻き返すけどね。


三奈子様は私のことをとても大事に思ってくれている、でも、その三奈子様はご自分のお姉様のことを今も崇拝していて、大好きでいる、そんなこともあり私は、今でも・・・

悔しいが、彼女のことが、とっても大好きであって・・・

大大大嫌いなのだ・・・ 


一つ戻る   一つ進む