【No:1198】40センチの愛情、その後(<人の作品を勝手に改題してはいけません)
「祐巳さんの愛情はその程度だったの? 40センチ! たったそれだけで力尽きるなんて!」
私の計画がだいなしだわ、と大げさに嘆く由乃さんに、祐巳は肩で息をしながら言い返した。
「じゃあ、由乃さんやって見せてよ」
「私は別に瞳子ちゃんを妹にしたいわけじゃないしー」
ずっこい。
志摩子さんに視線を向けると、にっこりと笑顔を返された。……なんか言いにくい。
乃梨子ちゃんは、視線を合わせもしねぇ!
「何をなさっていますの?」
「あーそれがね……」
後ろからの声に答えようとした祐巳はふと言葉を切った。
「瞳子ちゃん……」
「はい?」
計画内容を本人にうっかりベラベラしゃべってしまわなかったのは祐巳にしては上出来だ。
「そうだ! 何故思い付かなかったんだろう。こんな簡単な方法を!」
……別のことを考えていたようだ。
「そうだよ! 瞳子ちゃんだよ!」
「は?」
「というわけだから瞳子ちゃん」
「何がというわけだかサッパリわからないのですけど」
「あなたにならできる。いえ、あなたにしかできない!」
「いったい何の……」
祐巳は40センチの愛情の跡をビシッと指差して言った。
「さあ、掘って。3メートルくらい。その電動ドリルで!」
「……………」
「……………」
「……………祐巳さまのばかーっ!」
「…………………………あれ?」
瞳子ちゃんはギャグ漫画のように走り去った。
「……はあ」
心底呆れた、という表情で由乃さんはため息をついた。
「そもそも、自分で掘った穴には落ちてくれないと思うわ」
志摩子さんの指摘はごもっとも、だが、どこかずれていると思う。
「……祐巳さま」
友人代表の乃梨子ちゃんも渋い顔だ。
「冗談だったんだけど」
「瞳子はあれでもあのドリルを……じゃない、時代錯誤な縦ロールを自慢に思っていたようですから」
素で言い間違える乃梨子ちゃんも結構酷い、いや、かなり酷いこと言ってると思うんだけど。
ともあれ、『瞳子ちゃん妹化計画』は始めてすぐに頓挫した。というか瞳子ちゃんからの評価は地に落ちて、さらに3メートルくらい潜った感じだ。
「うぅ、マイナスだよう……」
「自業自得です」
ああ、あいかわらずクールだ乃梨子ちゃん。
「やっぱり電動はまずかったかなー」
「……そこじゃないと思いますが」
計画成就への道のりは、まだまだ遠いようだった。