「ここで待っていれば二人になれると思って」
「待っていれば………って?」
「これ」
「あ」
祥子さまが手提げから出したものが、クリスマスプレゼントであることはすぐわかった。開けなくても、中身もわかった。包装された平たい箱は、去年と同じだ。
「ハンカチですね」
「去年と同じで芸がないと思わないで。今年は手を加えてみたのよ」
開けてみて、と促されて包装をとく。中から現れたのは白いハンカチ。
ゴージャスなレースで縁取りされているのは、去年と変わらない。けれどイニシャルのSの部分には、上からブルーの糸でYの文字が刺繍してある。Sを消すようにではなく、どちらも見えるようにうまく重ねて。まるで、何かのロゴマークみたいに見えた。
そして、アルファベットの周りには。
「ツバメ……黒いツバメ……。お姉さま、これは……」
「そう、ヤクルトスワローズのロゴよ。紅薔薇にピッタリでしょう?」
「で、その心は?」
「来年には『Y』を挟んで『T』と『S』が並んでいるでしょう!」
「山田君!座布団全部もっていって」
注1:2006/1/10付けでヤクルトスワローズは「東京ヤクルトスワローズ」へチーム呼称変更
注2:これは瞳子ちゃんに断られた直後の会話です。