【1207】 こんな感じかしら?蔦子×祐巳  (六月 2006-02-28 22:54:00)


ダークです。暗いです。m(_._)m



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「祐巳さんは可愛い。いつもながら、すごくいい」
「・・・・・・そうですか」
結局、祐巳さんは写真を受け取らなかった。
そうだろう、ストーカーじみた後輩が写ってる写真なんて嬉しくも無いはずだ。
そして、写真は元どおり封筒に納め、祐巳さんは薔薇の館へ、私はクラブハウスへと向かう。
写真部の部室に入り一人きりになると、私はふと漏らしてしまった言葉を思い出し自分でもぞくりとした。
まるで愛の告白じゃないか・・・。

私は学園中の生徒をフィルムに収めて来た。
盗撮紛いと言われながらも誰にも文句を言われたことは無い。
撮影した本人に筋を通すし、私は美しく輝く少女しか被写体にしないからだ。
そう、誰隔てなく・・・。
いや、高等部に上がった時から、一人だけ特別だった。
ころころと良く変わる表情を観るのは面白かった。素直に笑い泣き拗ねる、この齢になって裏の一つも感じさせない素直さは天然記念物級だ。
誰にも分け隔てなく接し、共に泣き笑い怒る。
その表情につい惹かれ、気が付いた時には虜になっていた。

私は彼女に恋をしてしまったのだ。
これが学年が違えば姉妹になるという手もあっただろう。
けれど、私達は同じ学年、同じクラス。どうやって彼女を独占出来るというのだろう。
彼女を私だけのものにしてしまいたい・・・。
だから、祥子さまが彼女を妹にした時、嫉妬し、そして安心した。
閉鎖的な山百合会の中に置いておけば他の誰も手出し出来ないから。
しかし、彼女自身がそれを許さなかった。彼女自身の手で山百合会の閉鎖性を破壊してしまった。
どんどん私の手から離れて行く。だから私は彼女を追いかけ、フィルムに収め続けた。
写真の中の彼女は私にだけ微笑んでくれるから。

封筒から取り出した写真を見る。
彼女をストーカーする1年生、細川可南子。祐巳さんが気が付かなければいつまでも追いかけ続けることが出来たでしょうね。
「ふふっ・・・ふふふふふふふ・・・」
でも、それも終わり。祐巳さんがすぐにでも手を打つだろう。
写真を引き裂きながら私は一人呟き続ける。
「誰にも渡さない・・・祐巳さんを追いかけ続けるのは私だけで十分なのよ・・・。
ふふふふ・・・あははははははは」


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