「あ痛ぁ!」
薔薇の館を掃除中、何もないのに顔からすっ転んだ紅薔薇のつぼみこと福沢祐巳は、哀れにも頬に擦り傷を作ってしまった。
「祐巳さん、大丈夫!?」
慌てて駆け寄ったのは、黄薔薇のつぼみこと島津由乃。
「痛たたた…。うん、ちょっと擦っただけ」
心配そうな顔で、祐巳の頬に手を添えて、まじまじと傷口を観察する由乃だが、確かに彼女の言う通り大した傷ではないけれど、ほんのちょっぴり血が滲んでいた。
軽く安堵の溜息を吐いた由乃は、
「大したことないわね。ツバでも付けとけば、すぐ治るわ」
と言いつつ、祐巳の頬に唇を近づける。
その顔は、何故かほんのりと赤かった。
「って由乃さん、一体何を?」
「だから、直接ツバ付けとくの」
「ダメって。汚いってば」
「いいのよ、祐巳さんだったら」
「ダメってばぁ!」
やたら細こい身体のくせに、やたら強い力で迫る由乃。
必死で抵抗した祐巳、なんとか脱出に成功し、
「ゴメン、保健室に行って来る!」
「あー、祐巳さーん」
一言残した祐巳は、名残惜しそうな声を背中で聞きながら、ダッシュでその場を後にした。
「祐巳さん、どこに行くの?」
早足で歩く祐巳に声をかけて来たのは、白薔薇さまこと藤堂志摩子。
「うん、ちょっと保健室まで。転んで頬を擦っちゃったんだ」
心配そうな顔で、祐巳の頬に手を添えて、まじまじと傷口を観察する志摩子だが、確かに彼女の言う通り大した傷ではないけれど、ほんのちょっぴり血が滲んでいた。
軽く安堵の溜息を吐いた志摩子は、
「大したことないわね。ツバでも付けておけば、すぐに治るわ」
と言いつつ、祐巳の頬に唇を近づける。
その顔は、何故かほんのりと赤かった。
「って志摩子さん、一体何を?」
「だから、直接ツバ付けとくのよ」
「ダメって。汚いってば」
「いいのよ、祐巳さんだったら」
「ダメってばぁ!」
力なんてまるで無さそうなくせに、やたら強い力で迫る志摩子。
必死で抵抗した祐巳、なんとか脱出に成功し、
「ゴメン、保健室に行って来る!」
「あー、祐巳さん」
一言残した祐巳は、名残惜しそうな声を背中で聞きながら、ダッシュでその場を後にした。
「祐巳ちゃん、どこに行くの?」
早足で歩く祐巳に声をかけて来たのは、黄薔薇さまこと支倉令。
「はい、ちょっと保健室まで。転んで頬を擦っちゃったんです」
心配そうな顔で、祐巳の頬に手を添えて、まじまじと傷口を観察する令だが、確かに彼女の言う通り大した傷ではないけれど、ほんのちょっぴり血が滲んでいた。
軽く安堵の溜息を吐いた令は、
「大したことないね。ツバでも付けておけば、すぐに治るよ」
と言いつつ、祐巳の頬に唇を近づける。
その顔は、何故かほんのりと赤かった。
「って令さま、一体何を?」
「だから、直接ツバ付けるんだよ」
「ダメですって。汚いですってば」
「いいんだよ、祐巳ちゃんだったら」
「ダメですってばぁ!」
現役剣道部員の貫禄、やたら強い力で迫る令。
必死で抵抗した祐巳、なんとか脱出に成功し、
「ゴメンナサイ、保健室に行って来ます!」
「あー、祐巳ちゃん」
一言残した祐巳は、名残惜しそうな声を背中で聞きながら、ダッシュでその場を後にした。
「祐巳さま、どこに行かれるんですか?」
早足で歩く祐巳に声をかけて来たのは、白薔薇のつぼみこと二条乃梨子。
「うん、ちょっと保健室まで。転んで頬を擦っちゃったんだ」
心配そうな顔で、祐巳の頬に手を添えて、まじまじと傷口を観察する乃梨子だが、確かに彼女の言う通り大した傷ではないけれど、ほんのちょっぴり血が滲んでいた。
軽く安堵の溜息を吐いた乃梨子は、
「大したことないですね。ツバでも付けておけば、すぐに治るでしょう」
と言いつつ、祐巳の頬に唇を近づける。
その顔は、何故かほんのりと赤かった。
「って乃梨子ちゃん、一体何を?」
「だから、直接ツバ付けとくのです」
「ダメって。汚いってば」
「いいんです、祐巳さまでしたら」
「ダメってばぁ!」
見た目は結構華奢なくせに、やたら強い力で迫る乃梨子。
必死で抵抗した祐巳、なんとか脱出に成功し、
「ゴメン、保健室に行って来る!」
「あー、祐巳さま」
一言残した祐巳は、名残惜しそうな声を背中で聞きながら、ダッシュでその場を後にした。
「祐巳、どこに行くの?」
早足で歩く祐巳に声をかけて来たのは、紅薔薇さまこと小笠原祥子。
「はい、ちょっと保健室まで。転んで頬を擦っちゃったんです」
心配そうな顔で、祐巳の頬に手を添えて、まじまじと傷口を観察する祥子だが、確かに彼女の言う通り大した傷ではないけれど、ほんのちょっぴり血が滲んでいた。
軽く安堵の溜息を吐いた祥子は、
「大したことないわね。ツバでも付けておけば、すぐに治るわ」
と言いつつ、祐巳の頬に唇を近づける。
その顔は、何故かほんのりと赤かった。
「ってお姉さま、一体何を?」
「だから、直接ツバ付けとくのよ」
「ダメですって。汚いですってば」
「いいのよ、祐巳だったら」
「ダメですってばぁ!」
祐巳がらみになると、やたら強い力で迫れる祥子。
必死で抵抗した祐巳、なんとか脱出に成功し、
「ゴメンナサイ、保健室に行って来ます!」
「あー、祐巳」
一言残した祐巳は、名残惜しそうな声を背中で聞きながら、ダッシュでその場を後にした。
「祐巳さま、どこに行かれるんですの?」
早足で歩く祐巳に声をかけて来たのは、演劇部所属松平瞳子。
「うん、ちょっと保健室まで。転んで頬を擦っちゃったんだ」
心配そうな顔で、祐巳の頬に手を添えて、まじまじと傷口を観察する瞳子だが、確かに彼女の言う通り大した傷ではないけれど、ほんのちょっぴり血が滲んでいた。
軽く安堵の溜息を吐いた瞳子は、
「大したことないですわね。ツバでも付けておけば、すぐに治りますわ」
と言いつつ、祐巳の頬に唇を近づける。
その顔は、何故かほんのりと赤かった。
「って瞳子ちゃん、一体何を?」
「だから、直接ツバ付けとくのです」
「ダメって。汚いってば」
「いいんですのよ、祐巳さまでしたら」
「ダメってばぁ!」
明らかに祐巳より非力なのに、やたら強い力で迫る瞳子。
必死で抵抗した祐巳、なんとか脱出に成功し、
「ゴメン、保健室に行って来る!」
「あー、祐巳さま」
一言残した祐巳は、名残惜しそうな声を背中で聞きながら、ダッシュでその場を後にした。
「祐巳さま、どちらへ?」
早足で歩く祐巳に声をかけて来たのは、山百合会臨時助っ人細川可南子。
「うん、ちょっと保健室まで。転んで頬を擦っちゃったんだ」
心配そうな顔で、祐巳の頬に手を添えて、まじまじと傷口を観察する可南子だが、確かに彼女の言う通り大した傷ではないけれど、ほんのちょっぴり血が滲んでいた。
軽く安堵の溜息を吐いた可南子は、
「大したことないですね。ツバでも付けておけば、すぐに治ると思います」
と言いつつ、祐巳の頬に唇を近づける。
その顔は、何故かほんのりと赤かった。
「って可南子ちゃん、一体何を?」
「だから、直接ツバ付けとくのです」
「ダメって。汚いってば」
「いいのです、祐巳さまだったら」
「ダメってばぁ!」
身長が高い分パワーがあるので、やたら強い力で迫る可南子。
必死で抵抗した祐巳、なんとか脱出に成功し、
「ゴメン、保健室に行って来る!」
「あー、祐巳さま」
一言残した祐巳は、名残惜しそうな声を背中で聞きながら、ダッシュでその場を後にした。
「はぁもう、どうしてみんな、そんなにツバ付けたがるんだろう…?」
ようやく保健室に辿り着いた祐巳、他人が聞けば誤解を招きかねない言葉を呟きながら、扉をノックした。
「どうぞ」
「失礼します」
「あら、紅薔薇のつぼみ。どうしたの?」
尋ねてきたのは、元リリアン生で養護教諭、保科栄子だった。
「はい、大したことはないんですが、転んで頬を擦ってしまったもので」
心配そうな顔で、祐巳の頬に手を添えて、まじまじと傷口を観察する栄子だが、確かに彼女の言う通り大した傷ではないけれど、ほんのちょっぴり血が滲んでいた。
軽く安堵の溜息を吐いた栄子先生は、
「大したことないわね。ツバでも付けておけば、すぐに治るわ」
と言いつつ、祐巳の頬に唇を近づける。
その顔は、何故かほんのりと赤かった。
「って先生、あなたまでですか…」
祐巳は、とうとう諦めた。