【1196】 新たな想いと共に・・夜を越えて  (OZ 2006-02-28 00:10:52)


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 【小笠原邸】

 祥子は入浴を終え、未だ火照っている身体をバスローブに包みながら、1人、長い髪にくしを通していた。

プルルル〜〜 プルル〜〜  内線が鳴る

「はい、どうしました?お母さま?」
受話器からはお母さまの叫びにも似た声が聞こえた
・・・
「いえ、祐巳ならとっくに。すみません、瞳子ちゃんは存じません、と、とにかく落ち着いてください、祐巳、そして瞳子ちゃんのお母さまが何ですって?」
・・・
「はい、はい? 帰ってない、『誰が』ですか? はあ、 祐巳が、帰ってないんですか? そうですか? 瞳子ちゃんも?」

    2人とも家に帰ってない、(祥子様思考中) んん・・・!? 

「な・な・なんですって〜〜〜〜〜 !!」



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【薔薇の館・物置】

羽陽曲折あったが、無事にロザリオの授受の終わった2人、ここだけは南国熱々新婚ムードのラブラブモード、でも現実の気温はそんなこと無く、冬の寒さに再び2人して毛布に包まった。
 とは言え、閉じ込められた時とは雲泥の差、今は寄り添う暖かさが2人の心と身体を満たしていた。

「でも、本当に困ったね、このまま出られなかったらどうしようか?」
「あまり困った様に聞こえないんですけど。」
「困ってるわよ、このまま帰れなかったら当然お互いの両親も心配するでしょ? 私に至っては嫁入り前の娘を朝帰りさせたなんて、瞳子ちゃんの親御さんに顔向けできない、祥子様に怒られるのもすごく怖い、そしてお腹も減った。」
「お馬鹿なこと仰らないで下さい・・・ まったく能天気なんですから。」
「うう!! い、妹のくせにひどいな〜  あの、その、姉に向かって能天気はないんじゃない。」

    『妹』 『姉』 

「何度でも言って差し上げます、「 お姉様 」は能天気すぎます。」 お顔真っ赤。
「へ!? 瞳子ちゃん」
 祐巳がキラキラとした瞳で瞳子を見る
「な、何ですの・・・」 さらに真っ赤
「もう一回言って・・・ 今の言葉・・・ 私に向かって言った言葉・・・ 能天気って言った前の言葉」キラキラキラーン



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【車内】

「松井!! 急ぎなさい!! 私の祐巳の危機なのよ!! ああ〜〜なぜ減速するの!!」
祥子には確信が在った、祐巳はあそこに居る!! そして瞳子ちゃんも!!
「お嬢様、信号が赤です!!」
「見えないわ!!」
「しかし!! 『赤は止まれ』は国際ルールですよ!?」
「わたくしが認めてない。」
「お嬢様・・・ 目が尋常では無いような・・・」
「とっても尋常よ。(?) だから・・・ アクセルを踏み込みなさい!!」
 ・・・
やけくそになった松井さんは叫んだ!!

「何人となりとも、俺の前は走らせねえ〜〜!!」
「頼むわよ!!」
「任せろい、タモツ!!」
「タモツ? どなたかしら?」

松井さんの車は爆走する。
    ・ 
    ・
    ・

「つ、付きました、 お、お嬢様。」 ぜえぜえ・・ リリアン校門前
慣れないことをしたのが効いたのか、松井さんは肩で息をしつつハンドルに突っ伏した。  
たきつけた当の本人、祥子の目もぐるぐる廻っている。
「あ、ありがとう・・・ で、では、少し待ってて頂戴。 うぷ 」ふらふら



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【再び物置】

「と、特に何も言ってませんわ。」
「そんな意地悪いわないで、ね、言って、もう一回。」
「だ、だから、何のことですの!!」ぷいっと祐巳に背中を向けた瞳子ちゃん、いまだお顔は真っ赤っか。
その背中を祐巳は優しく抱き、
「お願い、もう一度聞かせて。」
 ・・・
「んも〜〜 解りました!!言います!!」 時際は言いたくてたまらない瞳子ちゃん
「本当に!?」
「は、はい、でも、最初は『姉』である呼び方できちんと瞳子を呼んでください、そしたら、私はそれに答えます!!」
「え? はずかしいよ・・・」
「なら、瞳子も申しません!」

「解ったわよ、 えと、その、  ・・こ 」
「聞こえません!!」 ぷい
「と ・ こ」
「まだまだ全然聞こえませんわ!!」 またまたぷい
「で、でも・・・」
「わ、私だって本当に恥ずかしいんです、緊張しているんです。」 でも待ち遠しいんです・・・
その言葉に答えるように、祐巳はお腹に力をいれ言った。

「とうこ!!」 

瞳子の耳に賛美歌と間違うかのような、歌声、いや、言葉がきこえた。 全身が喜びで震えた。

と・う・こ・

「はい、おねえ・・ 」
言い終わる前に、同時に扉がぶち壊され、言葉はかき消された。



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【祥子・ちょっと前】

ハアハア!
祥子は薔薇の館に着いた。
玄関の鍵が開いている、これは未だ館の中に人が居ることに他ならない。
「祐巳達は、ここに居るのね・・・ まったく、どれだけ私に心配を掛ければいいの?」
祥子は館に入り、一目散に物置に向かった。
鍵の掛かったドアノブに手をかける、開かない筈の扉も今の祥子には問題ない。

「祐巳!! 瞳子ちゃん!!」 
叫び声と共に扉は開かれた、いや、破壊された。



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【2人と1人の再会】

        と・う・こ

「はい、おねえ・・ 」 ズバン!!
「祐巳!! 瞳子ちゃん!!」

「お!! お姉様!!」
「祥子お姉様!!」
いきなり怪獣、いやいや、祥子様の登場に目を白黒させる2人。そして祥子の怒号が響いた。

「祐巳!!!!!」
「は、はいいいいい!!!!!」
「こんなに心配させて!! オッチョコチョイの見本、いえ、代表にほどが在るわ!!」
祐巳は蛇に睨まれた蛙の如き状態。
「さ、祥子お姉様、今回のことは、その、あくまでも事故なのです、その、祐巳様に非は、有りま・・・ ひ!!」
祥子に睨まれ、瞳子ちゃんも固まる。そして祥子の後ろで木片と化し、ゆっくり揺れていた扉も動きを止めた。

祥子は2人にゆっくりと近づく。
2人は緊張に身を固めた。
そして
「よかった・・・」 祥子は2人を優しく抱く。
「お、お姉様・・・?」
「祥子お姉様・・・!?」
「ほんとによかった、ほんとに心配したのよ、もう二度と、私にこんな思いをさせないで頂戴、お願い。」
祐巳と、瞳子の心は月と太陽の光を同時に浴びたかのように瞬時に暖められ、幸せに包まれた。



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【帰路】

3人が中庭のマリア様の前まで来たとき、立ち止まり祥子はおもむろに言った。
「瞳子ちゃん、私と祐巳はここ、マリア様の御前で、ロザリオの授受を行ったの、あの時も今夜と同じでとても素晴らしい月が出ていたわ。」
ドキッ!!
「ところで、祐巳、貴女の姉であり、紅薔薇である私に言わなくてはいけないことがあるのではなくって?」
ドキッ!!
「どうしたのかしら?」
「そ、そうなんです・・・ ははは・・・ 」
「なら、お言いなさい。」
「その・・・ 」祐巳にはお姉様がなにを言わんとしているのか、十分理解していた、でもこんなこと初めてで、その、緊張で、どんな言葉で伝えたら良いのか、はっきり言って混乱していた。
 ふと、祐巳の手にぬくもりが伝わった。 軽く『きゅっ』と瞳子ちゃんは祐巳の手を握り、とても嬉しそうに微笑む。

 そうだよね、私はすごく嬉しいし、瞳子ちゃんも嬉しいんだよね、そして、お姉様も嬉しいと思っているはず、うんん、絶対思ってる!!
 祐巳は軽く深呼吸をし、澄んだ瞳を祥子に向け、凛とした声で言った。


「お姉様、紹介します、この度私の『妹』になりました『松平瞳子』です。 全然未熟な姉妹ですが、これからもよろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」ペコリと頭を下げる瞳子ちゃん。
「よろしく、瞳子ちゃん。」 月明かりに照らされた祥子様の顔は、まるでマリア様と見まごうほどの美しさだった。


「さあ、こんなに遅くなってしまったのよ、今から2人を家まで送るわ。」
「ありがとうございます、お姉様、それと、ご迷惑と、ご心配をお掛けしてしまい、すみませんでした。」
「いいのよ、それに、『バ○な子ほど可愛い』っていうじゃない?」
「バ!! って ひどいですお姉様!!」
「ほら、2人とも、松井が校門前で待ってるんだから急ぎなさい。」つかつかと早足で歩きだす祥子。
「も〜〜 お姉様ったら。」


「あらためて、ほんとに楽しい姉妹ですわね、お2人は。」
「私もそう思う、でもね、今夜から、そして夜が明けた明日からは、もっとも〜〜っと楽しくなるんだよ。」
そして、祐巳と瞳子は手を力強く握りあい

 
     「いくよ、瞳子」  
             これまでの私たちに おやすみなさい

     「はい、お姉様」  
             これからの私たちに こんにちは






   終わり





   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「いや〜 やっと終わったねえ。」 腹いせ第2弾の結果、ぼろぼろの令様。ミイラ状態
「まったく、令にも見習って欲しいわね、この わ・た・く・し・の・ 心の広さ!!」 オ〜ホッホッホ!!
「いや、この後書きに至っては、言ってることと、やってることが全然あってないんだけど・・・ 」
「何のことかしら?」
「いや、その、私、ぼろぼろ・・・ なんですけど 」
「んまあ!! ひどい!! どうしたの令!! 誰がこんなひどいことを!?」
「貴女のせいだ〜〜〜〜〜〜〜!! こら〜〜〜〜〜〜!!」

「第3弾行く・・・?」

「ごめんなさい。」


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