【12】 瞳子ちゃんプライドデビュー  (冬馬美好 2005-06-09 22:36:56)


「・・・さあ、第1回リリアンPRIDEグランプリもいよいよメインイベント! “紅の庶民派” 福沢祐巳さんと、“ドリルアクトレス” 松平瞳子さんの決勝戦! 司会は新聞部部長・山口真美、解説は黄薔薇のつぼみこと、島津由乃さんでお送りします。お願いします、由乃さん」
「こちらこそ」
「さあ、リング上で睨み合う二人! 今、がっちりと握手を交しました!」
「二人とも気合い入ってますね」

『ジャッジ? ジャッジ? ジャッジ? ・・・れでぃぃぃぃぃ、ふぁいっ!!』
 カーン!

「さあ、戦いが始まりました! お〜っと! 瞳子選手が先制攻撃!」
「あれは演劇部の先輩、乃梨子ちゃんと立て続けに撃破した技、『今まで見た事が無いぐらい怖い顔』です! いきなり勝負に出てきましたね」
「これは苦しいか、祐巳選手! じりじりと後退していきます!」
「祐巳さんの必殺技『祥子さまの真似』は、遠い親戚の瞳子ちゃんには効かないですからねえ」
「万事休すか、祐巳選手! さあ、これまでか?!」
「いや、ちょっと待ってください! 祐巳さんが懐から何かを取り出しましたよ」
「おっと、凶器ですか? 凶器の使用は禁止されているはずですが・・・。いえ、違います! 祐巳選手が懐から取り出したのは・・・・・・ロ、ロザリオだぁぁぁっっ!!」

(おおっ、とざわめく場内の生徒たち)

「祐巳選手のこの攻撃に、優勢だった瞳子選手の動きが止まりました!! どうしたことでしょう?! ・・・あ、反則だと瞳子選手がアピールしています! 解説の由乃さん、ロザリオは凶器に含まれるんでしょうか?」
「身に付けてるものだしね。吉田秀彦も胴着の帯使った攻撃とかしてるし、いいんじゃない?」
「さあ、今度は瞳子選手が圧されています! ロザリオの鎖部分を輪っかにして持ち、祐巳選手がじりじりと前進!」
「あ、コーナーに追い詰められましたよ」

「・・・これ、瞳子ちゃんの首にかけてもいい?」
「え? あのその・・・そんな・・・」
「賭けとか同情とか必殺技とか、そんなものはなしよ。これは神聖な儀式なんだから」
「で、でも・・・こ、こんな場所では・・・・・・」
「瞳子ちゃん?」

(しん・・・と静まり返る場内。全員が瞳子の返答に注目している)

「あの・・・その・・・お、お、お受・・・・・・おうっ!」

 ぱたり。
 カンカンカンカン!

「祐巳選手、見事な大逆転KO勝利! 瞳子選手を血の海に沈めました!」
「鼻血だけどね」
「さあ、レフェリーに手を取られて祐巳選手、勝利の・・・おや? 祐巳選手が、幸せそうな顔で気絶している瞳子選手に近づいていきます。これは・・・?」
「まぁ、ある意味、とどめの攻撃かなあ」
「お〜っと! 祐巳選手、瞳子選手の首にロザリオを掛けたぁぁぁっっ! こ、これは何という感動的な光景なんでしょう?! 会場に詰め掛けた生徒の目に感動の涙がぁぁぁっっ!!」
「感動かなあ・・・」
「・・・どうしました、由乃さん? 感動的ではありませんか?」
「いや、だってねぇ・・・」


「寝てる時にロザリオを渡してもらっても、全然ドキドキしないんだよ?」


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