そう、あれは雨がよく降ったその次の日におこったわ。
私はその日学校の宿題をすませて、お風呂入ったの。
だけど、風呂場はなんだかいつもと違う雰囲気が漂っていた。
私が体を洗おうとしたとき初めて気づいた…
何かが………何かが…足りなくて…何かが増えているような気がする…
私はそれの正体に気がついた。
いつもボディーソープが置いてあるはずのところに、ボディーソープの代わりにそれはいたわ。
それは角張った体格に似合わず、純白という言葉が似合うと思われるぐらいの白さだった。
それをおもむろに握ってみたが…
今思えば、その時が既にターニングポイントだったのかもしれない。
それはヌルヌルで、私が観察いていると、力を入れすぎたせいか、はたまた、私に対する攻撃だったのか。
突如、それが手をすっぽ抜けて、私に飛んできた。
とっさの事に私は紙一重でそれを回避したけど、敵もさる者。
壁の反射を利用して卑怯にも……いや、それは卑怯という言葉が似合わないほどの美しい弧を描き、背後から攻撃をしてきたの。
その攻撃で私は口で形容しがたいダメージを受けたわ。
だが、もう二人の間にはそんな卑怯などという言葉は存在しなかったわ、なぜなら、その時すでに、二人はやるかやられるか………生死を賭けた戦いだったからよ。
漫画で、拳は口ほどに物を語るというけど、それは本当だった。確かにあの時、私はそれと奇跡の会話が出来た。
『フッ…お前、やるじゃないか俺の攻撃を受けてまで立っていられるなんてよ』
『あんたこそただ者じゃないわね。いったい何者なの?』
『名前なんてない。ただ、ダ○で生まれたとだけは言っておこう』
『○ブ!?』
『世間では俺たちの時代が終わったかのようにボディーソープが使われている。今こそこの家を起源に再び俺たちを流行らせるんだ!…だが、俺もここまでだ…さっきの攻撃で燃え尽きちまった……あとは好きにしな』
『でも…』
『いいんだ…それに…』
私はそれのフロンティアスピリッツに心から感動して、涙した。
なら、最後ぐらいはせめて楽に……
私はそれは掴み窓をあけ、外の暗闇に投げ捨てた。
その時にそれはこういってたわ。
『それに…お前に負けても恥じることはない』
「はいはい。わかったわかった。やっと終わりよね」
「ちょ…祐巳さん。まだ、続いていて愛と情熱の一代スペクタコーが…」
「スペクタクルよ」
「汗と涙の感動巨編なのよ!」
由乃さんまだ続けるつもりなのかな。
「ていうか、それって、由乃さんが石鹸使い慣れなかったから手を滑らせて石鹸が体に飛んできたのをよけた所まではいいけれど、壁に反射してきて背中に当たって、冷たくてなきそうになりながらその石鹸に八つ当たりし、窓を開けて思いっきり投げ捨てただけなんじゃ…」
「違うわよ!まだ続きがあるの!」
続き?もう、思いっきり完結してるんだけど…
「続きって、どれぐらいあるの?」
「さっきのあわせて三部作よ。石鹸の仲間と二つの石鹸と石鹸の帰還の三つ」
ロードオブ○リング!?
「はいはい、わかったから、明日聞くね、明日」
「絶対よ!」
その日の晩、福沢家の浴場には見慣れぬ白い石鹸があったそうな。
==了==