午前の授業終了のベルが学園中に鳴り響く。
そして、今日も毎日のように繰り返される学園の風景、いや、今やこれがリリアンの日常行事といっても・・・もはや間違いではない。
ミルクホールを照れながら、しかし優雅に歩く一人の美少女、その名を『福沢祐巳』といった。
だだでさえ毎日満員御礼なこの場所、しかし彼女の周りには一切ない、まるで、モーゼが海を割ったかのように生徒は前を空ける。
今、影から監視している私でさえ今すぐ出て行って露払い、いや、お姫様抱っこして連れて行きたいくらいだ!!
・ ・・ やばい!! 気を引き締めろ!!
〜〜〜〜〜〜〜 数ヶ月前〜〜〜〜〜〜〜
「ご、ごきげんよう、あ、あの、その・・・」
「どったの〜〜 祐巳ちゃんだっけ? そんなに強張らなくてもいいのに。それともお姉さんが色んなマッサージして緊張をほぐしてあげようかな?いひひ。」
「い、いえ!? そ、そんな!!」 顔を真っ赤にする祐巳ちゃん。うひ!!かわいい!!
「聖、ただでさえ始めての事に緊張しているんだから、あんまり私の孫をからかわないで頂戴!!」
「へ?蓉子!? て、言うことは、祐巳ちゃんは祥子の妹になったの!?」
「蓉子の言うとおり、今日から祐巳ちゃんは私たちの仲間よ、いいわね?聖?」
「江利子・・・ な〜〜んだ、祥子でかした!! まさか彼方見たいな仏頂面な子にこんな可愛い妹が出来るなんて。
「ロ!!白薔薇様!!それはいくらなんでも失礼ではなくって!!」
「あはは、ごめんごめん。冗談、言い過ぎた、私だって、蓉子や江利子同様とても嬉しいんだから、ね?」
少し遅れて、令と由乃ちゃんが現れた。
「ごきげんよう、遅れてすみませんお姉さま方。」
令は祐巳ちゃんを見るなり、頬を赤らめた。
「 ああ、彼方が祐巳ちゃんね、祥子からは話は聞いてるよ、ホント祥子の言うとおりカワイイ子ね!!」満面の笑みを浮べ令は話しかける。
ズガン!!
物凄い音と共に令が吹っ飛んだ。
「あっらーー どうしたのかしら、お・ね・え・さ・ま 足元はよく確認なさらないと。」可愛くニコッと微笑む
「よ、由乃、ほ、ホントに、い、痛いよ・・・」
「何のことかしら、浮気者の お・ね・え・さ・ま・」 「よ、よし、の、しゃれになってないよ〜〜〜」
「なにはともあれ、祐巳さん、歓迎するは、良かったら良いお友達になってね?」ポ
「よ、由乃さん・・・ ありがとう・・・」
その光景を見ていた祥子はゆっくりと優しく祐巳を胸に抱き「良かったわね祐巳、皆、彼方を受け入れてくれたわ。」
「お、お姉様・・・」祐巳ちゃんは瞳に涙を浮かべながら頭を下げた。
「皆様、有り難うございます!!」
しかし、私には何となく見えてしまった、泣きながら頭を下げた祐巳ちゃんの顔は・・・ その・・・ 笑っていた。
その日から世界(リリアン)の歯車が変わり、不思議な方向へと進んでいった。
あれほど、冷静で何事にも完璧を求める紅薔薇姉妹の蓉子そして祥子、事もあろうが祐巳ちゃんを家にやってきた子猫を可愛がる子供の様に可愛がっている。
びっくりしたことに、黄薔薇3姉妹が悔しそうに、いや、嫉妬の様な目で、いや、もはや恨みにも似た目でその光景を見ている、江利子のこんな顔を見たのは初めてだ。
「祐巳、はい、あ〜〜ん」 「お、お姉様」 あ〜〜ん
「祐巳ちゃん、私のは? あ〜〜ん してくれないの?」
「よ、蓉子さま・・」 あ〜〜ん
2人の申し出に可愛く あ〜〜ん とする祐巳ちゃん、くそ!!可愛い!! 私もしたい!!
「なんだ!!この気持ちは!!おかしい!!私はリリアンの女の子、全員が好きなのに、ここまでたった一人に心奪われるなんて、
そんなの無い!!でも!! 祐巳ちゃんは超可愛い・・・」
私は裏庭で一人葛藤していた!! 何かおかしい!!何か引っかかる!!
「ふふ、苦しんでおいでですね、白薔薇様」
「そ、その声は、東○ポちゃんにパパラッチちゃん!!」
「新聞部!! 山口真美です!!」 「写真部!! 武島蔦子です!!」
「ああ、ごめんね、冗談、で、何か知ってるの?」わたしは2人に聞いた。
真美ちゃんがゆっくりと話し出した。
「知っているというか、その、新聞部、写真部で徹夜で情報収集していて、分かった事といえば!!」
「分かったことといえば!?」ごくり
「分かった事といえば、ご学友の桂さんが消えたこと、後は、何も解りません。」
「だめじゃん!!」ずっこけた。いや!!友達が消えたことはいろんな意味で問題だ。
でも、蔦子ちゃんが後を追うように、「まあ、まあ、しかし、変なんです、桂さんが消えた後、私は不思議な夢を見ました、そして、変な声を聞きました・・・」
「ど・どんな?」
「あ、あの、それは・・・ 実は!!」
ごくり! 「 それは? 実は!!」
いきなり!! 「それは!! 祐巳さんが、きゃわゆいってことですう〜〜〜 !!」 身体をくねくねさせ、もだえる東ス○、
もういいか、真美ちゃん!!
「な、何なに!?」
「ま!! 真美さん!? 離れてください白薔薇様!!」
蔦子ちゃんが叫んだ!! 「いつの間に感染していたの!! いつの間に!! くそう!! くそう!!」
ゆっくりと真美ちゃんは私たちのほうにふりむいた、なんだ!! なんなんの!! 瞳孔がピンク、しかもハートマークになっているよ!!
「御気をしっかり!! ここは私が何とか食い止めます!! 説明はあとです!! 行ってください!!」
「うふ、うふふ、さあ、蔦子さんも、白薔薇様も、祐巳様の愛の園にいきませう・・・」じりじり・・・
「ごめん・・ 真美さん」
蔦子は自分のカメラを真美に向け、そして、フラッッシュの角度を・・・ 真美に向けた・・・ 真美の顔が一気に青くなる。
「つ、蔦子さん・・・ あ、あなたは、私を殺すの? 友達の、私を、殺すの? ね、ねえ? つた、こ、さん?」
「それが・・・約束よ・・・」パシャッ!! 蔦子のレンズから七色の光、蔦子のフラッシュから黄金の光・・・
あり・が・と・う・・・
ねえ?蔦子さん? なに?真美さん? これからはお互いどうなるか解らない、もし、おかしくなったら、其の時は、殺し合いましょう・・・
お互い、好きな人を傷つけたくは無いじゃない?
ええ、そうね、好きな人を傷つけるくらいなら・・・死んだほうがましね。
「真美さん・・・ さようなら、そして、次は、地獄で会いましょう・・・ 」カメラ越しだったが・・・彼女は泣いていた。
い!! いやだ!! 何なんだよ!! これは!! も、もう、いやだ!! 大好きな後輩が、そんな、そんな、助けて、助けてよ、祐巳ちゃん、お願い、蓉子、江利子・・・ し・・・ま・・・
私は気持を、心の滝壷の奥の奥深くにまでに沈めていた、もう、誰とも話したくない、もう、誰とも会いたくない・・・
・ ・ お姉様・・
「お願い!!黙って!! いやだ、もう・・誰とも話したくない、誰とも会いたくない。」ここで、一生泣いていたい・・・
・ ・栞様とも会いたくないですか?・・
「・・・」
・ ・ 私ともお話しするのは・・・いやですか?
その声は、まるで賛美歌のように、その、私の心に染み入ってきた。
「し、志摩子、なの?」
はい
「ど、何処、いってたの?」
お姉様と、祐巳さんを助けるための力を蓄えに行ってました
「あなた? 何者? なの・・・」
いやですわ、私はお姉様の妹、藤堂志摩子ですわ。
・・・
何か気づいた!! 今は泣いてる場合じゃない、「はは、そうだね、まあ、ともあれ、皆を祐巳ちゃんを、助けに行こうか!!」
「志摩子、貸してくれる?」
はい!!お姉様!! 志摩子の背中には真っ白な羽が生えていた。ようにみえた・・・