【1221】 時空を越える可南子×瞳子  (まつのめ 2006-03-04 14:41:25)


 ♪とーきーをー、か・け・るしょうじょー

「というわけで、時空を越えてきました可南子です」
「瞳子ですわ」
「今回は祐巳さまが最愛のお姉さまと衝撃の出会いをしたあの月曜日のマリア像前にきてみました」
「祥子お姉さまはこのとき祐巳さまの毒牙にかかってしまわれたのですわ」
「それではちょっと干渉して、未来を変えてしましょう」
「そうですわね。 瞳子が祥子お姉さまを引き止めますから可南子さんは祐巳さまをお願いします」
「了解したわ」


 * * *


 可南子です。
 前を祐巳さまが歩いています。
 ちょうど銀杏並木の二股にかかるところです。
 早速、後ろから声をかけてみましょう。
「おまちなさい」
 祐巳さまは立ち止まって振り返られました。
 ああ、絶句して固まる祐巳さまも素敵です。
 おそらく超高校級の私の身長に驚いておられるのでしょう。
「あの……。 私にご用でしょうか」
「呼び止めたのは私で、その相手はあなた、間違いなくってよ」
 上級生っぽく威厳を持って台詞を言う。
 祐巳さまが上級生だと思って疑わないあたりがちょっと悲しいです。
「持って」
 用意してきた小道具の学生鞄を差し出して祐巳さまに預けます。
 そして両手を祐巳さまの首の後ろに回して。
 怯えるように首をすくめて目をつぶる祐巳さま。
 とても可愛くてよ。
 っと、祥子さまの口調が移ってしまった。
 でもやはり祥子さまはこのときから祐巳さまのことが気に入られていたのでしょうね。
「タイが、曲がっていてよ」
「え?」
 目を開けられる祐巳さま。
 顔がとても近くにあります。
 ちょっと頬が赤くなってますます可愛らしい。
 こちらもちょっと頬が熱くなってしまいました。
「身だしなみは、いつもきちんとね。マリア様が見ていらっしゃるわよ」
 タイを直し終わって鞄を取り戻し「ごきげんよう」といって祐巳さまを追い越して去ります。


 * * *


「可南子さん、どうでした?」
「守備は上場です」
「それをいうなら『首尾は上々』ですわ」
「くっ、話し言葉なのに変換ミスに突っ込むなんて」
「そのくらいは淑女の嗜みなのですわ」
「嫌な嗜みだわ」

「「まあ、それはおいといて」」(二人揃ってなにか箱を右から左へよけるポーズ)

「……瞳子さんは?」
「成功ですわ。 でもちょっと祥子お姉さまに叱られてしまいました」
「まあ、問題はありませんね」
「では、いったん戻りましょう」
「そうですね」



 ♪とーきーをー、か・け・るしょうじょー(時を越える時の効果音)



「可南子さん大変ですわ!」 
「なんですかいきなり」
「何にも変わってませんわ」
「え? まさか!? 祐巳さまは祥子さまと出会いが無かったことになったのに」
「いいえ、確かに祐巳さまは薔薇の館に行きませんでした。 でも、誰にもぶつからずに会議室を飛び出した祥子お姉さまは古い温室で何故かそこにいた祐巳さまに愚痴を聞いてもらってまたくっついてしまったのですわ!」
「なんてこと、これでは私の『山百合会に関わらなかったために普通の生徒だった祐巳さまの妹になれば祐巳さまは部活もないし独占できてラッキー計画』が!」
「ちょっとお待ちになってくださいまし! 可南子さんは私の『祥子お姉さまと関わり無い祐巳さまならすぐ妹になってもモウマンタイだし祥子お姉さまにも変わらず可愛がってもらえて一石二鳥ですわ計画』に協力していただけるのではなかったのですか!?」
「あら、瞳子さんは祥子さまに可愛がってもらえればいいのだとばかり。 だって祐巳さまのロザリオつき返したじゃありませんか」
「そ、それはっ……」
「それはともかく効果が無かったので、もう一回です」
「そ、そうですわ。 祐巳さまの件はそのあと決着をつけるのですわ」
「まあ、いいでしょう」



 ♪とーきーをー、か・け・る……(時を越える時の…)



「というわけで、手分けして阻止ですわ」
「では瞳子さんは薔薇の館の前で祥子さまを」
「いいえ、今度は可南子さんが祥子お姉さまの担当ですわ。 祐巳さまには私が」
「くっ、仕方がないわね」







(……おまちください)







「可南子さんいかがでした?」
「ええ、とりあえず成功したわ。 危うく祥子さまの代わりにシンデレラをやらされるところでしたけど、上手く逃げてきました。 そちらは?」
「問題ありませんわ。 雑談して時間を稼いだだけですもの」
「では、戻りますか」
「そうですわね」



 ♪とーきーをー(以下略)



「可南子さん大変ですわ!」 
「またですか、落ち着いてください」
「これが落ち着いていられますか! また何にも変わっていないのですわ」
「なんですって!?」
「今度は祥子お姉さまが出会った謎の少女を探して祐巳さまにたどり着くのですわ。 そしてそれがきっかけでまた……」
「なんてこと、謎の少女って私のことじゃない。 あの時、役割を入れ替えなければ……瞳子さんのせいだわ」
「何を言ってますの? これは明らかに可南子さんの仕業ですわ」
「それより、何とかしないと」
「そうですわね」



 ♪とーきー(略)



「ま、また変わっていませんわ!」
「ええ!? 確かに阻止したのに……、祐巳さまにたどり着く前に祥子さまの前に現れて私は同学年だからとか嘘ついて上手く誤魔化したのに」
「ええ、でも今度は蔦子さまが祐巳さまのタイを直した謎の少女を探していて、その写真が祥子お姉さまの目に止まってしまったのですわ。 そしてそれが縁でまた……」
「なんてこと……こうなったらとことんやるまでだわ!」
「ええ、望むところですわ!」



 ♪とー(略)

   ・
   ・
   ・


「はぁ、はぁ、……とうとう変えることに成功したわ」
「……そ、そうですわね」
「ずいぶん無茶もしました」
「ええ、可南子さんがカメハメ波を撃ったときは瞳子死ぬかと思いましたわ」
「でもあのとき放った起死回生のドリルを応用したドドン波には驚かされました」
「まあいろいろあったわけですけど……」
「そうですね」

「あ、○薔薇さま、○薔薇のつぼみごきげんよう」
「あら、祐巳ちゃんごきげんよう」
「ごきげんようですわ」

「でも……」
「どうして……」

「私が四番目の薔薇さまになるのよーーーーー!!!!」
「可南子さんの妹なのですかーーーーー!!!!」



♪かーこーもーみーらいーもー……、

    ……だーきーとめーてーー!!

 

 ―― 糸冬 ――


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